闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『風が吹いたら桶屋がもうかる』井上夢人

 このblogで取り上げたことはないと思いますが、井上夢人作品は過去にけっこう読んでいます。『ダレカガナカニイル…』『メドゥサ、鏡をごらん』『オルファクトグラム』『クリスマスの4人』、短編集『あくむ』――けっこうと言っても、これで全部。でも、寡作な作家なので、これでもかなりの割合。長編で読んでいないのは、あと二作だけですから。
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 そんな夢人さんの、今回は短編集。以前に読んだ『あくむ』はホラーテイストの強い、かなり不条理な物語が多かった記憶がありますが、今回読んだ『風が吹いたら桶屋がもうかる』は、軽妙な文章と“お約束”なユーモアが楽しい、「日常の謎」系ミステリー。

 井上夢人公式サイト「夢人.com」
 
 ストーリーの語り部は「僕」こと三宅峻平、通称<シュンペイ>。彼の同居人である松下陽之介、通称<ヨーノスケ>は超能力者だ。といってもヨーノスケの超能力は非常にレベルが低く、ラーメンを食べるために割り箸を割ろうとすると、三十分もの時間を費やしてしまう。当然、その間にラーメンは伸びきってしまっている。超能力というより、低能力と言った方がいいような代物なのだ。
 それなのにシュンペイのもとには、ヨーノスケの噂を聞きつけた人たちが、それもどういうわけか美人ばかりが、何がしかの問題を抱えて相談に訪れる。美人の頼みを断れないシュンペイは、彼女らをヨーノスケと同居している倉庫に案内するのだが、そこには「蒸しアンパンのような顔」をしたもう一人の同居人、両角一角がいる。本名はモロズミカズミだが、シュンペイたちは<イッカク>と呼んでいる。彼は非常な読書家で、特に推理小説が好きらしく、本人もかなりの理屈っぽい性格である。ヨーノスケが超能力で美女の悩みと格闘しているあいだ、イッカクは頭を使って推理することでその悩みを解決に導こうとするのだが……。

 本書に収録された7編の短編は、どれもこんな感じです。理屈屋のイッカクの推理はいつも驚くべき結論に達し、相談者の美女たちはことの真相を確認するために慌てて飛び出していくのですが、イッカクの推理はいつも見事に外れている。そして美女たちの悩みは、飛び出していったあとに彼女たち自身が解決してしまう。美女がシュンペイたちに礼を言いに戻ってきたときにようやく、ヨーノスケの超能力が真相に行き当たる――。つまりこの作品、僕は「日常の謎」系ミステリーと書きましたが、じつはミステリーでもなんでもないような気がします。ミステリーのふりをしたフェイクミステリーとでも言いましょうか。あるいは、解説を読むと、アンチミステリー的な要素をはらんでいることも解ります。

 とはいえ、「ミステリーじゃないからつまらない」というわけではありません。お約束どおりの展開を繰り返す、いわゆる“天丼”は秀逸だし、会話やちょっとした人物描写にもユーモアがあって面白い。また、悩み相談に来る美女たちの、外見の描き方――外見と内面のリンクのさせ方――がものすごく上手い。
 人を見た目で判断しちゃいけませんというけど、実際のところ、内面が外見に与える影響って、かなり大きいと思うんです。だから、ある程度人を見る目を鍛えれば、外見からその人の性格を想像することはけっこう容易だったりする。プロの作家なら、そういう人間観察の眼は当然持っているのでしょう。この作品に登場する美女たちの外見と、彼女らが作中で見せる言動は、すごくマッチしてるように思います。特に、5話目「哀れな猫の大量虐殺」に出てくる敷島尚子の描写は「いかにも」といった印象。「こういう外見の女は、たしかにこういう性格だよなぁ」と思わされます。

 これまで、夢人さんの作品というとかなりクセの強い印象でしたが、本書は非常に読みやすく、明るく楽しい作品でした。こういう作品も書くんだ、という新鮮な驚きがありましたね。過去の長編作品では、「面白い」とも「面白くない」とも言えなくなるような、なんとも複雑な心境に陥ったこともあり、読み手を選ぶ作家というイメージもありましたが、本書は素直に楽しかった。これなら読み手を選ばず、万人に薦められる感じです。夢人さんは『the TEAM』という作品でも、霊能者とその仲間たちを主役とした物語を書いているようで、そっちも読んでみたくなりました。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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