闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『頼子のために』法月綸太郎

 名探偵・法月綸太郎シリーズ第三弾。作者・法月綸太郎にとってもターニングポイントとなった作品であり、氏の最高傑作とも評される作品です。
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 「頼子が死んだ」――17歳の愛娘を殺され、復讐を決意した父親の手記。娘を手にかけた犯人を突き止め、殺害を実行し、自らの命を絶つまでが克明に記され、その内容には一見、なんの疑問点もない。しかし、名探偵法月綸太郎は、その記述の中に小さな引っ掛かりを覚える。そして彼の調査によって、次第に事件の驚くべき真相が明かされていく――。
 法月綸太郎(作中の名探偵ではなく、作者の方)にハードボイルド作家としての素質があることは、いろいろな人が指摘しているようです。本書の解説では文芸評論家の池上冬樹氏が「法月さん、本格的なハードボイルド小説を書いてください。あなたなら、書けるはずです」と熱い思いを訴えているし、前作『誰彼』の解説でも、香山二三郎が「ファンとしてはこのままハードボイルドに寄り添ってもらいたい」と書いています。ただ一方で、法月さんは間違いなく「新本格の人」です。なんてったって、島田荘司氏の推挙でで綾辻行人氏の次にデビューした、新本格の二番バッターなのですから。
 池上氏は本作『頼子のために』について、「惜しむらくは、もっとストーリーをハードボイルド風にすべきだった。本格ではなく、私立探偵物にして、この物語を語るべきだった。変に名探偵法月が活躍する本格の枠におさめて小説を悪くしている」と評しています。また、次作『一の悲劇』についても、「名探偵法月綸太郎が出てきて、失望。トーンが変わるのだ。(中略)名探偵であることのアナクロニズム、それがこのスリリングな、ハードボイルド風リアリズムの前半とまったくそぐわない」と、こちらもかなり手厳しい評価。池上冬樹という人は、大沢在昌の『感傷の街角』を全面否定したという“前科”があるくらい、ハードボイルドには強い思い入れと独自のこだわりがある人なので、そのこだわりから見れば、『頼子のために』も『一の悲劇』も、ハードボイルドとしては物足りないという評価になるのでしょう。「ハードボイルド風の本格ミステリ」が読みたいわけではないんだと。
 だけど、ハードボイルドの定義って何なんでしょう。僕はハードボイルド小説は数えるほどしか読んだことがないですが、『あぶない刑事』や『ルパン三世』が大好きです。これらの作品は、一般的にハードボイルドとして認知されているものだと思います。だから、僕もハードボイルドが解らない人間ではないつもりですが、そんな僕からみて『頼子のために』は、充分ハードボイルドしている作品だと思いました。『一の悲劇』は読んでないから判りませんが。
 大沢在昌氏が「今の私のハードボイルドの定義とは、ひと言でいうなら、「惻隠の情」である。すなわち傍観者のセンチメンタリズムだ」ということを語っているそうで、この言葉の意味がかつてはよく解らなかったのですが、『頼子のために』を読んで、なんとなくこういうことではないかというのが解った気がしました。
 本作の法月綸太郎は一貫して傍観者です。事件の調査をし、その謎を解きはしますが、事件をめぐる人間模様の中にはけっして立ち入らない。彼が最後の最後まで、傍観者の立場を貫くことにこの作品の特徴があると思います。

 長々と余計なことを書いてしまいましたが、この『頼子のために』、今まで僕が読んだ法月作品の中では文句なくベスト1です。淡々とした文で綴られていますが、綸太郎の調査によって、一見幸せそうに見える家族の隠蔽された秘密が徐々に暴かれていく経過は読み応えたっぷり。そして最後の3ページで明かされる驚愕の真実。この結末に寒気を覚えるのは、なにも綸太郎だけではないでしょう。
 法月綸太郎シリーズは、第一作『雪密室』のころからハードボイルドな香りを持っていましたが、本作『頼子のために』は「ハードボイルド風の本格ミステリ」というよりも、「本格推理の発想を内包したハードボイルド小説」と呼べる作品だと思います。それぐらい、ハードボイルドな空気をしっかりまとっています。
 デビュー作『密閉教室』から『雪密室』『誰彼』そして『頼子のために』と、順番に法月作品を読んできましたが、一作ごとに、確実に面白くなっています。読むほどにハマッていく自分がいる。そういう経験は初めてです。次作『一の悲劇』は誘拐ものということで、どういった内容なのか予想もつきませんが、すごく読みたいです。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(0)|読書|2009-06-12_06:38|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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