闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

月別アーカイブ

検索フォーム

広告!

ブロとも申請フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
HP Directplus オンラインストア
comments(-)|trackback(-)|スポンサー広告|--------_--:--|page top

小説『マレー鉄道の謎』有栖川有栖

 有栖川有栖の国名シリーズ第6弾。シリーズ中最長の長編であり、2003年、第56回日本推理作家協会賞を受賞した作品。
マレー鉄道の謎 (講談社文庫)マレー鉄道の謎 (講談社文庫)

講談社 2005-05
売り上げランキング : 114235
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 大学時代の友人、衛大龍(ウイ・タイロン)の経営するゲストハウスに招かれ、〈マレーシアの軽井沢〉と呼ばれるリゾート地、キャメロン・ハイランドを訪れた火村とアリス。美しい景色と豊かな自然、おいしい料理のある楽園で、リラックスした時間を過ごすはずだった二人だが、滞在二日目、日本人実業家・百瀬虎雄の自宅敷地内にあるトレーラーハウスで、マレー人青年ワンフーの死体を発見してしまう。それが、楽園に吹き荒れる嵐のような連続殺人の幕開けだった……。
 三人の優しい男たち――。僕はこの作品に、そんな副題をつけたい。繊細な火村、素朴なアリス、純粋な大龍。三人の男たちの優しさが胸に染みる、そして、それに比してあまりにも残酷で冷徹な殺人者のありようにおののく、そんなミステリ。

 有栖川作品のいちばんの魅力は何か。本格の王道を行く端正な作風。たしかにそれも大きな魅力です。軽妙なユーモアや多面的に造形されたキャラクターの魅力。それもある。だけど、僕が有栖川作品を好きないちばんの理由――それは、『スウェーデン館の謎』文庫版の解説で、宮部みゆき氏が指摘している「優しさ」という言葉、これに尽きます。
 有栖川作品は優しい。本作は特に、その優しさを強く感じました。それも、これまた宮部氏の言葉を借りるなら、“やみくもな博愛ではなく、それが往々にして毒となり罪の元となることをも、充分承知した大人の優しさ”が詰まっています。
 終盤、想像もしていなかった大事件に巻き込まれた上、犯人の疑いをかけられて落ち込んでいる大龍を励まそうとするアリスと、それに反応した火村がどういうわけかお互いの悪口の言い合いになり、それを大龍がとりなす、というくだりにぐっと来るし、火村に犯人と名指しされた人物が、その人物を愛した人と向き合う場面の印象も強烈で、作中のアリス同様、静かな衝撃を感じました。

 アリスに“恋愛下手の片想い好き”と評された大龍ですが、この作品の登場人物には他にもそういう人が何人もいて、だけど想う相手が、必ずしも善良で優しい人だとは限らないという非情な現実も、またあったりして。かみ合わない純情と、連鎖する悪意のギャップ――それも、この作品の印象深いものにしているポイントでしょう。

 作品冒頭、火村とアリスが「悪とは何か」について問答を交わす場面があり、これはかなり興味深かったです。火村の意見は的を射ているようだけど、あまりにドライで冷たい気がする。そのことを、おそらく火村自身もわかっている。それが切なく、痛々しい。そして、この問答の中で火村が投げかけた最後の問いが、クライマックスの、犯人にある選択を迫るという場面で、意味を持ってくるのかもしれません。
 人には悪を避ける自由があるのか――?
 アリスは「おそらく、(そこまで)自由ではない」と考えたけれど、僕は、その自由が“ある”と信じたいです。
火村英生に捧げる犯罪火村英生に捧げる犯罪

文藝春秋 2008-09-25
売り上げランキング : 13326
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

46番目の密室 (講談社文庫)46番目の密室 (講談社文庫)

講談社 2009-08-12
売り上げランキング : 24230

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

スポンサーサイト

Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

HP Directplus オンラインストア
comments(0)|trackback(0)|読書|2009-11-04_00:59|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

参加ランキング

クリック感謝!

NetShop

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。