小説『誰彼(たそがれ)』法月綸太郎
[No.159] 2009/02/24 (Tue) 03:35
法月綸太郎シリーズの二作目。きわめてシンプルかつオーソドックスだった前作『雪密室』とはうってかわって、密室・暗号・首なし死体・双生児など、さまざまな要素を詰め込んだごった煮みたいな推理小説。
新興宗教団体《汎エーテル教団》の教主、甲斐辰朗に何者かから送りつけられる脅迫状。教主の秘書である山岸裕美から依頼を受けた推理作家・法月綸太郎が調査に乗り出した矢先、教主は地上80メートルの塔の上の密室から消えた!
前作『雪密室』は、法月親子の父親、法月貞雄警視が物語の中心にいて、いろいろな悪意や妨害と戦う、ちょっとハードボイルド風な語り口が魅力的でしたが、この『誰彼』はうってかわって、息子の推理作家、法月綸太郎が中心となり、警視の方は、名探偵たる息子の引き立て役のようになっています。前作で警視のファンになった僕からすると、そこは少し残念な部分でもあるのですが、息子の方もなかなかに面白いヤツなので、そんな不満はすぐに解消しました。
内容の方は、《汎エーテル教団》の教主が塔の部屋から消えた後、都内のマンションで首を切り取られた男の死体が発見されます。その死体は、当初は安倍兼等という男だと思われるものの、すぐに《汎エーテル教団》教主・甲斐辰朗のものだと判明します。そして、この甲斐辰朗と安倍兼等がじつは血を分けた兄弟であったこと、さらに安倍兼等は十七年前に死んだと思われているが、はっきりしないこと、兼等にはもう一人、双子の兄がいることなどが、事件の謎をさらにややこしくするのです。
密室・暗号・首なし死体・双生児という、本格ミステリーのお約束みたいな要素に加えて、新興宗教や安保闘争の過激派といった要素まで絡んで、フクザツを極める本作は、本格ミステリーをあまり読んだことのない人にはお薦めしづらいです。たぶん、ついて行けないと思うから。でも、ある程度本格ものを読んできた読者なら、その“過剰さ”が面白く感じられるでしょう。解説の香山二三郎氏の言うように、「読者の本格ミステリー・ファン度が試される」作品なのかもしれないですね。もっとも、僕は古典を読んでないので、エラリー・クイーンがどう、ロス・マクドナルドがどう、と言われても解らないのですが。
前作『雪密室』ではキャラクターに魅力を感じて、謎解きの方はさほどではなかったのですが、この『誰彼』は謎解きの方も面白く、腹いっぱいにさせてもらいました。すでにシリーズの次なる作品『頼子のために』を購入して、これからちょっと、法月作品にはまりそうです。好きな作家が、また一人増えた。ますます読むの、大変だなぁ(嬉しい悲鳴)。
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新興宗教団体《汎エーテル教団》の教主、甲斐辰朗に何者かから送りつけられる脅迫状。教主の秘書である山岸裕美から依頼を受けた推理作家・法月綸太郎が調査に乗り出した矢先、教主は地上80メートルの塔の上の密室から消えた!
****** ▼ 追記記事 ▼ ******
あらすじだけ読むと普通の密室もののような感じですが、この作品、そんな単純な話では終わらない。ツイストの上にツイストをきかせ、捻りまくった展開は、もうほとんど「すべり芸」の領域に入ってる。あまりの過剰さ、てんこ盛り加減に最初は驚き、次第にめんどくさくなってきて、いよいよウンザリしてくるのだけれど、そのうちそれすらも通り越して「仕方ない、最後までつきあってやるか」という気分にさせられる。詰め込みすぎと言おうがなんだろうが、「そんなの関係ねぇ!」な小説なのです。前作『雪密室』は、法月親子の父親、法月貞雄警視が物語の中心にいて、いろいろな悪意や妨害と戦う、ちょっとハードボイルド風な語り口が魅力的でしたが、この『誰彼』はうってかわって、息子の推理作家、法月綸太郎が中心となり、警視の方は、名探偵たる息子の引き立て役のようになっています。前作で警視のファンになった僕からすると、そこは少し残念な部分でもあるのですが、息子の方もなかなかに面白いヤツなので、そんな不満はすぐに解消しました。
内容の方は、《汎エーテル教団》の教主が塔の部屋から消えた後、都内のマンションで首を切り取られた男の死体が発見されます。その死体は、当初は安倍兼等という男だと思われるものの、すぐに《汎エーテル教団》教主・甲斐辰朗のものだと判明します。そして、この甲斐辰朗と安倍兼等がじつは血を分けた兄弟であったこと、さらに安倍兼等は十七年前に死んだと思われているが、はっきりしないこと、兼等にはもう一人、双子の兄がいることなどが、事件の謎をさらにややこしくするのです。
密室・暗号・首なし死体・双生児という、本格ミステリーのお約束みたいな要素に加えて、新興宗教や安保闘争の過激派といった要素まで絡んで、フクザツを極める本作は、本格ミステリーをあまり読んだことのない人にはお薦めしづらいです。たぶん、ついて行けないと思うから。でも、ある程度本格ものを読んできた読者なら、その“過剰さ”が面白く感じられるでしょう。解説の香山二三郎氏の言うように、「読者の本格ミステリー・ファン度が試される」作品なのかもしれないですね。もっとも、僕は古典を読んでないので、エラリー・クイーンがどう、ロス・マクドナルドがどう、と言われても解らないのですが。
前作『雪密室』ではキャラクターに魅力を感じて、謎解きの方はさほどではなかったのですが、この『誰彼』は謎解きの方も面白く、腹いっぱいにさせてもらいました。すでにシリーズの次なる作品『頼子のために』を購入して、これからちょっと、法月作品にはまりそうです。好きな作家が、また一人増えた。ますます読むの、大変だなぁ(嬉しい悲鳴)。
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テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌
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