闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『一の悲劇』法月綸太郎

 名探偵法月綸太郎が活躍するシリーズの4作目。前作『頼子のために』が非常に良かったので、かなり期待して読みました。
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 広告代理店に勤める山倉史郎は息子の隆史を誘拐したといって身代金を要求される。しかし実際に誘拐されたのは隆史ではなく、仲の良い同級生・冨沢茂だった。犯人は誘拐する子供を間違えたのだ。犯人の指示通り金を用意した山倉だったが、なんと身代金の受け渡しに失敗してしまう。そして数時間後、茂は変わり果てた姿で発見された。
 「あなたが、茂を殺したのよ!」
 茂の母親・路子の言葉に、山倉は絶句する――。
 前作のレビューとの兼ね合いで、ハードボイルド論めいたことを書こうかと思ったのですが、この『一の悲劇』、僕はハードボイルドだとは思わないですね。プロの文芸評論家を向こうにまわして論戦張るつもりもないですが、やっぱり僕は、池上冬樹氏とは意見が合わないようで。
 僕なりのハードボイルドのイメージ(定義といえるほど煮詰まっていないし、煮詰めるつもりもない)というのは、権力や巨悪に対して、小さくて弱い人間が、一人もしくは少人数で、ゆるぎない信念のもと、大切なものを守るために戦うというもの。それに対して、本作の主人公・山倉は、前半は卑劣な誘拐犯に振り回されるばかりで“戦う”という意識に至っていないし、後半、犯人を突き止めるために行動を始めるのも、姑息な保身意識が先に立っていて、それゆえに視野狭窄で危なっかしい行動に終始しているので、ゆるぎない信念やプライドにもとづく戦いというような、(僕が考える)ハードボイルド的なカッコよさとは無縁なんですね。
 もっとも、ハードボイルドか否かというのは、この作品の本質とはほとんど関係がないことだと思いますが。

 法月シリーズは、一作目の『雪密室』からずっと、家族、特に父と子の関係というものを重点的なテーマとして描いていると思います。本作では、浮気相手との間にできた子が誘拐・殺害されるという事件を通して、家族とは、夫婦とは、親子とはなんなのかを問うていきます。ちょっとした不運の重なりが、とてつもなく大きな不幸を呼び込んでしまうという、ある種の因縁話めいた構造は前作『頼子のために』と似ていますが、小説としての完成度は前作のほうが上回っているかなという印象です。
 前作は綸太郎という傍観者の視点から語られることにより、事件の悲劇性やその背後にあったものの残酷さというものがより一層際立ったと思いますが、本作は綸太郎が脇役にまわってしまって、事件の当事者目線の一人称で語られることにより、ある意味で一面的な語りにならざるをえなかったこと、密室やダイイングメッセージという、いかにも“本格”風な要素が、なんだか本格ミステリを名乗るためのアリバイ作りみたいで、ちょっと浮いていること(この辺は池上氏の指摘と被りますね)などが、作品の完成度にややマイナスとなっている気がします。
 作者曰く、本作は“探偵・法月綸太郎の視点から物語を書き進めることができなかった”そうで、“彼はいったん、他者の視線にさらされなければならなかった”といいます。それは小説を書くうえでの技術的な要請というよりも、作者の心理的な面の問題だったようで、このあたりが、法月さんが「悩める推理作家」と呼ばれる所以なのかもしれません。

 さて、次は『ふたたび赤い悪夢』ですか。これも作者の言葉を借りれば、“とめどなく散乱する語りの中から、もう一度探偵の視点を取り戻そうとする作家の苦い遍歴の旅にほかならない”とのこと。ちょっとこの言葉からだけでは、どんな小説なのか見当もつきませんが、当然、僕はもう「読まねばならぬ」という気になってます。またいずれ、blog記事にするでしょう。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(2)|trackback(1)|読書|2009-10-27_03:18|page top

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法月綸太郎 『一の悲劇』 感想
 名探偵法月綸太郎が活躍するシリーズの4作目。前作『頼子のために』が非常に良かったので、かなり期待して読みました。一の悲劇 (ノン・ポ...

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哀しい終わり方です
頼子と比べるとどうしても見劣りしてしまうという意見については同感です。個人的に法月警視の扱いがどんどん悪くなっていってるのが哀しいですが。。
毎度々々謝々多々!
>>峰川幸介三世さま。
本作は綸太郎の方も存在感ないですからね。
警視の影が薄いのも致し方なしではないかと。

それにしても、こんな小説を読むと、女ってコワいなぁと思うし、
結婚なんてしたくなくなりますね。
そう思うのは、僕だけかな?

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tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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