闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『三人のゴーストハンター』我孫子武丸・田中啓文・牧野修

 PS2用ゲーム『かまいたちの夜2』を共同作業で作り上げた三名の作家による、競作であり共作でもある、連作短編集。三人がリレー形式で物語を紡いでいき、ラストは三者それぞれが用意した三通りのエンディングが待っている。
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 国枝特殊警備保障㈲は、名前の通りの特殊な警備会社。一般の警備会社の手に負えない怪異現象が起きたとき、その警備を引き継ぐという、心霊や怪奇事件専門の警備会社なのだ。四年前の「ある事件」をきっかけに設立されたこの会社の主なメンバーは、酒もタバコもドラッグもセックスもしたい放題の生臭坊主・洞蛙坊、失った左目で他人の妄想を見ることができる比嘉薫、そして霊など存在しないと信じる科学者・山県匡彦。彼らが、立て続けに起こる怪奇事件を、それぞれのやり方で解決していく。
 
 この本はだいぶ以前に読んでいたのですが、最近、友人がblogで取り上げていて、その記事を読んでいたら、内容をほとんど忘れていることに気づきまして。ちょいと再読してみることにしたのでした。
 一人の主人公につき三つ、三人分あわせて九つのエピソードと、その九話すべてを前振りにしたラストエピソードが三通り。つまり全部で十二の短編が収められています。全部の感想を書いていたら大変なことになっちゃうので、それぞれの主人公の最初の一話と、最後の一話の感想を書きたいと思います。

 まずは最初の話――。
 「熱キ血汐ニ……」…国際的な産業機器メーカー〈ハムラビ電気産業〉の研究所で、極秘研究に従事する社員が立て続けに変死を遂げた。犠牲者は一人目は舌を、二人目は陰茎を切断され、死体からは血液がほとんど失われていたというが……。
 洞蛙坊主役編。途中まではかなり真っ当なホラーで、おどろおどろしい雰囲気とともに、魔性の者の居所を探る、ちょっとサスペンスタッチなムードもあって、楽しく読んでいました。が、洞蛙坊が悪霊を祓うために行う〈ババ囲い〉の準備を始めたあたりから「ちょっとこれはキツイわ」という臭いが。これはものの喩えとかじゃなくて、本当に臭いの問題。〈ババ囲い〉の〈ババ〉というのが、つまり〈うんこ〉のことなんですね。真っ当なホラーと見せかけてじつは、下品極まりない下ネタとストレートな駄洒落のオンパレードなギャグ×ホラー小説というのがこの作品の真の姿。霊の正体やそれが生まれた理由などはけっこうちゃんとしてて、重みがあるんですが、洞蛙坊の下品さがすべてを台無しにしてる。その台無し感こそが味であるという、妙な小説です。面白いけど、読み手を選ぶかもな。

 「獣日和」…食品会社のオフィスに出没する巨体の犬。そいつは八日前に社員を一人殺し、今度は警備員室を襲った。緊急の呼び出しを受けて駆けつけたぼくが目にしたもの。それは犬などではない。誰かの悪意が生み出した妄想なのだ……。
 比嘉薫主役編。洞蛙坊パートよりもはるかに上品です。こっちはかなり本格的な、幻想的なムードさえ漂わせるホラー。失った左目で他人の妄想を見、存在しない右腕で妄想に触れる。怪異の正体はすべて、人の悪意敵意殺意が形を持ったものだとするのが比嘉の考え。その妄想を、妄想の右腕で抱きしめ、妄想の小箱の中に封じ込める。その様が独特なリズムを持った文体で描かれ、夢幻的なイメージを喚起する。すごく想像力を刺激されて面白いんですが、ちょっと難点は、性的描写がわりと露骨なこと。しかも比嘉の性癖が、ちょっと独特だから、すんなり受け入れるには抵抗があるという人は、少なくないんじゃないかな。

 「楕円形の墓標」…上から見ると楕円形をしている、通称「オーバル・エッグ」というオフィスビルで、警備員が女の幽霊を目撃する。このビルでは半年前、OLが自殺しており、その幽霊が出るという噂があるというが……。
 山県匡彦主役編。前二編の主人公たちと違い、山県はオカルトの類は一切信じない、超現実主義の科学者ですから、作中の事件も当然、科学的に解決されます。怪異を科学的に説明して、霊などは存在しないことを証明するわけですから、これは立派な本格ミステリ。ホラー風本格というのは、『かまいたちの夜』の作者らしいですね。すべての謎が解けたあとで、それでもやっぱり霊はいるのかも、と匂わせつつ幕を下ろすエピソード。じつはそこに、結末に向けた重大な伏線が隠されていたりして。

 そして、三者三様のラストエピソード。
 「洞蛙坊の最期」…国枝特殊の面々が集うきっかけとなった四年前の事件。その惨劇の舞台となった屋敷の警備を依頼された。四年前と同様、テレビのオカルト番組のロケだ。しかし今この屋敷には、邪悪なものの気配はまったく感じられなかった。もうこの屋敷は安全なのか。それとも……。
 駄洒落ホラー完結。真面目なのかふざけているのか分からないですが、最期はなんかすごいことになる。ご都合主義とも言えるストーリーですが、そんなまともな批評をするのがバカらしくなる作品でもあります。洞蛙坊パートだけを読んでいたらこのエンディングでも楽しめたでしょうが、真面目な比嘉や山県のパートも踏まえると、ちょっと満足とはいえない結末かも。

 「虫籠ノ閨」…十五歳の時、神懸かりになった。その時から、白くぶよぶよした影を見るようになった。そして四年前のあの日。ぼくは左目と右腕を奴らに食われた。奴らは言った。お前は死なない。我らがお前を食らうことで、お前の身体は冥界へと通じる道となる――。
 幻想ホラーの終わり。終わりでもあり始まりでもあるような。時間や空間がすべてうやむやになって意味を持たなくなるような、そういう結末です。比嘉自身はハッピーエンドと言っているけれど、あまりに救いがなさすぎるよなぁ。これも比嘉のエピソードだけ読んでればよかったかもしれないけれど、洞蛙坊や山県が全然生きていないので、この連作の結末とするにはちょっと物足りない。ただ、パラレルワールドという認識を打ち出すエピソードと捕らえると、この連作を、特にマルチエンディングというシステムを理解するうえで重要な意味を持つエピソードかもしれません。

 「真実のありか」…四年前の惨劇の舞台を、再び訪れた私たち。あの時何があったのか、私の記憶は完全に失われている。しかし、こうして屋敷を見上げていると、失われた記憶が少しずつ甦ってくるようだ――。
 真実――それは単に四年前の事件の真相というだけでなく、山県匡彦という人物の存在そのものを揺るがすような事実を含んでいました。まあ個人的には、そういう話だろうってのはなんとなく読めてましたが、それでも書き方が上手いので、山県が真実を知る瞬間の重みというのはちゃんと伝わってきました。このラストエピソードに限っては、科学的な謎解きではなく、完全に心霊ホラーとしてのストーリーが展開します。クライマックスでは、洞蛙坊や比嘉のキャラクターも上手く活かされていて、この連作を締めくくるエピソードとしては、いちばんしっくり来るんじゃないでしょうか。それともそう思うのは、僕がミステリファンで我孫子ファンだからで、ミステリに興味のないホラー好きの人だったら、「洞蛙坊の最期」や「虫籠ノ閨」の方を気に入るんでしょうか。

 けっこう分厚い本なのですが、驚くほど速く読めてしまいました。再読ということもあるかも知れませんが、やはり一つひとつの話が面白い。もともとミステリ好きなので、我孫子氏の担当した山県匡彦のエピソードを気に入るのは当然として、それ以上にインパクトがあったのは、牧野修氏の描いた比嘉薫のパート。独特の幻想的な世界観、不思議なリズムのある文章には、かなり魅せられました。性的な描写も、初めて読んだときよりは抵抗を感じなかったのは、僕もちょっとは大人になったってことでしょうか。
 作品の成り立ちは『かまいたちの夜2』と密接に関わっていますが、内容はなんの関連もないので、ゲームをプレイしていなくても差し支えはありません。ミステリ好きもホラー好きも(もしかしたら駄洒落好きも)、ジャンルの垣根を越えて楽しめる作品なので、かなり幅広い人にお薦めしたい作品ですね。でも、女性に薦めたら「下品な人」って思われるかな、洞蛙坊のせいで。
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comments(2)|trackback(1)|読書|2009-12-27_02:16|page top

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我孫子武丸×田中啓文×牧野修 『三人のゴーストハンター~国枝特殊警備ファイル~』 感想
----あらすじ---- 一般の警備会社では手に負えないような奇怪な事件を専門に扱う国枝警備保障有限会社。この会社に所属する洞蛙坊、比嘉薫、山...

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再読ですか
読んだのはつい最近なのにあんまり内容覚えてない。。洞蛙坊パートを最初に持ってきた勇気は凄いかも。一話目の汚らしさに逃げる人続出みたいな。
再読なんですよ。
>>峰川幸介三世さま。
たしかに、一つひとつの話が短いので、印象的には
薄くなりがちですよね。改めて読んでみると、かなり
面白い作品ぞろいなんですが。
順番に関しては、アホ→きれい→かしこ、がいちばん
いいということなんでしょう。

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Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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