闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『法月綸太郎の新冒険』法月綸太郎

 名探偵法月綸太郎が活躍する第二作品集。収録作すべてが120枚前後という、作者曰く「中編と呼ぶには少し足りない分量だが」、短編と呼ぶには長い作品ばかりが入っています。
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 第二作品集とはいうものの、前作との間には7年ものブランクがある。ということで、どうやら綸太郎も相応に歳をとったようです。ちょっとだけ親父さんに似てきた風もある綸太郎ですが、華麗な推理の冴えは相変わらず、親父さんをはるかに凌ぐ。
 
 「イントロダクション」…穂波とのデート(?)でゲームセンターを訪れた綸太郎。穂波に半ば強制されて、手相占いの機械で性格を占ってもらうと……。
 これは「名探偵の自筆調書」という雑誌の企画で書かれた掌編。有栖川有栖氏の『ペルシャ猫の謎』にも「猫と雨と助教授と」というのが入ってましたが、現代の本格ミステリで活躍する名探偵の人となりを、ちょっとしたエピソードとともに紹介する企画といったところでしょうか。ちなみに、作中の占いマシンが吐き出す鑑定結果の文章は、作者の法月さん自身が実際にゲームセンターで試したものだとか。「ただし原稿に使えそうな鑑定結果が出るまで、何度もトライしているので、ヤラセといえばヤラセである」ということですが、ボツになった鑑定結果がどんなものだったのか気になります。

 「背信の交点」…松本で開かれる「全国図書館司書のつどい '96」というイベントに参加した穂波と綸太郎。帰りの特急電車、千葉行き「あずさ68号」が甲府駅を過ぎたころ、綸太郎たちの前の座席に座っていた夫婦連れの様子がおかしいことに穂波が気づく。二人が様子をうかがうと、夫婦連れの夫の方が息絶えていた――。
 作者曰く「会心作」という一編。二本の電車が同じ駅で、ホームを挟んで停車する、そのわずかな時間に着目したトリックというのはまさに鉄道ミステリの王道といった感じでしょう。ただその上にもうひと捻り加えて、一筋縄ではいかない作品になっています。ラストはなんだか綸太郎までもが真犯人に丸め込まれたようにも思えて、モヤモヤした感じがしますが――どうなんでしょう?
 作中、綸太郎が古畑任三郎の物真似をするくだりなんかは、なんか映像が想像できて楽しいです。全然似てないって言われてたけど。

 「世界の神秘を解く男」…テレビのオカルト番組のロケのため、ポルターガイスト現象が起こるという家を訪れた綸太郎。現象の「震源」と目されているのは、その家に住む11歳の少女・園山エリカ。自室で眠っている彼女を、綸太郎や番組スタッフが二階のの物置部屋でモニターしていたとき、階下でガラスの砕けるような音が響いて――。
 個人的には、これがいちばん面白かった。たぶん、オカルト風ミステリっていう体裁が好きなんだと思います。作中でも、かのコナン・ドイルが心霊研究協会のメンバーだったことが触れられていますし、綾辻行人氏のホラーかぶれはつとに有名。有栖川有栖氏もホラー映画好きだというし、本格ミステリ好きでオカルトも好きって人は多いんじゃないかなと思っていたのですが、どうやら作中の綸太郎クンはオカルトがお嫌いらしい。実際の法月さんがどうなのかは判りませんが。ただ、作中の綸太郎が表明しているフロイト好き、これに関しては、間違いなく現実の法月綸太郎にも当てはまるでしょうね。もっとも本作ではその嗜好はそれほど強くは出てません。作者のフロイトかぶれがより強く出ているのは、前作『法月綸太郎の冒険』所収の「死刑囚パズル」「カニバリズム小論」や長編『ふたたび赤い悪夢』でしょうね。

 「身投げ女のブルース」…出会い頭の偶然というものがあるとすれば、その日、警視庁捜査一課の葛城警部が遭遇したケースがまさにそれだった。ある事情から上司や同僚にもその存在を伏せている情報提供者から、至急会いたいという呼び出しを受けた彼は、車で情報提供者のもとへ向かう途中、ビルから女が身投げしようとしている現場に遭遇してしまう――。
 これはしてやられたなぁ。ずっと葛城警部の視点で話が進んで、なかなか綸太郎や法月警視が出てこないから妙だなとは思っていたんですが、そういうことかぁ。冒頭にある、葛城が「一課でも指折りの敏腕刑事にあるまじき大失態を演じてしまう」という一文も、最後まで読めばなるほどなぁと納得。確かにこれは、敏腕刑事にはあるまじき失態だわ。それにしても、偶然というのは恐い。肝に銘じておこう。

 「現場から生中継」…世田谷区に住む女子大生が、自宅のワンルームマンションで殺害された。容疑者は彼女の恋人だった男。しかし彼には、犯行時刻に練馬区の石神井警察署前から行われた、TVニュースの生中継映像に映りこんでいたという鉄壁のアリバイがあった!
 あとがきで作者が「私はハイテク音痴である。(中略)だから、この小説を書くのにはずいぶんムダな苦労をした」と書いていますが、なんだかその「ムダな苦労」が行間から滲み出ているようで、読んでてけっこうだるかったです。つまり、好きじゃない。冒頭で描かれる連続児童殺傷事件が、あからさまに「酒鬼薔薇事件」をモデルにしているのにも不快感を覚えました。けっこう枚数を割いているくせに本編とはほとんど関係なく、単なるネタフリなのはいただけないですね。あの事件は非常に注目度も高く、社会的影響力が大きかった事件ですから、娯楽小説のネタとして気軽に扱ってはマズイと思います。長編小説で、メインテーマに据えてガッツリ描くならまだしも。本書収録作品ではいちばん印象がよくないですね。

 「リターン・ザ・ギフト」…27歳のホステスが部屋に侵入した男に襲われる事件が発生した。被害者は軽いかすり傷を負っただけで、犯人もすぐに逮捕される。男は新宮和也という八王子に住む会社員で、街で知り合った武藤浩二という人物にホステス殺害を持ちかけられ、代わりに武藤が新宮の妻を殺したというが――。
 交換殺人テーマのミステリ小説というのは、よく考えたらほとんど読んだことがないです。どっちかというとTVの2時間サスペンスとかでありそうなテーマで、小説で、というのはほとんど記憶にない。唯一覚えているのは、有栖川有栖の“あの作品”か(作品名を明かすとネタばらしになりかねないので、伏せます)。作者は「フーダニットとしては、論証が穴だらけだ」と述べていますが、そうかなぁ?一応、論理の破綻はないように思いますが。ただ、論証の流れが非常にめんどくさいので、改めて検証する気にはなれません。でも、複雑に絡まりあった謎をほぐしてみたら、驚くほどシンプルな事件の構図が見えてくるというのは、じつに本格ミステリ的な気がします。この作品は犯行の「意外な動機」がキーになっていますが、この作品に限らず法月作品は、動機に意外性のあるものが多いです。ちょっと常軌を逸しているようなものも。こういうのを読んでると、何が人を殺す動機になるか、解らないから恐いですね。

 以上、収録作の感想をまとめてみました。。
 「今後もこの長さでしかできない可能性をいろいろ試してみようと思っている」とは、あとがきでの作者の弁ですが、個人的に中編というのは、本格ミステリがもっとも純粋なカタチでいられる長さではないかと思っています。以前にも『スイス時計の謎』(有栖川有栖)や『本陣殺人事件』(横溝正史)を「中編ミステリの歴史的傑作」と評しましたが、この『法月綸太郎の新冒険』も、傑作とまでは呼べないにしても、本格ミステリ、本格ロジックパズラーとして非常に過不足なくまとまった作品が揃っていると思います。謎解きものなので当然、不足があるのは大問題ですが、過剰さもないので、パズラーとしての面白みがよりシンプルに出ている、そこが大きな魅力じゃないでしょうか。個人的には、前作『法月綸太郎の冒険』よりも好みかな。
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