闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『過ぎ行く風はみどり色』倉知淳

 倉知淳氏の看板キャラクター、猫丸先輩が活躍する本格推理長編。“猫丸”ってニックネームだと思ってたんだけど、本名なんですね。
過ぎ行く風はみどり色 (創元推理文庫)過ぎ行く風はみどり色 (創元推理文庫)
倉知 淳

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 生前に苦労をかけた亡き妻に謝罪を――そう願う富豪の老人・方城兵馬のため、長男の直嗣が連れてきた霊媒師。しかし兵馬の長女・多喜枝は父の霊能者狂いが気に入らず、大学の超心理学の研究者に頼んで霊媒のインチキを暴こうとする。そんな家族のゴタゴタを収めるため、十年ぶりに生家の敷居をまたいだ兵馬の孫・方城成一だったが、彼が帰ってきたとたん、祖父の兵馬が密室状態と化した離れで殺害される。霊媒はここぞとばかり、家に悪霊が憑いていると主張し、その調伏のために降霊会を開くことに。しかしその降霊会の最中に第二の惨劇が勃発し……。
 
 短編集『日曜の夜は出たくない』でデビューした猫丸先輩が、今度は長編で快刀乱麻を断つ名推理を披露する快作。人を食ったような猫丸先輩のキャラクターもさることながら、相変わらず人物描写が上手い上手い。『日曜の夜は出たくない』の感想にも書きましたが、登場人物すべて、その人物の老若男女や属性、社会的立場や置かれている環境・境遇などがどんなものであろうと、倉知氏の筆は人物を活き活きと、てらいなく描き出します。本格ミステリは人物を描きづらいジャンルだと言われますが、登場人物の横顔を描くことにかけて、倉知氏ほど上手い小説家を僕は知らない、と言ったら褒めすぎかな?
 文庫本で580ページと、やや長めの作品ですが、読みやすい文章とその活き活きとした人物描写のおかげで、長さが苦になることはまったくありませんでした。強いて言えば、第一の事件と第二の事件の間が少し長いかな、という程度。

 ミステリとしてみると、明るい作品のムードから予想外なほど死人が出ますが、事件がたくさん起きるというのは推理小説にとっては、展開に弾みがつくのでプラスになることの方が多いでしょう。それぞれの事件において提示される奇妙な不可能状況も魅力的だし、オカルト的なモチーフの扱い方も一貫していて好感が持てます。それらの謎を終盤で猫丸先輩が解き明かしていく手際も鮮やか。
 苦言を呈するとすれば、降霊会のトリックにはもう少し詰めがあってもよさそうだということと、事件解決の鍵を握るある錯誤――これに関する伏線、手がかりの与え方は、少しアンフェアなんじゃないかなぁということ。それでも、限りなくフェアであろうとする努力のあとは充分に見えるので、そんなに声高に糾弾するほどでもないです。

 事件の顛末そのものは、いささかショッキングな結末を迎えるのですが、その後の方城家の人たちの身の振り方、猫丸先輩と成一の会話など、後日談の部分がとても爽やかで、まさにみどり色の風が吹き抜けたかのような、優しい読後感を残します。推理小説としても上々の出来ですが、それ以前に一個の物語としてとっても素敵。
 登場人物がみないい人ばかり――というよりは、人物の悪い側面をあえて描かない、それが倉知流なのかな、という気がします。それでいて一面的な語りに陥ることなく、人間の持つ様々な表情を多面的に捕らえて、さりげない描写で的確に表現してみせる。そんな倉知氏の卓越した表現力が駆使された本作は、ミステリファンにもそうでない人にも、幅広くお勧めしたい一作ですね。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(2)|読書|2010-10-22_01:04|page top

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倉知淳 『過ぎ行く風はみどり色』 感想
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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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