闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『光と影の誘惑』貫井徳郎

 貫井徳郎氏の中編集。『悪党たちは千里を走る』の文庫版解説で本書収録の「二十四羽の目撃者」が紹介されていて、面白そうだったので読んでみることにしました。
光と影の誘惑光と影の誘惑
貫井 徳郎

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 比較的初期の作品を集めたものですが、スリリングなサスペンス的展開と本格パズラーとしてのトリック、そして現代性のあるテーマの融合した作品群は、貫井氏らしさ満点。シリアスもコミカルもあり、誘拐ものに密室殺人に叙述トリックまでと、氏の幅広い作風を堪能できる作品集です。

 貫井徳郎オフィシャルサイト「He Wailed」
 
 「長く孤独な誘拐」…不動産会社に勤める森脇耕一の息子が誘拐された。森脇宅へ脅迫電話を掛けてきた犯人は、驚くべき要求を口にする。「オ前ハコレカラ言ウ夫婦ノ子供ヲ誘拐シロ」――!
 子供を人質にとられた男が、別の子供を誘拐する――というお話。主人公が脅迫されて別の人間に脅迫電話をかけるということで、法月綸太郎の「トランスミッション」(『パズル崩壊』所収)を思い出しましたが、あれとは似て非なる話。最後にちゃんと犯人の招待や動機が判るぶん「トランスミッション」より出来はいいですが、結末は少し急ぎすぎかなぁ。犯人と主人公の関係性や、主人公と彼が誘拐した子供との間のドラマなど、もう少しページを割いて描いて欲しかったです。長編にすればよかったのに、というのはこの作品に限らず、本書収録作全般に言える印象です。

 「二十四羽の目撃者」…サンフランシスコ動物園で発砲事件があり、日系アメリカ人のラーメン店経営者が死亡した。現場となった通路の両端には人がおり、どちら側からも逃げる犯人は目撃されていない。つまりは密室状態だった。被害者に高額の保険金がかけられていたため、保険調査員の「おれ」は調査を開始するが……。
 シリアスな作品が多い貫井作品にあって、都会的なユーモア・ハードボイルド風という異色さが注目される作品。これが後に『悪党たちは千里を走る』なんかにつながっていったと考えると見逃せない作品ですが、個人的にはユーモア小説としては不発に終わった印象。ですが、小市民な主人公が精一杯ハードボイルドを気取る感じは好感が持てます。主人公が意地の悪い暴力デカ二人にいびられるシーンは、メル・ギブソン主演の映画『ペイバック』のワンシーンを思い出しました。

 「光と影の誘惑」…競馬場近くの酒屋で知り合った、銀行員の西村と肉体労働者の小林。意気投合したふたりは、西村の勤める銀行が輸送する現金を強奪する計画を立てるが……。
 これは注意深く読んでいたら、トリックを見抜けただろうなぁ。そう思うとちょっと悔しい。現金輸送車襲撃というサスペンスフルな内容ですが、一直線でいくのかと思いきや、意外なツイストのきいた展開が待っています。ただ、結末が少々残酷すぎることと、その人物がそこまで残酷な行為に走る動機に説得力が足りないところがネック。これも長編で読みたかったなぁ。

 「わが母の教えたまいし歌」…父が死んだという知らせを受けて、静岡の実家に帰省した僕。我が家は父・母・僕の三人家族のはずだったが、父の葬儀の席で、父がかつて勤めていたという会社の元同僚から、両親に「初音」という名前の娘がいたことが明らかになって……。
 家族の秘められた歴史が紐解かれていくミステリー。これもこの長さじゃ物足りない気がしますね。主人公の「僕」が抱えるもう一方の事情はおざなりになっちゃうし。それに、ちょっと登場人物の造形が類型的かなという気がします。家族の絆を描いたテーマには深みや重みがあるだけに、残念な出来という気がする。

 なんだか全体的に、もったいない作品が多かった印象がある作品集でした。もっと枚数があれば、もっと面白く出来ただろう、という。また、僕が今まで読んできた貫井作品全体の印象ですが、なんだかこの人、シリアスな作品になるとキャラクターが類型的になる。人間的な厚みや多面性が感じられないんですよね。逆に『悪党たちは千里を走る』や本書の「二十四羽の目撃者」など、コミカルな作品のほうが多面的で重層的な人物造形が出来ている気がします。普通逆だろって思うんですがね。そういう部分で、貫井さんは本質的にユーモア小説作家なんじゃないだろうか、という印象を強くしました。シリアスな作品のほうが評価は高いんでしょうけど、もっとユーモア作品を書いて欲しいなぁ。日本のミステリー界で、都会的でスタイリッシュなユーモア・ミステリを書ける人ってそんなにいないですから、需要はあると思うんだけどなぁ。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(1)|読書|2010-12-30_05:03|page top

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『光と影の誘惑』
貫井徳郎 『光と影の誘惑』(集英社文庫)、読了。 中編4編が収められた作品。 安定した面白さでした。 「長く孤独な誘拐」 息子が誘拐され、その犯人からの要求はある子どもを誘拐すること・・・ な...

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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