闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『法月綸太郎の功績』法月綸太郎

 法月綸太郎シリーズの第三短編集。前作までの横溝正史風(違うか?)の装丁から打って変わって、スタイリッシュな表紙デザインになりました。
法月綸太郎の功績 (講談社文庫)法月綸太郎の功績 (講談社文庫)
法月 綸太郎

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 60ページぐらいのシンプルな短編から100ページ超の長めのものまで、バラエティ豊かな五編を収録。前作『法月綸太郎の新冒険』では五編すべてに登場した沢田穂波女史は、残念ながら出てきませんが、今回も粒ぞろいの作品集です。
 
 「イコールYの悲劇」…足立茜という24歳の編集者が、留守番に来ていた姉夫婦のマンションで殺害されているのが発見された。被害者はボールペンを握り締めており、電話の横のメモパッドには「=Y」という書き跡が……。
 ダイイング・メッセージもの。ダイイング・メッセージにも様々な形がありますが、これは被害者が残したメッセージを犯人が見つけ、改ざんしてしまったために、探偵や捜査員に正確な意味が伝わらないパターンです。一見整合性のない諸条件を論理的につないでいく綸太郎の推理の冴えは相変わらずですが、ボールペンの色に関するくだりや二件目の殺人などは、少しやりすぎな気も。

 「中国蝸牛の謎」…人気作家・鹿沼隆宏が自宅の寝室で首を吊って死んでいるのが発見された。監察医の見立てでは首吊りの状況に不審な点はなく、自殺の線が濃厚だが、それにしてはあまりにもおかしな点があった。死体発見時、鹿沼の書斎は密室状態で、しかもどういうわけか、部屋中のありとあらゆるものが、上下あべこべにひっくり返されていたのだ!
 エラリー・クイーンの『チャイナ橙の謎』へのオマージュということですが、『チャイナ橙』を読んでいないのでわかりません。短い作品で、登場人物が少ないので、フーダニットの魅力はあまりありません。この作品のキーは動機なんですが、こんな動機を思いつき、しかもそれを作品化してしまうのは、悩める推理作家ならではですね。

 「都市伝説パズル」…大学生のA子さんはB先輩のアパートで飲み会をした帰り道、バッグを忘れたことに気がつきました。ひとりで先輩のアパートに引き返すと、部屋の電気はすでに消えていて、ドアチャイムを鳴らしても返事がありません――先輩はもう寝てしまったようです。試しにドアノブを回すと、鍵がかかっていなかったため、A子さんは「忘れ物を取りに来ました」と言いながら、電気をつけずに手探りでバッグをつかみ、そのまま部屋を立ち去りました。次の日、B先輩がアパートの部屋で殺されているのが発見されました。そして、部屋の壁には血染めの文字で、こう記されていたのです。「電気をつけなくて命拾いしたな」――!
 第55回日本推理作家協会賞短編部門を受賞した作品。有名な都市伝説にそっくりな事件が起こるというものですが、シンプルなプロットで推理の道筋もわかりやすく、変な捻りもなくて気持ちのいい作品です。ただその分、パズラーとしての難易度は低くなっていて、それは作者も認めているところ。それでも、作者自身「仕上がりにはわりと満足している」と言いますし、読者の僕も、本書収録作の中でいちばん満足しています。ちなみにこの作品、かのアメリカの雑誌「ELLERY QUEEN'S MYSTERY MAGAZINE」に、英訳が掲載されたそうです。これは日本のミステリ界にとっても、誇らしいことじゃないでしょうか。

 「ABCD包囲網」…警視庁の久能警部のもとに現れては、「人を殺した」と嘘の自供をし続ける男。妄想に取り付かれた精神異常者にも見えないし、自首マニアのリストにも載っていない。いったい、男の目的はなんなのか……。
 『「ABC」殺人事件』というアンソロジーのために書かれた一作なのでこういうタイトルになったのでしょうが、「ABCD包囲網」というタイトルと内容が、あまりかみ合っていない気がします。作者自身「無理筋のそしりを免れない」と認めていますが、内容以前にタイトルが無理筋でした。ただ、謎の自首男の行動を起承転結になぞらえて描いていく展開はけっこう面白かった。あと、久能警部と仲代刑事の、回転寿司のたとえ話はちょっと笑えました。デカの会話にしちゃ気が利きすぎてる気がしますが。

 「縊心伝心」…ひとり暮らしのOLが妻子持ちの不倫相手に、これから自殺すると予告電話をかけた。男が女のマンションに駆けつけると、彼女は部屋で首を吊って死んでいた。ところが、警察が死体を調べてみると、彼女の死因は縊死ではなく、後頭部の打撲であることがわかった。犯人はなぜ、死体を首吊りに偽装したのだろう……?
 65ページぐらいのシンプルな短編。現場の小さな違和感から、犯人につながる重要なポイントを見抜いてしまう綸太郎の推理の鮮やかさが見事です。また、『安楽椅子探偵』シリーズにまつわるインタビューで綾辻行人氏が「本格ミステリの犯人は論理的な行動をするもの」と述べていましたが、本作の犯人は、論理的に行動したとは言いがたい。ですが、「論理的に行動しなかった(できなかった)理由」がちゃんとあって、しかもそれは、誰が読んでも納得できるものであるのが、この作品の優れたところです。そしてやっぱりこの作品も、動機がキーポイント。動機をきっかけに推理を組み立てていくのが、名探偵法月綸太郎の特徴です。

 以上五編。いろいろなタイプの作品がありますが、やはりこのシリーズの短編は、綸太郎クンと警視の親父殿との掛け合いが楽しいです。法月家のリビングだけで話が展開する「都市伝説パズル」や「縊心伝心」は特にその魅力が強く出ていてお気に入り。それにしても、「縊心伝心」で、綸太郎が父親の老後を妄想するシーンは笑っちゃったな。
 今のところ、法月シリーズの短編集としては本書が最新のものになります。このあと、長編で『生首に聞いてみろ』が出ていますが、それも6年も前ですね。「悩める作家」の法月さんですので、あまりせっつくのも可哀想な気がしますし、非シリーズものはちょくちょく出ているようなのですが、綸太郎のシリーズも「蝸牛的速やかに」お願いしたいところです。できれば、図書館シリーズ復活も。
 さて、次はいよいよ『生首』を読むか。傑作の誉れ高い作品なので、楽しみだ。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(2)|読書|2010-07-15_17:24|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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