闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『無人踏切―鉄道ミステリー傑作選』

 本格ミステリーの巨匠・鮎川哲也氏が編んだ、鉄道ミステリーの傑作選。新旧のミステリー作家に加えて、アマチュア作家や異業種のクリエイターの余技的な作品まで網羅した、バラエティ豊かな作品集。
無人踏切―鉄道ミステリー傑作選 (光文社文庫)無人踏切―鉄道ミステリー傑作選 (光文社文庫)
鮎川 哲也

光文社 2008-11-11
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 本書を購入したいちばんの目的は、なんといっても有栖川有栖作「やけた線路の上の死体」を読みたかったからです。とはいえ、14編もの短編が収録されていますし、新旧様々な作者の作品が読めるので、今まで知らなかった作者との出会いも楽しめるのが、アンソロジーのいいところ。
 
 14作全部をレビューすることは出来ないので、気に入ったものをいくつか。

 「「雷鳥九号」殺人事件」(西村京太郎)…大阪発金沢行きの「雷鳥九号」のトイレのなかで、東京の会社社長が銃殺された。容疑者はすぐに逮捕・起訴されるが、公判中、弁護士はほとんど反対訊問をせず、不気味な沈黙を守り続ける。公判三日目、金沢市内でとある代議士の銃殺死体が発見されるが、その凶器が「雷鳥九号」の事件と同じ拳銃であることが判明して……。
 鉄道ミステリーといえばこの人、といっていいでしょう、西村京太郎氏の十津川警部シリーズ。僕はほとんど読んだことがなかったんですが、この作品は鉄道を利用したトリックに加え、法廷ドラマという側面もあって、なかなか読み応えがありました。選者の鮎川氏も書いていますが、これだけ見事なトリックのアイディアを、短編で使うなんてもったいない気も。ただ、全盛期の西村氏はあまりにも多忙だったから、アイディアが浮かんだら暖めたりせず、どんどん作品にしていかないと間に合わなかったのかも。

 「誰かの眼が光る」(菊村到)…金曜日の夜、国電Q駅のホーム。仕事帰りに馴染みのスナックで酒を呑み、いい気分で家路に着こうとしていた浅野正一は、いきなり後ろからぶつかってきた男を、反射的にホームの外へ突き飛ばしてしまう。直後にすべりこんできた電車に、男は轢かれて死んでしまった。浅野はその場を逃げ出すが、数日後、浅野の会社に「私は見ましたよ」という脅迫電話が掛かってくる……。
 ストーリーの発端となる出来事が駅のホームで起きたということ以外、鉄道とはあまり関係がないので、これを鉄道ミステリーと呼んでいいの?という一作。それどころか、犯人探しやアリバイ崩しといった謎解き興味も希薄で、ミステリーですらないような。末尾の鮎川氏の解説によると、「雑誌に発表されたときにはサスペンス・ミステリーと謳われていた」そうですが、これはもう単なる「サスペンス」でしょう。ただ、脅迫者におびえながらも、自分が殺してしまった男の妻に惚れてしまう主人公の倒錯した心理を軸にしたストーリーは面白いですし、“悪女”の描き方が強烈。「サスペンス」としては非常に秀逸だと思います。

 「やけた線路の上の死体」(有栖川有栖)…夏合宿と称して、メンバーの望月周平の実家がある和歌山県南部にやってきた、英都大学推理小説研究会の江神部長、望月、織田、そして僕こと有栖川有栖。その晩、紀勢本線の切目―岩代間で上り列車が人を撥ねる事故が発生。当初は自殺と思われたが、その後の捜査で殺人の可能性が濃厚になる。興味を抱いた僕たちは、望月家の隣人で新聞記者の滝目氏から情報をもらい、独自捜査に乗り出すことに――。
 繰り返しますけど、本書を読んだ最大の目的はこれですからね。有栖川氏の長編デビュー作『月光ゲーム』より前に発表されているので、ある意味、これこそ真のデビュー作と言えるのかもしれません。学生アリスシリーズでは珍しい短編作品ですが、探偵役を務めるのはもちろん江神さん。後の長編作品の江神さんと比べると、少し口数が多くて明るい印象があります。けっこう喋るんや、江神さん。作家アリスシリーズとは一味違った、若い登場人物たちの活き活きとした会話、そして語り部・アリスの心の動きを鮮やかに描き出すみずみずしい文章は、繰り返し読んでも楽しく、感興は尽きません。列車を利用した、けっこう大掛かりなトリックが使われる一方、精緻で抜け目ない論理で容疑者を特定する。トリックとロジックがバランスよく配された、いかにも有栖川さんらしいミステリだと思います。

 「「死体を隠すには」」(江島伸吾)…大学時代の友人・田沢から何年ぶりかの手紙が来た。手紙には、教師となった田沢が、最初に赴任した学校で上司の娘と結ばれたこと、それからは二人して地方の分校を転々としたが、やっと四国の山奥に落ち着けそうだということなどが綴られていた。私は、学生時代に田沢の親友で好敵手でもあった三木とともに田沢に会いに行くが、田沢は密室と化した学校の宿直室から、煙のように姿を消してしまう。その日の夕方、校舎の西側の崖下で、田沢の死体が発見される。その手には、「死体を隠すには」と書かれた紙片が握られていた……。
 これがアマチュアの作品だというのは、ちょっと信じられない。それぐらいよく出来てると感じました。「死体を隠すには」という思わせぶりな言葉といい、手の込んだトリックといい、主人公たちの感傷が滲み出た文章といい、事件後のシーンと事件の回想シーンを交互に描く構成といい、ほとんどプロの仕事と遜色ないと思います。こういうセンチメンタルな本格ミステリって、たくさんありそうで、じつはあんまりない気がする。実際、本書の中でもこの作品は異彩を放っていますから。ただ、これも事件そのものは鉄道となんの関わりもない。鉄道ミステリーと呼ぶのは、いささか無理ありすぎでしょ。

 ――と、4作ほど紹介してみました。他にも、赤川次郎氏のデビュー作「幽霊列車」が入っていたり、編者・鮎川氏自身の作品も「無人踏切」というのが入っていたりしますし、一方でアマチュア作家の作品もあり、ショートショートも入っていたりと本当に多彩な作品が収録されています。個人的には「砧最初の事件」(山沢晴雄)や「鮎川哲也を読んだ男」(三浦大)あたりも、かなり面白かったですね。
 なにせ14作も入っているので、けっこう分厚い本ですが、厚さに見合う満足感を得られる本だと思います。本書が刊行されたのは1986年ということですから、収録されている作品は今から見るとどれも古く、当然パソコンや携帯電話なんか出てこない作品ばかりですが、どれを読んでも充分に面白くて、優れたミステリーは時代を超えるんだいうことを改めて感じましたね。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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