闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『新装版 動く家の殺人』歌野晶午

 歌野晶午のデビュー作『長い家の殺人』から続く「家」シリーズ三部作の完結編。作者いわく、シリーズを通じて活躍してきた名探偵、信濃譲二を「退場させるために」書かれた作品です。
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 結論から言おう。信濃譲二は殺された――。
 無名の小劇団・マスターストロークで制作スタッフとして働き始めた俺、信濃譲二。今回の公演はマスターストロークにとって、特別なものだった。六年前、稽古中の不慮の事故によって亡くなった元団員・伊沢清美の追悼公演なのだ。公演場所となる劇場・シアターKIは、清美の父親で建築家である伊沢保則氏が、娘の供養のために資財を投じて建てたものだという。そして迎えた公演初日に、惨劇は起こる。団員の住吉和郎が、舞台の上で刺されたのだ!
 
 名探偵信濃譲二、最後の事件となる本作。Amazonでの評判がかなりいいので、ちょっとびっくりしています。確かに前二作『長い家の殺人』『白い家の殺人』と比べたら、小説としてのクォリティは格段に上がっているけれど、本格ミステリとして見たときにどうかなぁ?僕は微妙だと思うんですけど。

 (↓以下、若干ネタバレ気味になります。未読の方は注意。)
 確かに第三幕以降の展開にはある程度驚かされるのですが、それ以前に、第二幕で“信濃”が提示する真相というのが、そもそもうっすら胡散臭い。おまけにページ数も結構残っているから、「何かあるな」っていうのは、予想できちゃいます。で、第三幕にどんでん返しがあって、事件の《本当の真相》が明かされるのですが、その真相が、第二幕で提示される偽の真相よりもインパクトが弱い。だから、どうにも尻すぼみな印象が残ってしまうんですね。
 また、本作の大部分は“信濃”の一人称で書かれていますが、本来小説の語り部なら、たとえ一人称でも、語るべきは自分のことではなく小説の登場人物たちのことのはず。しかし本作の“信濃”は自意識が強すぎて、自分以外の登場人物については一面的にしか捕らえられておらず、したがって事件の動機となる部分が胸に迫ってこないです。これは信濃の自信家でいささか自意識過剰な性格がマイナスに働いていると思います。
 そんなわけで、本作は本格ミステリという観点で見た場合、あんまり面白いとは正直思いません。そういう観点だけなら、前作『白い家の殺人』の方が上でしょう。
 (↑以上ネタバレ感想)

 とはいえ、スピード感ある展開で読者を一気に引き込むストーリーテリング、勢いがありながらも繊細で胸を打つ文章など、歌野氏の「小説家」としての才能は、前二作と比べてもさらに長足の進歩を遂げています。まだこの時期では、「本格ミステリ作家」としての才能と「小説家」としての才能がうまくかみ合っていないのかも知れません。歌野氏は本作のほか二作の長編を発表した後、三年間の沈黙に入りますが、復活後は意欲的な作品をコンスタントに発表しています。今年は『密室殺人ゲーム2.0』で史上初となる、二度目の本格ミステリ大賞を受賞(一度目は第4回の『葉桜の季節に君を想うということ』)。本書のまえがきでも触れられていますが、自らが作り出した名探偵を自らの手で葬ることによって、歌野氏はさらに上のステージに立つことができたのでしょう。

 ところで、信濃譲二は本作でいちおう退場したことになっていますが、彼の活躍が描かれた本が実はもう一冊出ています。『放浪探偵と七つの殺人』がそれ。信濃が過去に関わった事件を集めた短編集ということです。こちらは未読ですが、いずれ読んでみたいと思います。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(0)|読書|2010-08-13_01:58|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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