闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『私が殺した少女』原りょう

 原りょう氏(りょうの字は「寮」のウかんむりがない形)の作品を読むのは初めてになります。法月綸太郎氏が『一の悲劇』のあとがきで、本書に大いに影響を受けたと書いていたので、読んでみることに。
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 「行方の分からない家族のことで相談したいことがあるので、午後二時に真壁脩の目白の自宅まで出向いてほしい」
 まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日は、その電話で始まった。約束どおり出向いた真壁邸では誘拐犯の疑惑をかけられて警察に身柄を拘束され、かと思えば誘拐犯からじきじきに身代金の受け渡し役に指名され、荻窪―高井戸間の環八通りとその周辺の店をコマ鼠のように走りまわされる。あげく、暴走族風の若者二人に絡まれて乱闘になり、後頭部に強い一撃を受けて、私は気を失った――。
 法月さん自身、「影響を受けたという言い方ではあまりにも不足」と書いているとおり、物語序盤の、主人公が誘拐犯の指示で身代金を持ってあっちからこっちへと走り回らされる展開は、ほとんどパクリと言っていいくらい似通っています。ただ違うのは、『一の悲劇』の山倉史郎は事件の当事者――息子を誘拐され、身代金を要求される張本人――でしたが、本作の探偵沢崎は、徹底して部外者だということ。
 部外者であるにもかかわらず、真壁脩の一人娘、清香の命に責任を負ってしまった沢崎の、“まるで拾った宝くじが当たったように不運な一日”と、その後につづく“さらにもっと不運な日々”が描かれる本作。誘拐事件を通じて家族が抱える複雑な事情が浮き彫りになって行くストーリーは、法月作品とも相通じるものを感じますね。また、家族を守らねばならない人々と、一匹狼の探偵が対比されることで、より“守るものがあること”の苦しさや弱みが強調されてきます。

 物語の主人公は、私立探偵の沢崎。かつての相棒・渡辺賢吾が暴力団〈清和会〉の覚醒剤と現金一億円を持って姿を消したため、以来8年間、〈清和会〉のヤクザたちや新宿署の錦織警部との腐れ縁を持ちながら、もとは相棒が設立した〈渡辺探偵事務所〉の看板を一人で守り続けている男です。
 主人公でありながら、この男の情報はほとんど描かれてなくて、下の名前も不明なら、年齢もよく解りません。いちばん最後のページに三十年前うんぬんという一文があるので、30より若いということはなさそうですが、40代か、50代か、60以上なのかははっきりしません。まあ、周囲の人々の態度なども考え合わせると、30代後半~40代半ばの間というところでしょうか。

 独特の文体は「翻訳もののよう」といわれたりするようですが、翻訳ものが苦手な僕でも、特に苦もなく読めました。ほとんどのセンテンスが過去形・完了形(「~した。」「~だった。」)で書かれていて、その連打が特有のリズムを作っているようです。そんな中、そこだけ現在進行形で書かれている11章の最後の一文は強烈。きわめて効果的な表現だと思いました。
 台詞がいい、という声が多いようですが、僕は少なくとも本書を読んだ限りでは、台詞以上に、言葉に表さない思考や行動・態度を描写した地の文に痺れました。けっして感傷的になったり、内省的になったりはしないですが、それでもそこには、沢崎がこれまでの人生で味わってきた、あるいは今現在味わっている痛みや苦味、そしてそれらを甘受しながらも“プロとして”生き抜いていく覚悟や強固な決意などが滲み出ていて、とても格好いいのです。しかも堅苦しくなりすぎず、そこはかとなく“粋”で。大人の男の格好よさって、こういうことでしょ、みたいな。

 原氏は極めて寡作な作家で、巻末の著作リストを見ると、デビューして21年経つ間に出版された本は、エッセイ集みたいなのを入れても7冊しかない。小説本は5冊。そのすべてで、本書の主人公、探偵沢崎が活躍してるようです。本書は大ラスのどんでん返しに若干の収まりの悪さ(えっ、そんな話にしてしまっていいの?的な)を感じないでもないのですが、全篇を貫くハードボイルド精神――リズミカルな文体、クールな場面描写、粋な台詞、人や社会への鋭い視線など――は、どれも満足できるものでした。これは他の作品も読まないと――そう思わされました。
 『頼子のために』を読んで以来、だいぶハードボイルドづいてきてるな――。
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Theme:推理小説・ミステリー
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comments(0)|trackback(1)|読書|2009-11-07_02:46|page top

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原リョウ 『私が殺した少女』 感想
----あらすじ---- 私立探偵の沢崎は、依頼を受けて訪れた家で誘拐事件の共犯者として逮捕されてしまう。やがて疑いはほぼ解けるが、被害者の伯...

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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