闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『GOTH 夜の章』乙一

 最近の読書、乙一が多いですね。べつに特別な意識はないんですが、彼の本は全部、短くて読み易いから。最近はあまり重いのをがっつり、って気分じゃないので、手軽なのが重なっちゃうのかな。
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 この『GOTH 夜の章』は、本格ミステリ大賞を受賞した短編集『GOTH リストカット事件』から、「夜」に焦点をあわせた三作を収録したもの。『ZOO』もそうだったけど、もともと一冊だった短編集を二分冊するのって何なんだろう?本が分厚くなるのが嫌なのかな。
 
 で、『夜の章』。「夜」というのは文字通り夜‐night‐のこと、ではなくて、登場人物―この連作のヒロイン、といっていいのかな―の名前。「森野夜」というのが、その少女の名前。髪や目の色は黒い。一方で肌の色は、太陽を知らない月のように白い。通っている高校では人を避けるように行動し、休憩時間には一人で本を読んでいる。そんな彼女と、学校で唯一言葉を交わすのが「僕」。この二人が、周囲で起こるいくつかの異常な事件の「傍観者」となる。この『GOTH』は、そんな小説です。

 「暗黒系」…森野が行きつけの喫茶店で拾った一冊の手帳。そこには、最近マスコミを賑わせている異常な連続殺人―女性が体を様々なパーツに“分解”されて“展示”される―の様子が、詳細に記されていた。そして、いまだ明るみになっていない第三の被害者が存在することまでも、その手帳には示されていたのだった……。
 のっけから悪趣味全開の一作。とにかく、猟奇殺人の中身がエグイのなんの。ここまで来るともはやギャグなんじゃないかと疑いたくなりますが、それはあながち間違いでもないようで、「あとがき」によれば、作者はこの作品に登場する犯人たちを、《人間ではなく妖怪》として描いたそうです。妖怪の所業なら仕方がないか。そういう問題ではないのかもしれませんが、そう思わなければ納得のしようがないぐらいの悪趣味さ。それでも読まされてしまうのは、どこか浮世離れした透明感みたいなものが、この人の作品には常に漂っているからでしょうか。

 「犬」…「僕」の家の周辺で、ペットの犬が誘拐されるという事件が連続して起こった。ペットが消えるのは週二回、決まって水曜と土曜の朝だという。つまり、火曜と金曜の深夜に何かが行われているということだ。「僕」は身近で起きている事件に興味を持つが、以外にも犬嫌いだということが発覚した森野は興味を示さない。「僕」は一人で調査を始めるが……。
 我孫子武丸著『少年たちの四季』(集英社文庫)の解説によると、乙一氏のミステリ初体験は、『かまいたちの夜』だそうです。また、ゲーム好きの乙一氏は、ゲーム雑誌に連載されていた我孫子氏のエッセイを読んで作家に(実際には《エッセイを書く仕事》に)憧れるようになったとも書いています。他方、我孫子氏も、乙一氏の作品を、誰に頼まれたわけでもないのに周囲の人に勧めていたとか。
 この「犬」を読むと、この二人が共鳴する理由が、わかるような気がします。乙一ファンのみならず、我孫子ファンも必読の一作、かもしれない。

 「記憶」…ある朝、森野がうつむいた格好で教室に入ってきたとき、一瞬、みんなが静まり返った。それほどの異様な雰囲気を、その日の森野は発散していたのだ。「僕」がその理由を知ったのは、次の日の放課後だった。「ときどき、こうなるの。眠ろうとしても、眠れない。不眠症というやつかも」
 森野は不眠症になると、首に紐を巻きつけて眠るらしい。絞殺されて死体になった自分を想像すると、深い水に沈んでいくように眠りにつけるという。しかし、紐なら何でもいいというわけではなく、首に合う紐を捜すのはなかなか難しいらしい。これにはどうやら、森野の過去の体験、ことに「首吊り自殺で死んだ」という妹の記憶が関わっているようだ……。
 ヒロインの記憶が紐解かれるとともに、彼女の意外な素顔が明らかになるこの作品は、なかなか見事な本格ミステリ。前二作とは少し毛色が異なっており、悪趣味さはあまりない。それよりも、青春小説らしい“甘酸っぱさ”が感じられる作品です。「僕」によって解き明かされるのは、ヒロインにとっては悲しい事実ですが、一方でそのことによって、彼女は“夜の闇”から救済される、そんな救いの物語でもあります。もっとも、「僕」が救世主なんかじゃないことは、つづく『GOTH 僕の章』ではっきりと示されるのですが。

 一作目の「暗黒系」があまりにもグロテスクで悪趣味なのでインパクトは強烈ですが、残りの二作は比較的薄味で、いわゆる《黒乙一・白乙一》という表現で言うと、まあ白とは言えませんが、そんなに黒べったりでもない感じです。わざわざ『夜の章』としてはいるものの、最後の「記憶」以外はかならずしも森野にスポットが当たっているともいえず(特に「犬」には森野はほとんど出てこないし)、これは次の『僕の章』と分けるために便宜上つけたタイトルだなと思えます。
 ただ、この連作がその本性をあらわにするのは、むしろ後編にあたる『僕の章』の方。こちらでは「暗黒系」に勝るとも劣らない悪趣味さが炸裂しているのですが、その話は、また別の記事で。
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