闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『彼女はたぶん魔法を使う』樋口有介

 『彼女はたぶん魔法を使う』――本書を読むことにした理由は、このタイトルに惹かれたからです。いいじゃないですか、こんな洒脱なタイトル。
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 主人公の柚木草平は元刑事のフリーライター。といってもライター業だけでは食えず、警察時代の上司で恋人の吉島冴子を通じて回ってくる事件を調査する、私立探偵めいた仕事で食いつないでいるというのが本当のところ。今回持ち込まれたのは、広告代理店に勤める島村香絵という女性からの依頼で、一ヶ月前に交通事故で死亡した“ことになっている”妹・島村由実の死について、本当にただの交通事故だったのか調べてほしいというもの。しかし調査をしてみると、依頼人である島村香絵はいくつかの重要情報を柚木に隠していたことが判明する。いったい香絵の思惑はどこにあるのか……。
 
 一年前の僕はまだ若いつもりでいたけれど、今年に入ってからは、やたら自分が「おっさん」に思えてしょうがない。去年までは「真っ当な大人になんかなってやるもんか」と思っていたのに、今は「真っ当」ではないにしても、それなりに「大人」に見られたい、「大人としての魅力」を身につけたい、なんて思っている。それは何も、年下の女の子に惚れたからだけが理由じゃなくて、やっぱり僕も、着実に歳をとっているということなんだろうなぁ。
 のっけから何を書いてんだと思われたでしょうが、こんなことを書いたのにはちゃんと理由はあるんです。というのも、この『彼女はたぶん魔法を使う』という本を読みながら、「年齢を重ねること」について、なんだか妙に考えてしまったからなんです。

 私立探偵ものなので、一応ハードボイルドに分類されるのかな?ただ、この作品をハードボイルドと言ってしまっていいものかどうか、僕にはちょっとためらいがあります。たとえ頭に「軽」をつけるとしてもね。
 本作の主人公・柚木は、ハードボイルドの主人公にしては、あまりに怠惰なんですよね。本人が“人生に気合の入っていない俺”と言うくらいですから。もっとも、“人生に気合の入”らなくなった原因みたいなのは作中でほのめかしてあって、それはそれでなかなかに重い過去なんですが、重い過去を背負っていたらハードボイルドかっていうと、それも違うと思うし。
 やっぱりハードボイルドの主人公は、何かと戦う過程で決意とか覚悟とか信念とかを滲ませていくものだと思うんですが、柚木は戦ってないですからね。なにせ“たいして努力なんかしなくても人生ってやつは、だいたいは、なんとかなる”んですから。

 とかなんとか言って、ハードボイルドだろうとなかろうと、べつにどうでもいいんですよ。小説が面白ければ。
 本作は、面白いですよ。軽妙洒脱な文章も、社会や人生に対する柚木の身も蓋もない論評(?)も、それぞれ個性的に描かれた美女たちも、なかなかに魅力的。調査が進むにしたがって意外な展開を見せる事件の謎解きも、いわゆる「本格」風のかっちりしたものではないですが、これはこれでよく描けているのではないでしょうか。
 でも、柚木が女性にやたらモテるのは、ちょっと気に入らないかも。本文庫の解説は女性が書いてるんですが(大矢博子という人について、僕はまったく知りませんが)、その人に言わせると、柚木は“モテるのも当然”なほど、素敵なんだそうです。これが世の女性の多数派の意見だとしたら、やっぱり女が男を見る目なんて信用できねぇな、という気がします。男から見たら、柚木は女性を幸せに出来ないタイプだって、一目瞭然っぽいんですけどね。

 ところで、冒頭に書いた「年齢を重ねること」についてどうのこうのという話。本作を読んだ僕が、なぜそんなことを考えたのかですが、作中、柚木が年下の登場人物たちに、人生訓めいたことを垂れるシーンが多いんですね。それは真っ当な大人としてのアドバイスというよりは、ほとんど“人生に気合の入っていない”おっさんの、あきらめに近いようなぼやきなんですが、そういうぼやきの数々が、若さのいい面や悪い面、歳をとることで得るものや失うものといったようなことを、いちいち的確に突いてきて、考えさせられたんです。そして真っ当に生きることを完全に諦めてしまった柚木ならではの、身も蓋もない人間観も、けっこう真を得ている感じで。そういうところに、妙に感じ入ってしまったのですが、それはやっぱり、今の僕が年下の女の子に惚れているせいなんですかねぇ。
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comments(2)|trackback(1)|読書|2009-12-19_23:59|page top

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樋口有介 『彼女はたぶん魔法を使う』 感想
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本作に共感する読者は
柚木の「人生何とかなるもんだ」発言に同調する情けない人間が多いような気がする。。。かと言ってそれが悪いとかじゃなくて、柚木は軽いけどそれなりに信念をもってはいるんですけどね。ところでTBを間違えて内容が良く分からない事になってしまったよ。
コメント毎度THANK YOU!
>>峰川幸介三世さま。
草平の人や社会に対する批評は、意外と鋭いんですよね。そして言葉遣いがいちいち粋。
「スターとファンは近づきすぎないほうがいい」みたいな台詞には、わが意を得たり、と思ったり。
信念、というより草平の場合は諦念というのに近い気がします。でも、それは彼自身が生きてく中で、
自分の体と心で掴み取った実感だから、それを信じるというところはブレない。
そこがハードボイルドっぽくて、格好いいっちゃあ格好いいところです。

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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