闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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ノンフィクション『将棋の子』大崎善生

 将棋のプロ棋士を目指す若者たちが集う“トラの穴”、新進棋士奨励会。名人を夢見て全国からやってきた天才少年たちの厳しい競争と淘汰の末に、多くのものは敗れ、そして去っていく。人生のを賭け、青春のすべてを費やしてきた目標を失い、途方もない挫折を味わった者たちの、それぞれの“その後”とは。第23回講談社ノンフィクション賞受賞の感動ノンフィクション。
将棋の子 (講談社文庫)将棋の子 (講談社文庫)
大崎 善生 森 信雄

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 渡辺明が四段に昇段し、史上四人目の中学生プロ棋士が誕生したのと同じ日。「将棋世界」編集長だった著者の机の上に一枚のメモが乗せられていた。かつて奨励会に在籍し、年齢制限の壁に阻まれて退会していった成田英二の連絡先が変更になったことを伝える事務的なメモだった。そのメモを見て著者は、11年ぶりに成田に会ってみようと思い立つ。札幌へ向かう寝台列車の中で、著者は成田との、そして同時期に奨励会に在籍していた多くの若者たちとの思い出を回想する。
 
 僕が小学校4~5年生ぐらいのころ、将棋がちょっとしたブームでした。僕の周辺だけではなく、全国的に。きっかけはいうまでもなく、稀代の天才棋士・羽生善治。羽生さんが史上初の七冠制覇を達成した年が、ちょうど僕が4年生のとき。その前年には阪神・淡路大震災があって、神戸在住の谷川浩司王将(当時)が震災の被害に遭いながらも、羽生さんの七冠制覇を阻むというドラマもありました。そんな出来事があり、また羽生さんが公文式のTVCMに出演して有名になったりしたことが重なって、将棋というものが大いに注目を集めていた時期でした。
 僕自身はそのブームとは直接関係なく将棋に興味を持ち、祖父に教わってルールを覚えたのですが、当時公文式に通っていたこともあって、このブームには大いに当てられたクチです。ほんの一瞬ぐらいは、僕もプロ棋士になりたいなんて思ったもの。そんな僕にとって、この本の内容は大変興味を惹かれるとともに、いち将棋ファンとして、プロ将棋界の在り方について考えさせられるものでした。

 本書は同郷の成田英二と著者との思い出を中心に、秋山太郎、関口勝男、米谷和典、加藤昌彦、江越克将といった奨励会退会者たちの“その後”を描いていきます。また、同時期に奨励会に在籍し、一時は退会を覚悟する瀬戸際まで追い詰められながら、紙一重の差でプロへの昇段を果たした中座真、岡崎洋の劇的なドラマも併せて描かれます。彼らの命運を分けたものは、時には才能であり、努力であったこともあるでしょう。しかしあるときには、ただの運だったときもあります。偶然の運によって、決定的に人生が違ってしまった元奨励会員たち。その残酷な運命を間近で見続けてきた著者の文章は、いささか気持ちが入りすぎのようにも見えますが、それゆえに読者の心にも熱い感動を呼び起こします。

 本書のプロローグとエピローグにそれぞれ一回ずつ、瀬川晶司さんの名前が出てきます。本書が書かれた当時はまだアマチュアだった瀬川さんは、その後“特例”によるプロ編入試験に合格し、プロ転向を果たしています。一度は年齢制限で奨励会を追われた瀬川晶司“元三段”のプロ転向後の勝率は、5割7分5厘2毛(2010年8月15日現在)。奨励会では敗者であった瀬川さんが、プロでは大幅に勝ち越しているという事実からも、奨励会三段リーグの厳しさと、その結果訪れる運命の理不尽さを象徴しています。もちろん著者も書いているとおり、厳しく理不尽なのは将棋の世界だけではないでしょう。誰のどのような人生にも厳しい競争はあり、ときに理不尽に思えるような運命のふるいにかけられることがあります。ただ将棋界の場合、勝者と敗者の差があまりにはっきりしているために、その理不尽さが際立つのでしょう。
 一方で本書を読み終えて思うことは、夢を追いかけるということはどういうことなのだろうということです。それは素晴らしいことだ、美しいことだと多くの人は言います。しかし本書を読むと、それはむしろ正視に堪えないほど厳しく、残酷なことのように思えます。夢を追いかけているうちから、夢が叶わなかったときのことを考えておくというのは邪道な気がしますが、夢のためにあらゆるものを犠牲にしていくという生き方が、本当に正しいのかどうか。そう思わずにはいられません。
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comments(0)|trackback(0)|読書|2010-08-16_17:25|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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