闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『新装版 白い家の殺人』歌野晶午

 デビュー作『長い家の殺人』に続く、歌野晶午氏の二作目。前作の登場人物、市ノ瀬徹や信濃譲二が再び登場するシリーズ作品。
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 猪狩産興のワンマン社長、猪狩昇介とその家族が年末年始を過ごすために訪れた、八ヶ岳山麓の別荘。高校生の娘・静香の家庭教師として招かれた市ノ瀬徹は、そこで凄惨な殺人事件に遭遇する。世間体を異常に気にし、警察の介入なしに事件を解決しようとする猪狩家の人々に、徹はかつて自身が巻き込まれた殺人事件の謎を解き明かした友人、信濃譲二の力を借りることを提案する。
 
 さて、歌野氏の第二作です。前作の『長い家』はだいぶ前に読みましたが、あまり感触はよくなかった感じです(当時の感想は→コチラ)。素人目に見ても上手いとは言えない文章やキャラクター造形、これまたぎこちないストーリーテリング、島田荘司氏の絶賛の言葉が虚しく上滑りしてしまうような苦しいトリック。かなり酷な言い方ですが、『長い家』ははっきり言って、プロのレベルに達していない――読者から「金返せ」と言われても文句は言えないぐらいの作品だったと思います。
 のっけから手厳しいことを書きました。では、そんな前作を踏まえて、本作『白い家の殺人』はどうだったのか。これがもう、素人目にも分かるほど進歩してるんですよ。文章とキャラクター造形、ストーリーテリングは、前作と比較にならないほど進歩してる。文章に関しては、上手いか下手かはともかくとして素人臭さが抜けて、ちゃんと小説を読んでる気分になれたし、キャラクターも前作ではほとんど大学生ばかり――それはたぶん作者が、自分に近い、それも出来れば自分が少し前に通過した年齢の人物でなければ、深く多面的に描けなかったからだと思うのですが――だったのに対し、本作では17歳の女子高生から85歳の老婆まで、年齢も社会的地位も様々な人物が登場します。それぞれの描き方はステレオタイプといえなくもないですが、それでも前作から比べれば大きな進歩でしょう。
 ストーリーテリングの部分でも、ダラダラとして緊張感のなかった前作とは大違いで、三日間のうちに三人もの人が死んでしまう矢継ぎ早な展開で、読者に息つく隙を与えず、また探偵役の信濃が事件の真相を関係者全員に語らなかったことで、意外な結末へと向かうラスト近くの展開なども、サスペンス感があります。

 そんな風に、前作『長い家』と比べたら格段に進歩していることは認めざるを得ない『白い家』ですが、だけど不満もいっぱいある。例えば、作中かなり長いこと、事件の最有力容疑者と目される、猪狩昇介の前妻・紀代という人物がいるのですが、彼女の嫌疑を晴らすために信濃が講じる論理が、どうも説得力に欠ける点。信濃は「動機がない」と言っているけど、そう言えるのは、紀代の言い分を全面的に認めた場合の話であって、彼女が息子の哲也とグルになって嘘をついている可能性もありえます。しかも信濃は、哲也が犯人でないことは証明していません。「息子が人殺しであるわけがない」と信じたい昇介の気持ちを利用して、体よく紀代まで嫌疑の外に出すことに成功しているけれど、それは論理的推理とは言わないんじゃないか、とか。
 でも何より、僕が不満なのは、『長い家』に引き続き作中の視点人物を務める市ノ瀬徹の、事件に対する態度です。
 徹が事件の犯人として強い疑いを抱くのは、猪狩家の長男・哲也ですが、彼はこの事件で最初の被害者となった静香の実の兄に当たります。静香は家庭教師の徹にとっては可愛い教え子であり、また自分のことを『好みのタイプ』とまで言ってくれた女の子です。いくら哲也の素行がいささか不気味で、家族からのけ者にされているような人物だとしても、そんな可愛い教え子と血のつながった家族を、大した根拠もなく殺人者扱い(それもかなり猟奇的な)する神経というのが、僕にはちょっと納得できず、徹が〈哲也犯人説〉を口にするたびに、ちょっとイラッときてしまっていました(僕も家庭教師やったことあるからさぁ)。

 そんな風に不満もありながらも、前作を読んだときに予想したように、本作では歌野氏の作家としての成長の過程をはっきりと見ることができて、なかなか興味深いものがありました。たぶん次作を読んだら、また今回感じた不満のいくつかが解消されてるんじゃないでしょうか。信濃という探偵のキャラも前作より魅力的になっているし、今後の『動く家の殺人』や『放浪探偵と七つの殺人』といったシリーズの続きへの期待値も高まりましたね。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(0)|読書|2010-01-12_00:54|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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