闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

月別アーカイブ

検索フォーム

広告!

ブロとも申請フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
HP Directplus オンラインストア
comments(-)|trackback(-)|スポンサー広告|--------_--:--|page top

小説『塗仏の宴 宴の支度・宴の始末』京極夏彦

 いったいどこまで分厚くなれば気が済むんだ、京極堂。ついに上下巻になりましたが、それでも片方で1000ページ、両方で2000ページ。厚くて重い、それでいて圧倒的なリーダビリティーの高さはさらに磨きが掛かる。そんなシリーズ第六弾。
文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)文庫版 塗仏の宴 宴の支度 (講談社文庫)
京極 夏彦

講談社 2003-09-12
売り上げランキング : 25556

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)文庫版 塗仏の宴 宴の始末 (講談社文庫)
京極 夏彦 小松 和彦

講談社 2003-10-15
売り上げランキング : 10883

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 作家の関口は、知り合いの編集者からの依頼で、静岡の韮山を訪れる。戦前その付近の駐在所に勤めていた元警官が久々にかつての赴任地を訪ねたところ、村が無くなっていたというのだ。一方その付近でかつて、ある村の村民50数人が皆殺しにされる事件があったという。二つの出来事につながりはあるのか。ふもとの駐在所で取材をしていた関口は、そこで郷土史家を名乗る不思議な風体の男に出会う――。
 シリーズ最大の事件・最強の敵に京極堂こと中禅寺秋彦が挑むシリーズ第六弾。過去のシリーズ登場人物も総出演。
 「――世の中には不思議でないものなどないんですよ」

 大沢オフィス公式サイト『大極宮』
 
 前作『絡新婦の理』がどえらい作品だったので、あれ以上のものがあるのかと思ったのですが、さすがは京極夏彦。しっかりハードルを超えてきます。前作以上にどえらい作品。

 Amazonで京極堂シリーズのカスタマーレビューを読んでいたら、「このシリーズは推理小説の体裁をとった京極夏彦の論文である」と書いている人がいました。どの作品に対するレビューだったか忘れてしまって、あらためて探してみても見つけられないんだけども。でも、まさにこのレビューは正鵠を得ていると思います。どこまでも論理的であることに徹しており、ある面では論理が一人歩きしているともいえる。解き明かされる事件の真相というのも、論理的にはどれだけ筋が通っていようとも、現実的にはそんなこと絶対にありえないだろ、と突っ込みをいれずにはおれないようなものがほとんど。少なくとも、推理小説として納得感のある解答を導いてくれるようなものではありません。
 ですが、作品の構成や文章の構造、そういった技術的・小説技法的な部分では、とことん“推理小説”として必要な手順を踏んでいる。推理小説を書く上でのありとあらゆるテクニックを完璧に使いこなしながら、“推理小説ならざる何か”を作り上げているところが、この作者のすごいところ。そしてその“何か”が何なのか、上手い言葉を見つけることが僕には出来なかったんだけど、上記の“論文”という言葉を見つけて、スッと納得しました。“論文”、あるいは“啓蒙書”と書いてる人もいましたけど、たしかにそういう類のものですよね、このシリーズは。
 しかも作品を重ねるごとにテーマが深化されていくので、過去の作品で言及してあることについては、後の作品ではあっさりスルーしたりすることがある。細かいことは忘れましたが、シリーズ四作目『鉄鼠の檻』の中で、一作目の『姑穫鳥の夏』に出てきたのと似たような不可思議状況が出てきたのですが、『姑穫鳥』のときとはぜんぜん違うアプローチで推理するんですね。読者としては「これこれの可能性は考慮しなくていいの?」と思うのですが、たぶん作者からしたら「あ、それは前やったからいいんです」って感じなんでしょう。

 前置きが長くなってしまいました。本作『塗仏の宴』の感想を書きましょう。
 本作はとにかくスケールが大きいので、作中で扱われているテーマも多岐にわたります。自我とは、家族とは、日常と非日常、経験的知識と非経験的知識、気持ちと言葉、宗教、自己啓発、催眠術――。このシリーズが好きな人にとっては、たまらないテーマのオンパレードといった感じではないでしょうか。そういうテーマ一つ一つにたいして、いちいち胸を突くような深い問いや恐い言葉を投げかけてきます。そういう問いに対して明確な答えがあるわけでもなく、また物語自体もけっしてハッピーエンドとはいえない結末になるのですが、それでもどういうわけか爽やかで、前向きな終わり方をする。これはこのシリーズすべてにいえることですが、身も蓋もない事実や辛く悲しい歴史をしっかりと受け止めた上で、なお前を向いて生きるべきなんだという強い生命力みたいなものを、常に感じさせてくれます。
 凄腕の催眠術師、百発百中の預言者、自己啓発セミナーの主催者、中国武術の達人でもある漢方医、巨大宗教団体の指導者に謎の霊感少年など、いかにも怪しげな登場人物が大量に出てきますが、なかでも京極堂最大の敵となるある男の存在感は絶大。「世の中には不思議でないものなどないんですよ」という、このシリーズを根本から否定するような台詞も説得力抜群で、読者の価値観はグラグラと揺らいでしまうでしょう。
 作品全体としては、大風呂敷を広げすぎて畳みきれなくなったという部分もなきにしもあらずな感じなのですが、そうだとしてもさほど不満は感じません。どうやって畳めばいいのか見当もつかないほどの大きな風呂敷を、目にも止まらぬ早業で見る見る畳んでいく、その手際の鮮やかさ、華麗さをこそ堪能すべきであって、畳み終わった風呂敷を見て「ここちゃんと畳めてない。あそこが曲がってる」などとケチをつけるのは、読者の態度としては邪道という気がします。畳んだともいえないぐらいぐちゃぐちゃなら文句も言うでしょうが、一応ちゃんと畳めてますから。

 さて、シリーズ最長の作品を読み終わって、ちょっと一安心。この後の作品は、これほどまで長くはないみたいですからね。とはいえ、本書も長いことは長いですが、読んでいて苦痛を感じることはほとんどありません。特にいくつかの短編をつなぎ合わせた構成になっている『宴の支度』の方は、あっという間に読み終えてしまいました。下巻に当たる『宴の始末』の方も、前半はやや冗長なところもありますが、各関係者が京極堂に集まってくる辺りからは「いよいよ始まるぞ」というワクワク感が高まって、自然とページをめくる手が止まらなくなります。世の中にこれほどリーダビリティーの高い“論文”は、他にないだろうな。
 最後に一つだけ、注意事項。本シリーズは、一作目から順番に読んでください。間違っても『塗仏』から読んだりしてはダメ。まったくワケが解らなくなりますから。
姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション [DVD]姑獲鳥の夏 プレミアム・エディション [DVD]
京極夏彦

ジェネオン エンタテインメント 2005-11-25
売り上げランキング : 17989

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

魍魎の匣 第一巻 [DVD]魍魎の匣 第一巻 [DVD]

VAP,INC(VAP)(D) 2008-12-21
売り上げランキング : 39630

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

文庫版  豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)
京極 夏彦

角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-10-23
売り上げランキング : 8612

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

スポンサーサイト

Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

HP Directplus オンラインストア
comments(0)|trackback(0)|読書|2010-12-10_23:30|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

参加ランキング

クリック感謝!

NetShop

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。