闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『ふたたび赤い悪夢』法月綸太郎

 法月綸太郎シリーズ、通算にして五作目。『頼子のために』の直接的な続編であり、『頼子』『一の悲劇』と並んで三部作を構成する作品とのこと。
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 深夜、法月家に掛かってきた一本の電話。「――あの、警視庁の法月さん?」綸太郎の耳に飛び込んできたのは、あのアイドル歌手・畠中有里奈の声だった。彼女の声音からのっぴきならない自体を察知した綸太郎は、車で彼女を迎えに行く。当初、何かを恐れるように固く口を閉ざしていた有里奈だったが、綸太郎が、来る途中にパトカーの隊列とすれ違ったという話をすると激しい動揺を見せる。さらに、ラジオ東京近くの公園で死体が見つかったことを知ると、ほとんど正気を失い、震えながらこうつぶやいたのだった。
「――私が殺したのかもしれない」
 
 本作は、『雪密室』以降続いてきた法月シリーズの、集大成といえる巨編です。雑多なモチーフを多量に詰め込んだごった煮感といい、過去と現在が絡まりあう複雑な因縁ばなし的構図といい、法月シリーズを特徴付ける様々な要素が、これでもかと詰め込まれています。

 法月シリーズを象徴するテーマといえば、何と言っても「家族」そして「父と子の関係」。本作でもそのテーマはこってりと、胃もたれするぐらいに語られます。もうその内容の濃いことといったら。ヒロインの有里奈(作中では、本名の美和子の名で呼ばれることの方が多いけど)を中心に、その産みの親と育ての親、それぞれが誤解と錯誤と入れ違いを交えて複雑怪奇に絡まりあい、過去の因縁が現在に作用して驚くべき不幸を引き起こす。こういう因縁ばなし的な事件の構図も、法月シリーズらしいところ。
 また、普通の推理小説だと、結末ギリギリまで真相は薮の中であり、様々な情報もこんがらがったまま、最後に名探偵が絡まった糸を解きほぐし、薮の中から明快な真相を見つけ出してみせる、という展開がほとんどですが、法月シリーズでは、ある程度情報が出揃った時点で、綸太郎はそれらを材料に一応は真実らしい推理を組み立てて見せます。しかしその直後に、その推理を完璧に打ち砕く新情報がもたらされ、事件は混迷の度合いを深めていく……というパターンを何度も繰り返すのです。この、事件が新たな様相を見せるたびに、謎を解く側である綸太郎の推理も転換を迫られるという、混迷と打開を繰り返す展開も、このシリーズの特徴です。

 ところで、本作が『頼子のために』の直接の続編であるといわれる背景には、なんといっても主人公である綸太郎の、精神状況が関係してきます。『頼子』の事件で負った精神的ダメージを引きずりまくっており、探偵という立場に立つことを極度に恐れている、それが本作の綸太郎です。畠中有里奈からの電話を受けてしまったため、なし崩し的に探偵業に復帰せざるをえない状況に追い込まれてしまうのですが、この作中の綸太郎の、《探偵という立場における苦悩》は、おそらく作者自身の《本格ミステリ作家としての苦悩》とほぼイコールでしょう。その辺のところは笠井潔氏による本書の解説に詳しいですが、これまた難解な論説で、僕なんかの頭では半分も理解できたかどうか怪しいのですが。
 なにはともあれ、本作は『頼子』の続編ということになっており、かつ『一の悲劇』とあわせて三部作を構成するという作者の言ですが、本作を読み終えた今、一読者の立場として思うことは、この三部作というのは気にしないほうがいい、ということです。本作はたしかに『頼子のために』とは、主人公の内面的苦悩という部分で密接に繋がっていますが、『一の悲劇』とは、表面上のつながりはほとんどありません。むしろシリーズの第一作『雪密室』との繋がりの方が強い。ヒロイン・畠中有里奈は『雪密室』の登場人物ですし、『雪密室』のキーパーソンである篠塚真棹の名もちらつきます。
 法月氏のように推理小説のあり方について深く悩んだり、笠井氏ばりにその悩みに分析や考察を加えることが出来るなら別ですが、たいていの読者は(失礼ながら)そこまでの頭は持っていないでしょう(かくいう僕も持ってないので)。そういう一般読者の立場からすると、この三部作が三部作たる所以って、いまいち理解しにくいと思います。それより単純にストーリー上のつながりから、『雪密室』『頼子のために』『ふたたび赤い悪夢』を三部作とし、『一の悲劇』は番外編というか、シリーズの外伝的存在と考えたほうが、はるかに分かりやすし、リーダビリティーが圧倒的に高いと思いますね。
 よって、これから法月シリーズを読もうとする方は、刊行順に読むのではなく、以下の順で読むことをお勧めします。
 『誰彼』→『雪密室』→『頼子のために』→『ふたたび赤い悪夢』→『一の悲劇』
 『誰彼』はシリーズの二作目ですが内容的に他との繋がりが一切ありません。だから、本当は読まなくてもいいんだけど、推理を組み立てては崩し、組み立てては崩し……という展開、いびつな家族関係というテーマ、様々な象徴的モチーフをこれでもかと詰め込むごった煮感などは、『ふたたび赤い悪夢』との共通性があります。ですから、法月シリーズの雰囲気に慣れる意味で『誰彼』を最初に読んでおいて、『雪密室』→『頼子のために』→『ふたたび赤い悪夢』と読む。『一の悲劇』は先に述べたように外伝的作品なので、後で読む。『ふたたび赤い悪夢』で描かれているもろもろを理解するうえで、これがいちばんいい読み方だと思います。

 さて、本作のラストで、一応は「探偵としていき続けること――その苦悩や痛みもひっくるめて――」を引き受ける覚悟をした綸太郎。この後に続くシリーズで、彼がどのような活躍を見せるのか、楽しみです。ああ、はやく『生首に聞いてみろ』までたどり着きたいなぁ。
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Theme:推理小説・ミステリー
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