闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『ショートショートの花束2』阿刀田高・編

 「小説現代ショートショート・コンテスト」の入選作を集めたおなじみのシリーズ。前巻から名前が変わって、『ショートショートの広場』から『ショートショートの花束』になりました。
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 前号のレビューにも書いたけれど、僕はこのシリーズを全部読んでいます。最初に読んだのは中学生のとき。授業中も読むぐらい夢中になりました。一巻あたり少なくても40数編、多いものだと80編ぐらい入っているので、平均60編だとして、22巻で1320編。我ながらよく読んだなぁ。これを読んでいると、小説のネタっていくらでもあるんだと感心します。
 
 「十進法」…言葉遊び的な作品。着眼点は面白いと思いますが、オチは説得力が弱いなぁ。たった二回の前例だけで、生命の危機を凌げると確信するのも解せないし、最後の「万に一つ」という言葉にも根拠が感じられない。

 「灰皿という熱いきっかけ」…見ていると煙草を吸いたくなる灰皿、というSF的なアイテムが登場する作品。ショートショートだからこそ成立するアイディアだと思います。特別びっくりするようなことは何も起こらないのですが、書き方が上手くて、喫煙者に厳しい今の時勢だからこそ、味のある作品に仕上がっていると思います。

 「資格社会」…ありとあらゆる事柄に関して、資格を持っている人が優先される資格社会が描かれる。以前、似たような作品がありました。『世にも奇妙な物語 SMAPの特別編』で中居正広主演で映像化された「オトナ受験」(原作タイトルは「大人免許」だったように思う)をさらに極端にした感じ。

 「心療内科」…母親に連れられてカウンセリングに訪れた高校生。英語が得意だというその少年は、なんと普段から英語の翻訳文のような言葉を話すように……というお話。翻訳風の日本語が傑作。それだけといえばそれだけですが、絶妙に不自然な翻訳風日本語は、それだけでも読む価値アリ。

 「文明の行方」…今、文明はものすごい勢いで進歩していますね。大昔と今とでは、時間の長さがぜんぜん違うんです……という話なんですが、まさか進歩の速度がそんなに速いとは。そのとてつもない速度に説得力を持たせる、ディテールの筆致がすごい。

 「注意書き」…喫煙・飲酒・自動車の運転……病気や怪我のリスクがある行為を描くときは、ことごとく注意書きを入れなければ裁判で敗れる、そんな社会で苦闘する小説家。似たようなアイディアは過去にも読んだことがある気がしますが、文章や構成も上手いし、風刺も効いてるし、ラストのオチも決まってる。本書収録作の中で、ダントツの傑作でしょう。

 「送り娘」…送り狼ならぬ、送り娘。PUFFYの歌「サーキットの娘」よろしく、娘と狼という漢字が似ているのに着目して、かつ非婚とかシングルマザーとか、現代的な問題を絡めて作品化したアイディアは秀逸。それだけに、最後までその方向で話を進めてほしかったな。このオチじゃ、せっかくの「送り娘」が生きていない。

 「花園の管理人」…市井の人々の、その人生の物語を聞き取り、文章にまとめる自分史専門のゴーストライター。そんな彼のもとに、死刑判決を受けた連続殺人犯からの依頼が……。これはゾッとした作品。結末はやや唐突な気がしましたが、読み返すと伏線めいた文章がちゃんとある。脱帽。

 8作ほど。正直、このシリーズは『広場』の5巻ぐらいから15巻ぐらいまでがいちばんおもしろかったような気がします。昔と比べると、最近のはクォリティが低い。本書も「やられた!」って手を叩きたくなるような作品はほとんどないし、味がじわりと染み出してくるような含みのある作品も少ないし。お金出して読むのに値するものかどうか、微妙なところになりつつある気がしますが、それでも時々、すごい傑作にめぐり合うことがあるし、ショートショートというジャンルの保全のためにも、このシリーズには頑張ってもらいたいところです。かつてはこの「小説現代ショートショート・コンテスト」からプロ作家になった人も何人もいたわけだし、またそういう人が出てきてくれればいいのに、と思う今日この頃です。
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comments(2)|trackback(1)|読書|2010-09-28_23:45|page top

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阿刀田高編 『ショートショートの花束2』 感想
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どの時期が面白かったか
なんてよく覚えてるね。上げられている作品の中で私が覚えているのは『灰皿~』『資格社会』『注意書き』くらいですかね。このシリーズは大長編に疲れた時の息抜きに読むのが一番。
あくまでも印象ですが。
>>峰川幸介三世さま。
5巻と8~14巻、16~18巻、20巻は今も持ってますからね。いちいち全部読み返したわけじゃないですが、そのぐらいの時期がいちばん良かったかなぁと。
確かに、疲れたときの息抜きにこれほどいい本はそうない。そういう意味でも、ショートショートを書く作家が増えてくれればいいのになぁ。

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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