闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『弥勒の掌』我孫子武丸

 しばらく本格ものから離れていましたが、やっぱり僕のホームは本格だろうということで、我孫子さん。三年以上前の作品ですが、長編としては最新のものだと思われ。
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 「本格ミステリ・マスターズ」という企画レーベルから出た一作ですが、作者は「構造的にはサスペンス」という言い方をしてるらしい。文庫解説では、我孫子さんの「ジャンルへのこだわり」に焦点を当てて、この奇怪な作家を紐解こうとするのですが、この『弥勒の掌』という作品もまた、読むと「ミステリー」とか「サスペンス」といったジャンルで語るより、とにかく「我孫子武丸の小説だなぁ」という印象が強いです。

  我孫子さんファンページ「喫茶 我孫子」
 
 そうだ、これは我孫子武丸の作品なんだから、ただで終わるはずがなかったんだ。
 一見サスペンスタッチで、真面目な捜査小説。謎めいた宗教団体に絡んだストーリーは、現代社会の暗部をいぶりだすジャーナリスティックな視線を感じる。だけど、僕は忘れていました。この作者の創作のあり方、「現実的」という意味でのリアリティなど超越し、虚構なればこその大仕掛けにその渾身のアイディアをぶつけてくるのが、我孫子作品の特徴だということを。

 解説の巽昌章氏も触れている、怪作『ディプロトドンティア・マクロプス』。これなどはまさに、「虚構なればこその大仕掛け」にこだわる我孫子さんの創作姿勢がもっともよく出ている作品でしょう。ほとんどギャグとしか思えないような、壮大な虚構が提示されるこの作品、読んだ方ならお分かりでしょうが、あんなことをやってしまうのが我孫子さんであり、そしてそれこそが、我孫子さんの作家としてのアイデンティティにもなっていると思います。

 この『弥勒の掌』は、『ディプロトドンティア・マクロプス』ほどではないですが、しかしその結末は、およそ想像を絶するものです。失踪した妻の行方を捜す高校教師と、妻を殺され、犯人への復讐心を抱いて独自捜査をする汚職刑事。彼らの運命を結びつける、〈救いの御手〉という宗教団体の存在。しかしふたりが〈救いの御手〉にたどり着いたときにはすでに、彼らは怖ろしく暗く深く、巨大な陰謀の渦に巻き込まれている。
 物語の最終盤、ギリギリのところで明らかにされる驚愕の真相。「そんなアホな!」といわずにはおれない読後感も含めて、我孫子さんの代表作といわれる『殺戮にいたる病』に相通じるものを感じます。ですが、大掛かりな虚構に身を投じる度胸のよさに関していえば、この『弥勒の掌』は、『殺戮にいたる病』以上のものがあります。「現実的」という意味においてのリアリティはあまりないかもしれませんが、作家の創造力が爆発する凄み、フィクション小説としてのカタルシスは相当のもの。そういう意味で、この作品は我孫子さんの新たな代表作として、高く評価されるべきものだと思います。

 寡作、というより、本業以外のこと(ゲームとか、漫画原作とか)に手を出しまくっているせいで、新作の長編がなかなか出ない我孫子さんですが、近未来SFシリーズ第3弾『禁忌の街』、雑誌連載は終了したそうです。ということは、いつか単行本が出る?はず。短編集はちょいちょい出てるんだけどな。速水三兄妹シリーズの長編とか、久々に出してくれないかな。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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