闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『パズル崩壊』法月綸太郎

 全八編収録の短編集。最後のボーナストラック的な一編を除いて、名探偵法月綸太郎が登場しないうえ、本格ミステリー=「謎と解決の物語」の形式に亀裂を走らせることを意識したという異色の短編集。
パズル崩壊 (講談社ノベルス)パズル崩壊 (講談社ノベルス)
法月 綸太郎

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 副題が「WHODUNIT SURVIVAL 1992-95」。だけど、本書の収録作が必ずしもフーダニット――犯人当て――に限られているかと言えばそうでもなく、むしろそれ以外の要素が強い作品の方が多いと思います。なので、「フーダニット・サバイバル」という言葉――これは法月さんの造語だそうですが――の意味するところは、いまいちピンと来ない。フーダニット=犯人当て、というよりは、ある程度幅広く本格推理、本格探偵小説全般を指しているのかな。
 
 「重ねてふたつ」…ホテルの部屋で発見された奇妙な死体。切断された女性の上半身と男性の下半身が腰の部分でつなぎ合わされているのである。密室状態にあった部屋から、死体の他の部分はどこへ消えたのか?
 作者にとって、自身と同名の名探偵が登場しない初めての短編作品。初めてどころか、書かれた当初は後にも先にもこれ一回きりのつもりだったといいます。そんなに綸太郎クンに拘ってたの?綸太郎に代わって探偵役を務めるのは、警視庁の葛城警部。非常に短い作品で登場人物も少ないので、フーダニットというよりはハウダニットに重きが置かれています。トリックは意味は解るんだけど、それを実行すると考えるのはあまりにも気持ち悪い。作中の葛城警部の台詞じゃないですが、「ひとりよがりの演出に凝りすぎて、ギミックのためのギミックに堕してしま」うのは、法月さん自身の悪い癖でもあるんじゃないかな?ま、その辺も含めて「悩める作家」の内省と自己批判が、本書の一貫したテーマかもしれません。

 「トランスミッション」…ミステリー作家の僕の自宅に「ヤスナガ・トモユキ」という名前の子供を誘拐したという脅迫電話が掛かってくる。しかし僕の苗字はヤスナガではないし、息子は五年前に亡くなっている。誘拐犯は電話をかける先を間違えたのだ!
 途中までは面白かったのだけれど、結局色んな謎を謎のまま放り出してしまったのは、ミステリとしてどうかと思う。軽妙な文章や、いい意味で特徴のない、平凡な主人公のキャラクターなどは好感が持てるだけに、ちゃんと解決してほしかったな。

 「シャドウ・プレイ」…ミステリー作家をしている友人の羽島彰は、たびたび深夜のとんでもない時刻に電話をかけてくる。その日も午前三時半を回った頃に電話をかけてきて、芥川龍之介がドッペルゲンガーを見たという話はどこに書いてあるのか、などと聞いてくる。どうやら新作小説のアイディアに関係あるようだが……?
 作中で明示されてはいませんが、「トランスミッション」の主人公と「シャドウ・プレイ」に出てくる小説家・羽島彰は同一人物でしょう。デザイナーをしている友人というのも両作品に出てくるし。内容は電話での会話がメインですが、語り手の僕の天然ボケに対してツッコミ役の羽島、そしてたまに絶妙なタイミングで割り込んでくる猫のテリーという三者のやり取りが、ほのぼのとして楽しいです。ミステリとしてもちゃんと謎解きをやっているので、「トランスミッション」より出来はいい。ただ最後の部分で、作中の現実と非現実がレベルの混同を起こしているため、動機がなんだか訳の解らないことになってしまった気がします。もうちょっとなんとかならなかったんだろうか。

 「ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」…タイトルはSF作家フィリップ・K・ディックの代表作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(映画『ブレードランナー』の原作。SFに疎い僕でも題名ぐらいは知ってます)のもじり。主人公はロス・マクドナルドが生み出したハードボイルド探偵、リュウ・アーチャー。内容は作者曰く“リュウ・アーチャー対フィリップ・K・ディック”なんだそう。僕はどちらも読んだことないんですけどね。作者自身は「ふざけて書いたつもりはない」と言っていますが、普通に読めばふざけてますね。それにいくらパロディといっても、他人が作ったキャラを、それも探偵小説界の大ヒーローをこういう扱いにしていいのかなぁ?文章の雰囲気はすごくいいのに、最後の一行で台無しになる、そんな作品。

 「……GALLONS OF RUBBING ALCOHOL FLOW THROUGH THE STRIP」…年上の編集者から、自身の作品への苦言をたっぷりと聞かされ、凹んでいた綸太郎が、場末の酒場で一人の青年と出会う……。
 法月綸太郎シリーズの掌編。といっても、これはもともと短編小説として書かれたものではなく、なんと未完の長編小説の書き出し部分なんだそうです。その未完の長編が完成する気配は、どうやらまったくないようですが。内容も作者の悩みがストレートに吐き出されたもので、小説というより、妄想エッセイと言った方が通りそう。しかし法月さん、本当に悩んでたんですね。

 そのほか、葛城警部ものの「懐中電灯」「黒のマリア」と、前衛絵画に関する論文みたいな「カット・アウト」をあわせた全八編。葛城警部ものはどれもまっとうなミステリですが、それ以外は色んな意味で異色作。好き嫌いが分かれそうな作品も多いですね。ちなみに、葛城警部は後に「身投げ女のブルース」(『法月綸太郎の新冒険』所収)という作品において「一課でも指折りの敏腕刑事にあるまじき大失態を演じてしまう」ことになります。そんな不運な葛城警部の末路も意識して読むと、本書での切れ者で格好いい葛城警部の姿もまた違って見えてきたりします。

 悩める作家と言われる法月さんですが、本書と長編『ふたたび赤い悪夢』で大方の悩みは吐き出しつくしたのか、以降の作品では比較的シンプルなパズラーに回帰していると言われます。その成果が「都市伝説パズル」(『法月綸太郎の功績』所収)であったり『生首に聞いてみろ』であったりするのでしょうね。ジュヴナイルの『怪盗グリフィン、絶体絶命』という作品の評判が非常にいいらしいので、気になっているんですが。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(1)|読書|2010-10-14_23:45|page top

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法月綸太郎 『パズル崩壊』 感想
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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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