闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『悪党たちは千里を走る』貫井徳郎

 短編集『被害者は誰?』およびアンソロジー『気分は名探偵』所収「蝶番の問題」にて、名探偵・吉祥院先輩の活躍に触れて、貫井徳郎氏の描くコミカルな世界にはまった僕。貫井氏は重厚な作品も数多く書いていますが、数少ない(というか今のところ唯一らしい)コメディタッチの長編を読むことにしました。
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 高杉篤郎はせこいカード詐欺で生計を立てているケチな詐欺師。間抜けな相棒・園部がヘマを踏んだせいで今までの手口が使えなくなり、心機一転、大金を手にするために金の有り余った大金持ちを騙そうと企てるが、勇んで乗り込んだターゲットの家で同業者と思しき美女の妨害を受けてしまう。今度は園部の提案で、金持ちの家のペットを誘拐し、身代金をせしめようとするが、下見に訪れた家で件の美人同業者・菜摘子とばったり再会。成り行きで行動を共にすることになった三人だったが、事態はさらに意外な方向へ転がっていき……。
 ドジで間抜けだがやるときはやる、誇り高き小悪党たちの奮闘する姿を描いた、傑作クライム・コメディ。

 貫井徳郎オフィシャルサイト
 
 貫井徳郎氏という人はかなり作風の幅が広い作家だと思うのですが、どちらかといえば重厚でシリアスな作品が多く、“貫井ファン”といえる人たちも、おそらくそういう作風を好んでいるのでしょうね。だけど本作は全然テイストが違って、ライトでポップなスラップスティック・クライム・ミステリ。Amazonのカスタマーレビューで驚くほど評価が低いのは、ファンの人たちにとって、この作品が期待したものと相当違っていたからでしょう。
 一方の僕はといえば、貫井氏の作品は「吉祥院先輩」しか読んだことがなく、それゆえコミカルな作風は織り込み済み、本作を読んだのも、貫井氏の描くコミカル作品を読みたかったからこそ。その辺で、いわゆる“貫井ファン”な人たちとは読む前の心構えからしてだいぶ違っていたとは思うのです。しかし、そんな僕みたいに、初めからシリアスとか重厚さをまったく期待せずにこの『悪党たちは千里を走る』を読むと、これがなかなか、ドタバタ犯罪活劇として非常によく出来た秀作だと感じるはずです。物語終盤の、高杉が誘拐犯の正体に気づくくだりや、誘拐された少年・巧の居所を特定する場面などが少々ご都合主義というか、話が出来すぎていること意外は、文句なしに傑作と言っていいレベルじゃないでしょうか。

 個人的にこの作品に何よりも惹かれたのは、主人公の高杉のキャラクターでした。もうとにかく共感してしまって。年齢は僕より一回りぐらい上の設定なんだろうけど、ものの考え方とか、世間との向き合い方とかが僕そっくりで、読みながら「あー分かる分かる!」と心の中で手を叩くような場面が何度もありました。彼が詐欺師になった経緯も作中で説明があるのですが、心情的にすごく理解できたし、何より「そこで高杉は、人生を降りることにした。社会から落伍してしまうことに大きな恐怖があったが、降りると決めると気は楽だった」という二文は、僕が日ごろ思っていることそのままのようで、ちょっと感動すら覚えました。
 と、ここまで読んで、気づいた人もいるでしょう。そう、僕は基本的に社会の落伍者で、まっとうな生き方に背を向けた人間です。だから、まっとうに生きてる大多数の人々にとっては、高杉は共感しづらいキャラクターかもしれません。するとひいては、本作に対する評価も僕とは違うものになってくる可能性も、なきにしもあらず。
 ただ、キャラクター以外にも優れた点はたくさんあって、二転三転するストーリーや巧妙な身代金受け渡しのトリック、そしてすでに二ページ目(!)から真相への伏線が張ってあるという周到な構成などは脱帽もの。特にトリックに関しては、「久しぶりの誘拐ものなので、身代金受け渡しには前例のないトリックを盛り込むことを、自分自身にハードルとして課しました」(著者公式サイトより)とのこと。さらりと言ってますが、実際にそれを実行できるのだからすごい。ただ、警察とも被害者の家族とも一切接触せず、安全に身代金を受け取るというトリックゆえ、小説的には本来ならいちばんサスペンスが高まるはずの身代金受け渡しシーンが、あんまり緊張感のないものになってしまうというデメリットもありました。ここはちょっと残念かな。

 「読み終えて、このキャラクターたちとの別れを惜しんでいただけたら作者としては最高に嬉しいです」(著者公式サイトより)とのことですが、本当にお別れだとしたら、惜しいなんてもんじゃありません。本作のラストで一応は解散した詐欺師チームですが、再結成を否定する要素は何もないはず。ということで、続編熱望です。高杉・園部・菜摘子・巧という愛すべき小悪党たちの痛快な活躍を、また読みたい!
 あ、それからこの作品、映像化したら超おもしろそう。僕の頭の中では、キャストもだいたい出来てるんだけど。どこかのTV局or映画会社、やってくれません?
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貫井さんは重厚な作品に似合わず
かなり気さくな明るい人物だそうで、そのキャラクターからは今作の様な軽快で爽やかな作品の方がしっくり来ます。私は彼の重厚な作品も何冊か読んでいますが、陽作品と陰作品のふり幅の大きさに驚かされます。
コメ&TB謝々(^ ^)
>>峰川幸介三世さま。
ふり幅の大きさ、芸域の広さというのは貫井さんの大きな特徴でしょうね。
ただ、大沢在昌氏や逢坂剛氏、伊坂幸太郎氏など、こういう軽快な作品を上手に書く人は、シリアスな作品を書かせても上手いという人が多い気がします。軽い作品を書くにはそれだけ力量が要るということなんでしょうね。

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tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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