闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『平面いぬ。』乙一

 以前読んだ『天帝妖孤』が予想以上に良くて、やっぱりこの人は天才だと感嘆したのですが、読んでみないと分からないタイプの作家でもあるんで、なかなか次に手が伸びなかったりする。そんな乙一さんの作品を久しぶりに読みました。
平面いぬ。 (集英社文庫)平面いぬ。 (集英社文庫)
乙一

集英社 2003-06-20
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 かつて『夏と花火と私の死体』を読んで『世にも奇妙な物語』みたいだと評した僕の友人がいたのですが、本書もまさにそんな感じ。単なるホラーやサスペンスにとどまらず、不思議だったり不気味だったり、切なかったり微笑ましかったり、色んな味わいが絶妙に交じり合ったような、奇妙な味わいの物語が四作。

 乙一オフィシャルウェブサイト『Web Otsuichi』
 「石ノ目」…わたしの育った地方には、見る者を石にしてしまう石ノ目という女の伝承がある。ある目的のため、夏休みに同僚とともに山に登ったわたしは、一軒の古い家にたどりつく。その家の広大な庭には、人間の形をした石が無数に並んでいた。しかも、その家の住人である女は、けっして顔を見せようとしない。彼女は言い伝えられる石ノ目ではないのか。だとすれば、わたしたちは彼女に石にされてしまうのか……。
 和風メドゥーサみたいな石ノ目の設定。石ノ目の存在をあっさり信じるわたしに対し、同僚のN先生はまったく信じず、石ノ目に対して挑戦的な態度を取るため、わたしはずっとハラハラさせられている。読んでいるこっちもはらはらする。でも、石ノ目(と思われる女)自身は、べつに怖いことは何もしない。最後はしんみりと、感動的といえる結末に持っていくあたり、『世にも奇妙な物語』的です。でも、最後の一文はちょっとブキミ。

 「はじめ」…はじめは、私と木園淳男の二人だけに見える幻覚だ。小学四年生のとき、木園がついた嘘がきっかけで生まれたはじめ。誰もがそのうわさを知っているが、誰一人として実際に見たことがない女の子。だけどあるときから、私らにだけ見えるようになったんだ。そんなはじめが、バスの事故で死んだ。それから一年後。私たちは、はじめが死んだ事故現場に、花束を手向けに行くことにした。そこで私らが見たものは……。
 なんだろうなぁ、この不思議な感じ。うわさが実態を持つ話ってのは、『ショートショートの広場』シリーズでもあったけれど、あれはホラーっぽい仕上がりだった。普通の人なら、ホラーにしちゃうでしょう。でも乙一さんはそうしない。それどころか、とってもハートウォーミングなファンタジーにしてしまう。これには参った。じつに批評しにくい作品なんですが、「さすが乙一!」と唸らされてしまう快作だと思います。

 「BLUE」…ぬいぐるみ作家のケリーは、雨宿りのために入った骨董屋で、不思議な生地を買う。ケリーはその生地を使って『王子』『王女』『騎士』『白馬』の四体のぬいぐるみを作った。するとなんと、ぬいぐるみたちは自らの意思で動き出したのだ。余った生地をつぎはぎして、ケリーは五体目のぬいぐるみを作る。出来上がったのは、肌色は青く、手足の長さもばらばらな、ひどい外見のものだった。ケリーはそのぬいぐるみを『ブルー』と名づけた……。
 ダーク・ファンタジー。中盤あたりまでは『ZOO 1』に収録されている「カザリとヨーコ」に似ているような気もしますが、終盤は違った話になっていきました。これは差別の話、というのは誰にでも分かることでしょうが、ある意味では愛の話でもあるかもしれません。とにかく独特で、最後まで先が読めませんでした。

 「平面いぬ。」…私は腕に犬を飼っている。名前はポッキー。犬といっても本物ではない。腕に彫られた小さな刺青だ。同級生の山田さんのお父さんが彫師で、そのお父さんのもとで修行をしている中国人のお姉さんが彫ってくれたものだ。ところがある朝、この犬が皮膚の上で動き出して……!
 これまた独特な作品。刺青の犬の絵が命を持つ、という突拍子もない話なのだけれど、同時に思春期の女の子が家族との向き合い方に悩んだり、愛するものへの責任に目覚めたりといったとても普遍的なテーマが描かれています。しかもそれらが、互いに浮くことなく、なんとも自然に溶け合っているんだからすごいです。SF的といえばそうなんですが、人物描写や会話の描き方、ちょっとしたギャグなんかに妙に生々しさがあって、リアルです。ジャンル分け不可能という、まさに乙一らしい作品でしょうね。

 四作とも『世にも奇妙な物語』で映像化されててもおかしくなさそうな雰囲気。でも乙一作品って、あれだけ映画になってるわりに、TVドラマ化ってされてないですよね。なんでだろうなぁ?
 本書はじつに乙一的な作品がそろった作品集でしたが、じゃあ「乙一的なもの」ってなんだ?と問われるとひじょうに難しいです。乙一作品を言葉で説明するのは、ほとんど至難の業。だから、読むしかないんですね。読み易いのは、乙一さんの長所ですから。余計な言葉を弄するよりも、「読んでみて。」このひとことが、いちばんいいような気がします。
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comments(0)|trackback(0)|読書|2010-08-25_02:15|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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