映画『ウォッチメン』
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ヒーローとは何か?正義とは、善悪とは、平和とは? 映像化不可能と言われ続けた伝説的ビジュアル・ノベルの傑作を完全映画化した本作は、超人的な能力を持って悪と戦うヒーローたちを中心に据えながら、しかし今までのありきたりな「ヒーローもの」映画とは完全に一線を画している。芸術的で哲学的、それでいてマンガ的な……うーん、難解。
時は1985年。一人のコメディアンが死んだ。――この「コメディアン」とは、「ウォッチメン」と呼ばれるヒーローグループのメンバーの名前なのだが――彼の死に疑問を持った男がいた。コメディアンと同じく、かつてウォッチメンのメンバーだった「ロールシャッハ」だ。何者かが「ヒーロー狩り」を行おうとしていると感じた彼は、ウォッチメンの元メンバーたちを訪ね、事件の真相を探り始める。おりしも時代は、ソ連がアフガニスタンへの進攻を始め、核戦争の危険度を示す「終末時計」は、11時55分を指す。人類滅亡の危機は、まさに目前に迫っていたのだった。
映画『ウォッチメン』公式サイト いやいや、こいつは難しいよ。この映画を、優れた映画だと評する人もいるだろう。でも、エンターテインメントとしては、商品価値は低いよ(以下、一部ネタバレあり、未見の人は読まないでね)。 ヒーローを描いた映画だけれど、登場人物はみな、およそヒーローらしくない。精神を病んでたり、中年太りだったり、暴力好きな野蛮人だったり、フリチンだったりする。で、彼らがなぜヒーローになったのかも、映画の中では明かされていない部分が多い。彼らは人並み外れた身体能力を持っているが、基本的には「普通の人」のようだ。そんな彼らが、なぜヒーローなのか。その辺がよく解らず、映画を見ていても少し引っかかった。 もっとも、そのことはこの映画において、さして重要なことではないのも事実。この映画は、一人のヒーローの死をきっかけに動き出す「元ヒーロー」たちの心模様と、そして事件の裏にある大きな陰謀を描くことで、その奥にある「正義」とは何かを問うている。ヒーローの一人、ナイトオウルは、心優しく、暴力や悪意を純粋に憎む、まさに絵に描いたようなヒーローであるが、彼の正義感では、目前に迫った人類の危機、核戦争を回避できない。他方、別のヒーローは核戦争を回避するため、大きな犠牲を人々に強いる選択をする。大勢の命を救うために、少数の命を犠牲にすることが果たして正義なのか?その平和を守るため、人々を欺き続けることも正義なのだろうか?人々を欺くことで獲得した平和は、本当に価値あるものなのだろうか? 人々の犠牲によって得られた平和を守るため、沈黙を決め込むヒーローたちに、一人抵抗するロールシャッハ。「俺は妥協しない。そこが俺とお前の違いだ」。ハードボイルドな生き様を貫くロールシャッハを待ち受ける悲劇。妥協せずに生きるという姿勢は、周囲との摩擦を生む。個人の正義は、時として公共の正義に反する。その結果招いた悲劇だ。 あまたの尊い犠牲を払った末に、核戦争は回避され、世界は平和を獲得した。西側諸国と共産圏が手を取り合って歌を唄う、本当の平和を。 個人的には、この結末にはあまり納得がいかないなぁ。現実にはあのような大きな犠牲を払わなくても、人類は核戦争を回避しえたのだから。もっとも、恒久平和はいまだ実現できていないけれど。もちろん、映画の世界においても、ラストで実現された平和が恒久的に維持される保証はない。事件の痛みが癒えたころ、再び世界がいがみ合い、憎しみあうこともあろう。そのとき、世界を救うヒーローはいるのだろうか。 個人的には、「俺は妥協しない」と言い切った、ロールシャッハの姿がいちばん痺れた。妥協せずに生きる。カッコいいな。たとえ悲劇を招いても、イカレてると罵られても、妥協しない生き方はカッコいい。僕はそう思った。
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Theme:洋画
Genre:映画

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でも、そんなヒーローに理解ある私...
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