闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『黄昏の囁き』綾辻行人

 綾辻行人の『緋色の囁き』『暗闇の囁き』につづく、「囁き」シリーズの第3弾。謎解きミステリとしての要素は控えめながら、サイコ・サスペンス風の味付けは、むしろ「綾辻らしさ」が全開になっているともいえる、ファンなら必読の作品。
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 兄の急死の知らせをうけて帰郷した大学生の津久見翔二。帰郷早々、事故死と聞かされていた兄の死が、じつは自殺、あるいは何らかの事件に巻き込まれた可能性があることを知る。兄の予備校時代の講師である占部直毅の協力を得て、兄の死を調べ始めた翔二は、兄の幼馴染だったという三人の男たちと出会う。何かに異常な怯えを示す三人。やがて一人、また一人と彼らが殺されていく。事件の謎を解く鍵は、翔二の記憶の奥底に眠る、十五年前の黄昏の風景にあるのか……。
 
 正直、地味っちゃあ地味な作品ではあります。『館』シリーズのように凝りに凝った装飾もないし、同じ『囁き』シリーズの前二作が“山奥の寄宿舎学校”(『緋色の囁き』)や“人里離れた別荘地”(『暗闇の囁き』)に舞台を設定して、それによって日常性から乖離した浮遊感を持たせていたのと比べると、本作では、ごく普通の地方都市が舞台で、事件もそれを巡る人々の動きも、その街の中で展開する。普通に刑事なんかが出てくるし、そういう部分では、ある面、綾辻作品らしくないくらい、“日常”の匂いが濃い作品です。
 でも、逆に綾辻作品らしくない枠組みの中であるだけに、作中のそこここから覗く綾辻らしさが、いい味のスパイスとして効いているような、そんな印象もあります。
 先に「“日常”の匂いが濃い作品」と書きましたが、そんな日常など唾棄すべきものだというように、主人公は登場早々「最低だ」と繰り返し呟きます。主人公の協力者となる占部直毅も、30歳をすぎているのに定職についておらず、あまり“日常”の匂いを感じさせない。そんな占部に共鳴し、一種の憧れに近い感情を抱く主人公の姿は、やはり唾棄すべき日常から開放されて自由になりたいという心情が窺えますし……このあたり、なんか上手く言えないんですけど、綾辻作品の本質的な部分、受けれ難い、かといって逃避も出来ない日常とどう向き合うのか、といったようなテーマが感じられると思うんですね。

 ミステリというよりサイコ・サスペンスの色彩が濃い『囁き』シリーズなので、謎解き的な要素はあまりかっちりしたものではありませんが、それでも文章のあちこちに、ミステリ的な(特に叙述トリック的な)テクニックが駆使されています。真相が明らかになると、「あれも伏線だったのか!」と驚き、納得する部分が多々。こういう構成の妙はさすがですね。
 事件の真相に関しては、動機の部分で「人を殺すほどの問題なのか?」という疑問が湧きます。また、殺される側の四人も、なにもそこまで怖れることでもないだろうという気もしますし。ただ、人は一度負い目を負ってしまうと、心が歪められてしまうのかもしれない。作中でも、狂気を抱え込んだ犯人が、普段は何食わぬ顔で社会生活を営んでいたわけですが、現実にもそういうことはあるかもしれない。なんの問題もなく見える人が、歪んだ精神を抱えているかもしれない。要するに、人の心の内なんて、他者からは窺い知れないということ。「それほどの問題?」なんて、当事者じゃないからこそ言えることなのかもしれないですね。
 最終的に、主人公と両親の関係改善が置いてけぼりのまま、物語が幕を下ろしてしまうのはちょっと不満です。ただ、受け入れがたい日常との、自分なりの向き合い方を見つけたような主人公の姿は清々しい。綾辻作品で、清々しい終わり方をする作品も珍しい気がしますね(今ざっと思い返しても、他に思いつきません)。そういう意味でも、“らしさ”と“らしくなさ”が入り混じった本作は、綾辻作品の中でもちょっと異彩を放っています。いい意味でアクが弱いので、綾辻作品の入門書にいいかも。個人的には、不満もあるけど、けっこう好きですね。
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comments(2)|trackback(0)|読書|2009-12-15_23:54|page top

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読むペース早いですな
今作は二時間サスペンスのような雰囲気漂う作品である気がします。日常に潜む恐怖、人間の裏の顔をテーマにした、綾辻氏風に言うと『雰囲気小説』であると思います。雰囲気に重点を置いていると言うところは、この囁きシリーズの共通点ですね。
先月の君には負けるよ。
そう、『雰囲気小説』なんですよね。そこが綾辻作品らしい。
もう一つの“綾辻らしさ”は「子ども」ですが、そこにはちょっと裏があったりして。
今のところこれで終わってる『囁き』シリーズですが、続編出してほしいですね。

そういえば綾辻さん、最新作『Another』の評判が、『このミス!』で年間3位に入るなど、すこぶるいいようで。
でもなぁ、ハードカバーだし。文庫待ちだなぁ。

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tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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