闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『法月綸太郎の冒険』法月綸太郎

 推理作家にして名探偵の法月綸太郎が、七つの難事件、珍事件に挑む、シリーズ初の短編集。後半の四篇は、図書館とその本にまつわる珍事件を描いた「図書館シリーズ」となっています。
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 本書には七編の中・短編が収録されていますが、前半の四編に関しては、作者が大学時代にサークルの機関誌に発表したものが原型になっているそうです。作者自身の言葉を借りれば、〈ルーツ・オブ・法月綸太郎〉とも言うべき作品集。『頼子のために』で心に深い痛手を負う前の綸太郎の姿とも言えそうです。
 
 以下、収録作の感想。全部は大変なので、三つほど。

 「死刑囚パズル」…死刑囚・有明省二が殺された。それも今まさに死刑が執行されようとしている瞬間に息絶えたのだ。なぜ死ぬことが決まっている死刑囚を、刑の執行直前に殺さなければならなかったのか……。
 これはけっこう長くて、130ページ強ある中編作品。ギリシャ神話をモチーフにした奇ッ怪な因縁ばなし的展開は、いかにも法月作品です。もうすぐ死ぬことが決まっている人間に、あえて毒を盛る理由は何か。そんなものある訳ない、と思ってしまいますが、そこに理由付けをしてしまうのが本格ミステリ作家のすごいところ。有栖川有栖氏の「地下室の処刑」という短編(『白い兎が逃げる』所収)でも、テロリストによって処刑される寸前の男が、毒入りのワインを飲まされて死ぬ、という場面があります。同書のあとがきで有栖川氏が、この「死刑囚パズル」を引き合いに出して“未読の方には強くお薦めしたい”と書いていましたが、動機の納得感という部分では、「地下室の処刑」の方が上かなぁ?「死刑囚パズル」も理屈ではわかるんですが、感情の面で飲み込みづらい。それは、僕がこの犯人と同じ立場には絶対に立ち得ないからでもあるのでしょうが。ネタバレになりそうなので、これ以上は書きませんけど。

 「カニバリズム小論」…探偵小説家の法月綸太郎が、私のもとにやってきた。大学時代の友人である大久保信が、同棲していた女性を殺し、おまけにその死肉を調理して食ったというのだ!法月は、人肉嗜食に詳しい私の意見を聞きたいというが……。
 もう、タイトルからしてアレなもんでね、「カニバリズム」という単語の意味を知っているなら、その時点で顔をしかめて不思議じゃない。中身も、あまり論理的な推理小説といえるものでもなく、作中で綸太郎自身が述べているとおり、あくまで一つの解釈にすぎないといえます。
 作者曰く、“ひたすらエグい話を書こうと考えて、できたのがこれ”とのことですが、実際の内容はもっぱら、歴史上の人肉嗜食の実例と、それらに関する研究例を列挙しているだけ。たとえば綾辻行人氏の『殺人鬼』シリーズのように、目を覆いたくなるような残虐行為が具体的に描かれているわけではないので、そういう意味ではまだ淡白とも言えます。ただ、扱っている題材が題材なのと結末の救いのなさのため、あまり読んでて気分のいい作品じゃないですね。最後のどんでん返しはまあいいとして、ラスト一行のオチは別にいらないんじゃないかという気がしますが。

 「緑の扉は危険」…オカルト研究家で、その方面の奇書珍本高価本を大量に所有していた菅田という男性が、密室と化した自宅の書斎で首を吊った。生前、図書館の館長と親交があった菅田氏は、もし自分が死んだら、蔵書の全部を図書館に寄付すると約束していたが、菅田氏の未亡人が蔵書の引渡しを拒んでいるという。綸太郎は司書の沢田穂波とともに菅田邸に赴くが……。
 これは、わりと素直な密室もの。トリックはなんとなく、そんなことじゃないかなぁと、漠然と思い描いていたら、だいたい当たりました。現実にそういうことが起こりうるかといえば、いくつかの条件が上手いこと合致しないと難しいでしょうが、ありえないことではないと思います。
 この作品の冒頭に、AV女優のグラビアが男尊女卑だうんぬん、という、綸太郎と沢田穂波の会話があります。作品が書かれたのが1991年なので、たぶんAVの黎明期だと思うのですが、今読むと隔世の感がありますね。いまどき、ヌードグラビアごときで文句を言ってたら、逆にAV女優に対する職業差別だと非難されそうです。ちなみに僕はAV好きではなくAV女優好きで、好きな女優がたくさんいますが、法月さんは誰のファンなのかな?

 法月シリーズ初の短編集は、全体的には可もなく不可もなく、という感じかな?「死刑囚パズル」がミステリとしての完成度では一頭抜けている感じですが、やけに饒舌な綸太郎や、神話的な深層意識を前面に押し出してくる感じが個人的にはあんまり馴染めず。後半の「図書館シリーズ」の軽妙さは好印象でしたが、このシリーズはある事情により途絶えてしまっています(「ある事情」については、本書巻末の追記に詳しい)。個人的には、地味ではあるけど「黒衣の家」あたりがいちばんよかったような気も。
 後半の「図書館シリーズ」を通して、明らかになったことが一つ。法月綸太郎はスケベである、ということ。その辺が、彼を単なる天才名探偵ではない、親しみの持てるキャラクターにしている所以かもしれません。
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comments(0)|trackback(1)|読書|2010-03-21_03:13|page top

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法月綸太郎の冒険 法月綸太郎
なぜ犯人は、死刑執行の当日、 首を縄に差し入れた死刑囚を殺さなければならなかったのか。 なぜ犯人は図書館の蔵書の冒頭数ページを切り裂くのか、 なぜ男は恋人の肉を食べたのか…。 異様な謎につつまれ...

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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