闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『ZOO 2』乙一

 「何なんだこれは」と評された、乙一のジャンル分け不能の短編集。単行本時には一つにまとまっていたらしいが、文庫化に際して二分冊された。
ZOO〈2〉 (集英社文庫)ZOO〈2〉 (集英社文庫)
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 『ZOO 1』は映画化された5編を収録していましたが、こちらは映画化されなかったほうの5編+単行本未収録のボーナストラック一編を収録。
 
 『1』以上に多種多様な作品が収録されたこちら『2』ですが、『1』でおおよそ免疫がついてしまっているから、あんまり驚かなくなってくる。それでも「なんじゃこりゃ!?」と思わせる設定、内容、描写には事欠かないのですが。

 「血液を探せ!」…事故の後遺症で、痛みをまったく感じなくなった男(『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』にそんな悪役が出てきたな)。ある朝、別荘で目覚めると、わき腹に包丁が突き立てられ、血が大量に流れ出していた!
 これはギャグなのかな?それとも、いちおうミステリーと考えたほうがいいのか……。まあどちらにしろ、結末はあまり救いの無い話です。と、同時に、こういう理由で人を殺す人間が現実にいるかもなぁ、と思うと無邪気に笑ってもいられない気がしてきますが。

 「冷たい森の白い家」…これはもう完全に、「乙一ワールド」。謂れもなく虐待を受ける少女が主人公である点は「カザリとヨーコ」に似ていますし、彼女があちこちから運んできて、家を建てる材料にする「死体」というモチーフは、乙一のデビュー作『夏と花火と私の死体』を連想させます。ただ、ストーリーといえるようなものはほとんど無く、結末もなんなんだかよく解らないし、最初から最後まで、ほとんど雰囲気だけで読ませるような作品です。もしかしたら、小説というより、散文詩と言った方が良いかもしれない。暗く、悲しく、残酷で、不思議な「詩」。

 「closet」…これはかなりまっとうな、叙述ミステリー。かなり普通な上、犯人もなんとなく読めるので、ほとんど驚きは無かったですけど。でも、けっこう細かいところまで、ちゃんとフェアに叙述しているのは立派。ただ、作品を通して伝わってくるものは、特に何も無かったですね。

 「神の言葉」…『2』の収録作の中では、二番目に好きな作品。力をこめて言葉を発すると、それがすべて現実になってしまうという特殊能力を持った主人公。彼の「言葉」により、母親は猫とサボテンの区別がつかなくなり、父親は片手の指の五本全部を失った。しかしトラブルはそれだけで終わらず……。
 この物語の主人公は、自分のことを病的な小心と評しているのですが、僕自身も非常に小心で臆病な人間なので、この主人公の気持ちにけっこう共感するところがありました。ラスト三行、主人公が「手を震わせて泣いている理由」を読んだとき、最初は驚きましたが、少し考えると合点がいきました。僕も心の中に、この主人公と同じ醜い動物を飼っているのかも。そう思ったとしても、僕に「神の言葉」はないけれど。

 「落ちる飛行機の中で」…ハイジャックされ、T大学の校舎に墜落することが定められた飛行機の中。「私」は隣の男から、安楽死の薬を買わないか、と持ちかけられる。どうせ死ぬなら、墜落死より安楽死の方がいい。しかし、もし薬を打った後でハイジャック犯がつかまり、飛行機が墜落しなかったら……。この賭け、どちらに賭けるべきか?
 予想のつかない主人公たちの会話、二転三転するストーリーは、確かに読んでいるときは惹きつけられるのですが、読み終わってみると、結局何が描きたかったのか解りません。それに、結末もなんだかなぁ。罪の無い子供を傷つけようとした(結果的には傷つけずに終わるんだけど)人間が、ハッピーエンドとはいかないまでも、バッドではないエンディングを迎えるのは、なんだか納得がいきません。

 「むかし夕日の公園で」…『2』のなかで、いちばん好きな作品。この作品はショート・ショートなので、非常に短いです。わずか4ページ。なので、感想も短く。
 これは、悪魔的な作品です。その心は……まあ読んでみてください。
 子供のころ、公園の砂場を延々掘り下げてみた経験のある人は、いると思う。あの底に何があるんだろうって。そんな無邪気な子供心を、上手く作品に生かしています。それにしても、あそこで「だめ」とは……。

 『ZOO 1』と比べると、全体的に「胸に迫るものが無かった」という感じがする『ZOO 2』。ただ、逆に言うと『ZOO 1』ほどアクが強くないので、誰でもあまり抵抗なく読めるかも。個人的に、『1』『2』通じてのベスト作品は「カザリとヨーコ」かな。「SEVEN ROOMS」もすごいけど、ちょっと内容が内容だけに、万人にお勧めはしづらい。人に勧めるのなら、やっぱりいちばん解りやすく、いちばん“いい話”な「陽だまりの詩」でしょうね。
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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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