闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『ZOO 1』乙一

 異能の作家、乙一の短編集。最近、映画化されることが多い乙一作品ですが、その映画化ラッシュ、この『ZOO』の映画化が嚆矢だったような気がします。
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 いやまあ、それにしても、この乙一という人はどういう脳みそをしておるのでしょう。『ZOO 2』の巻末で、文庫解説の島本理生氏も書いていますが、普通短編集を一冊も読めば、その作者の作風というか、文章やら好んで描くテーマやら、なんとなくの傾向が見えてくるもの。しかし、この乙一という人には、その常識は当てはまらない。
 
 簡単な感想を、収録作品ごとに。まずは『ZOO 1』。映画化されたのはこちらの5作品。

 「カザリとヨーコ」…酷い話。母親から、なんの謂れもなく虐待される少女をめぐる人間模様を描いているのだけれど、これは本当に酷い。でも、親が自分の子供に施すことなんて、えてしてなんの理由も合理性も無いことが多いから、世で実際に行われている虐待も、この作品のそれと大差ないものなんだろう。
 徹頭徹尾、酷い話なんだけど、結末はなんだか生きる力が湧いてくるというか、奮い立つような気持ちになる(ヨーコの言葉を借りれば、〈「おっしゃー!」と思〉う)結末でした。この短編は、間違いなく傑作。

 「SEVEN ROOMS」…たぶんこういうのを、《ソリッドシチュエーション・スリラー》とか言うんでしょう。映画でいうところの『SAW』や『CUBE』のような。といっても、僕はこれらの映画を見たことがありませんが。
 しかし、これは本当に悲しい話で、「なんでこんな悲しい話を書いちゃったんですか?」と作者に問いたくなる。何ものかに拉致されて、暗いコンクリートの部屋に閉じ込められた姉弟が体験する戦慄の六日間。姉弟が迎えた結末は凄惨で恐ろしく、悲劇的。ああ悲しい。悲しい悲しい悲しい。
 犯人の正体もその狙いも最後まで明かされないけれど、たぶんその方が、この作品には相応しいでしょう。

 「SO-far そ・ふぁー」…これも悲しい話、になるのかなぁ?ちょっとハートフルな感じもあるけど、やっぱり主人公の両親にしたら、悲しいよな。でもこれは、小さな少年が、大きな決断を下すことによって成長するという話でもあって、その観点で読めば、けっこういい話、なんですよね。
 ただ、結末がそうなるんなら、前半の描写はちょっと、無理があるんじゃない?あるいは叙述トリックという読み方をするなら、ちょっとアンフェアかな?という気もする。でも個人的にはこれ、すごく好きな作品です。

 「陽だまりの詩」…「詩」は「うた」ではなく「シ」と読む。ルビもそう振ってある。わざわざ「シ」と読ませる時点で、なんとなく「死」と掛けてるんだろうなということは感じましたが、でもこの作品は「死」という言葉から連想される暗く悲しい話じゃなくて、「陽だまり」という言葉が象徴する、穏やかで暖かい、とってもハートウォーミングなお話。ファンタジーとしても一級品です。
 アンドロイドの「私」と、彼女を作った「彼」との、二人きりの物語。アンドロイドの話なのに、最後は人間の業にまで迫っていく深さがすごい。ラストシーンは、まさに「陽だまりのシ(詩、死…)」。

 「ZOO」…なんでこれを表題作にしちゃったの?という気がしないでもない。べつにつまらないとか、悪い作品というわけでもないんですが、乙一らしさが弱い気がする。他の4作は、どれも全然違う作品だし、統一感もなにもないんだけれど、「こんな作品、乙一じゃなきゃ書けないだろうな」と思わされるという点で、共通している。だけど、この「ZOO」だけは、なんか他の作家でも書けそうだし、書きそうな気がするんですよね。作中に登場する「ZOO」という映画も実在するそうだし。いや、実在しちゃいけないってことじゃないですけど、なんか違和感が。
 人間の本質を突いたストーリーやキャラクター造形であると感じるけれど、今までの4作で「乙一ワールド」の様々な面に魅せられてきた読者からすると、今更これぐらいでは驚かない、という感じです。

 5作それぞれ、みな毛色の違う作品で、とても同じ作者の手によるものとは思えないほど。映画版で、これらの作品がどのように映像化されたのか気になりますが、評判はそれほど芳しくないんだよなぁ。「SEVEN ROOMS」「ZOO」なんかは映像化に向いてそうだけど、「SO-far そ・ふぁー」は映像化するの、難しそうですよね。「陽だまりの詩」は、アニメ化されたそうで、巻末はそのアニメの脚本・絵コンテを担当した漫画家と、作者・乙一さんとの対談が収録されています。題して、「天才は深夜ラジオで作られる。」――
 ラジオといったら野球中継ぐらいしか聞いたことのない僕は、天才には程遠いです。
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comments(2)|trackback(3)|読書|2008-07-24_02:57|page top

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こんばんは。
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コメント&TB御礼。
>>藍色さま。
たくさん本をお読みなんですね。僕なんかまだまだだなぁ。
でも、驚くほど僕と読書の趣味が被っていないですね。
かろうじて、『びっくり館の殺人』が。僕もこないだ読んだので、
記事を書いたらまたトラックバックさせていただきますね。

今後ともよろしくお願いします。

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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