闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『七つの棺―密室殺人が多すぎる』折原一

 1988年に発売された折原一氏のデビュー短編集『五つの棺』に、デビュー後に発表した二つの短編を加えて改題したもの。関東平野のど真ん中にある新興住宅地、白岡で、次々と起こる密室事件に、推理小説マニアで「迷宮警部」という不名誉なあだ名を持つ黒星警部が捜査に当たるが……。
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 じつは折原氏の作品を読むのは初めて。デビュー時期からみれば新本格の第一世代で、僕の嗜好からすれば興味を持って当然の作家さんなんですが、何故か今まで読んでなかった。なんか、暗そうなイメージがあったからかもしれません。だけどこの『七つの棺』は、パロディ調のコミカルな作品で、読みやすかったです。

 折原一公式サイト「沈黙の部屋」
 
 本書の舞台となる、関東平野のど真ん中にある町、白岡町。小説上の架空の町かと思っていたのですが、実在するんですね。なんと、作者の出身地が白岡町。もちろん、町の中の描写はフィクションでしょうし、現実の白岡町も、作品が書かれた二十数年前と今とでは、だいぶ変わっているでしょうが。

 「密室の王者」…白岡町の町民相撲大会で、ここ数年ずっと優勝を争っている時任山と鶴乃海。過去の対戦成績では鶴乃海に分があったが、今年の決勝戦では時任山が勝った。その日の深夜、鍵のかかった体育館の中で、時任山が死んでいるのが発見されて……。
 これ、けっこう好きですね。事件の真相自体は「なぁんだ」というようなものかもしれませんが、ミステリとしてきちんとフェアに書かれていますし、黒星警部もちゃんと真相を言い当てている。他の収録作はパロディ的なものが多いので、本書の中ではこの作品がいちばんまっとうなミステリじゃないでしょうか。

 「天外消失事件」…オープンしたばかりの白岡山のロープウェイのリフト内で女性が殺された。取材でロープウェイに乗っていた旅行雑誌編集者の沢田は、すれ違うリフトの中で、男が女にナイフを振りかざすのを目撃する。しかし死体が発見されたとき、被害者が乗っていたリフトに同乗者はいなかった。犯人はどこへ消えたのか……。
 著者のデビュー作。あとがきによると、大学時代の先輩二人との共同執筆をするはずだったのに、二人の先輩が脱落して、仕方なく一人で仕上げたものだとか。「三人が頭をひねってこねくりまわした痕跡が随所に残っていて、文章がひどい、会話もひどい、プロットもちぐはぐである」と書いていますが、そこまで酷評するほどでも。「こねくりまわした痕跡」はこねくりまわした本人だから気づくんであって、普通の読者にはそんなの分からないと思います。犯人消失のトリックについては、なんていうか、推理小説っぽくないトリック、という感じですね。むしろ現実の世界で、偶然にもこういう状況が起きてしまう、なんてことも有りうるんじゃないかと。もちろん、それはすごい確率の低い偶然だけど、そんな気にさせられる話です。

 最初と最後の作品の感想を書いてみました。他にも有名な古典を思い切りパロディ化した「ディクスン・カーを読んだ男たち」や「脇本陣殺人事件」等もあるのですが、長くなりすぎるのもアレなんで。そのへんは、ぜひご一読ください。

 僕は折原氏の作品に対して、なんとなく暗そうなイメージを抱いていたと先にも書きましたが、あとがきによると、折原氏は読み手としてはサスペンス、特に異常心理ものが好きということ。書き手としてもそういうタイプの作品を書いている(と思う)ので、あながちかけ離れたイメージでもないはずですが、どうも本書のような軽妙なパロディ、パスティーシュも、じつは“裏芸”として得意としているようです。
 ところで、本書の解説によると折原氏は、密室の時代は終わった、これからの密室はパロディでしかありえないという考えを持っているようです。デビュー作となる本書にもそういうスタンスが反映されているでしょうが、このスタンスに読者が共感できるかどうかで、本書の評価はけっこう変わるかもしれません。たとえば有栖川有栖氏は『46番目の密室』のあとがきで「輝くような密室トリックは『不在』ならぬ『未在』だ」と書いています。アリスさんらしいロマンチシズムに溢れた言葉で、僕は好き。そんな僕からすると、「これからの密室はパロディでしかありえない」という夢のない主張には、ちょっと共感できない部分があります。ですから本書はユーモアミステリとしてそこそこ面白いけれど、底流にある作者のスタンスがちょっと気に入らない、というのが僕の正直な感想。折原氏のファンの方、ごめんなさい。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(2)|trackback(1)|読書|2010-09-10_03:29|page top

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『七つの棺 ―密室殺人が多すぎる』 折原一
「折原一」のデビュー作品集『五つの棺』に、デビュー後に発表した二つの短篇を加えて改題した『七つの棺 ―密室殺人が多すぎる(The Many Locked Room Murders)』を読みました。 [七つの棺

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内容はほぼ覚えてない
氏の作品は仰るとおり、“暗い”作品が多いです。登場人物の誰も彼もが怪しく見えるのが彼の作品の特徴ですので、わざとそういう風に書いているのでしょうが。黒星警部シリーズはそんな彼の作風には似ても似つかぬ軽快な作品ですので結構好き。このシリーズは今後も読んでいこうかなと思ってますよ。
確かに、あんまり強く印象に残るものじゃない。
>>峰川幸介三世さま。
毎度コメントThank you.
やっぱり折原氏は暗い作品が多いんですか。しかし黒星警部はシリーズ化されて、けっこう書き継がれているらしいじゃないですか。記事中にも書きましたが、折原氏の“裏芸”なんでしょうね。プロとして長くやっていく上での、懐の深さというか、引き出しの多さというか。
今度は氏本来の(?)、暗い作品も読んでみたいですけどね。

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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