闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『初恋よ、さよならのキスをしよう』樋口有介

 『彼女はたぶん魔法を使う』に続く、柚木草平シリーズ第二弾。元刑事で、今は刑事事件専門のフリーライターである柚木草平が、高校時代の初恋の女性が殺害された謎を追う。
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 正月、一人娘の加奈子とやってきた草津のスキー場で、俺は信じられない顔に出会う。卯月実可子。俺の高校時代の初恋の女、一度だけデートに誘って、あっけなく振られた女だ。今は結婚して永井実可子になっているという彼女と、二十年分の空白を取り戻すほどの時間もなく、そのときは少しばかりの会話と、名刺の交換をしただけで別れた。一ヵ月後、実可子の姪である早川佳衣という女性からの電話で、俺は実可子が何者かに殺害されたことを知る。現場の状況は物盗りの犯行を示しており、警察もその線で動いている。しかし早川佳衣によると、実可子は正月にスキーから帰ってすぐ、一人娘の梨早に「自分に何かあったら柚木さんに相談するように」と言い残していたらしい。それが事実だとすれば、実可子は少なくとも正月の時点で、自分が何らかのトラブルに巻き込まれる予感を抱いていたことになる。俺は事情を聴くため、実可子と特に親しかった同級生たちを順に訪ねていくが……。
 
 前作に輪をかけて洒脱なタイトル。というか、ここまで来ると洒脱を通り越してやりすぎな感じもしますが。

 前作同様、芝居がかったセリフを操る柚木草平の持ち味は全開ですが、今回は事件の被害者が草平の初恋の女性、よって容疑者たちも草平の級友たちということで、まったくの部外者として関われた前作と比べると、全体的にヘヴィで、苦い味がします。草平自身にとっても、二十年間引きずっていた初恋の思い出にけじめをつけるという決意を胸に、前作よりずっと真面目に、事件と向き合っていて、前作の堕落を極めたような生活ぶりは(一時的にせよ)なりを潜めています。また、高校時代の思い出話に関連して、草平の隠されていた過去――刑事になった事情も明かされます。これがまたヘヴィな事情で、それを草平が真面目に回想したり、内省したりするもんだから、より一層作品のトーンを重くしているのも事実です。
 個人的には、草平がヘヴィな過去に苦悩するさまはあんまり見たくないというか、そういう部分を匂わせないのが彼の魅力だと思うので、草平がヘヴィな過去に拘って、そんな自分を憎んでいるという部分を、あんまり表に出されるのはしんどい、という感覚はあります。ただ、草平個人の事情ではなく、事件とその関係者たちに、探偵という部外者の立場で接していく、そこでの苦味や侘しさみたいなものなら、これぐらいヘヴィでも嫌じゃない。高校時代の同級生といったところで、クラスの人気者グループと、途中で転校してきた異分子の変人との間には、けして越えられない隔たりがあった。そのことに気づき、最後にはっきりと一線を引くあたり、ハードボイルドっぽくて、潔いではないですか。

 前作以上にミステリー色(特にフーダニット的な)とハードボイルド色が強く出た本作ですが、やっぱり最後は、一人娘と別居中の妻に頭の上がらない、情けない中年オヤジの風情を見せて、草平も作品自体も、コミカルな表情に引き戻されて終わりました。重たいばかりがいい小説ではなく、軽妙さの中に人生の真実が覗くような、こんな小説もいいもんです。少なくとも、僕はそういうのが好きだな。
 なんか思った以上に、柚木草平にはまりそう。そんな気になるシリーズ第二作『初恋よ、さよならのキスをしよう』でした。
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初恋よ、さよならのキスをしよう
 元刑事で刑事専門のフリーライターである、柚木草平が、名探偵となって、事件を解決していくという「柚木草平」シリーズの一つ「初恋よ、さよならのキスをしよう」(樋口勇介:東京創元社)。  柚木は、娘を連れて訪れたスキー場で、20年ぶりに高校時代の同級...

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こんばんは
コメント&TBのお返しありがとうございました。
柚木草平シリーズは、私のお気に入りのひとつです。あのシニカルでコミカルなせりふ回しがなんとも言えません。でも、樋口勇介の作品の主人公、高校生でも柚木のような話し方をするのがちょっと気になるところです(笑)
コメ&TB感謝!
>>風竜胆さま。
樋口有介の作品、僕は柚木草平シリーズしか読んでいませんが、そうですか、高校生も同じ喋り方ですか(笑)
普通だと鼻につくんだろうけど、この作家の手に掛かれば、それもおしゃれな感じになるんでしょうね。

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Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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