闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『霧の迷宮から君を救い出すために』黒田研二

 本格ミステリ作家、黒田研二氏の長編。氏の持ち味である、技巧を凝らしたアクロバチックな展開を見せる怪作。
霧の迷宮から君を救い出すために (ジョイ・ノベルス)霧の迷宮から君を救い出すために (ジョイ・ノベルス)
黒田 研二

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 僕は防犯グッズを販売している会社の営業マン。その日の朝から行方をくらましていた会社の先輩から呼び出された僕は、明神高原にある防犯シェルター、通称〈亀〉のそばで何者かに襲われ、崖から転落してしまう。顔見知りのコンビニ店員が偶然発見してくれたおかげで一命を取り留めた僕だったが、大きな後遺症が残ってしまった。脳を損傷し、僕の目は動くものをまったく認識できなくなってしまったのだ。やがて〈亀〉の中から先輩の死体が発見されるが、そのとき、シェルターは完全な密室だったという。先輩はなぜ殺され、僕はなぜ襲われたのか。犯人はいったい何者なのか。独自に調査を開始した僕がたどり着いた、衝撃の真実とは――?

 黒田研二オフィシャルサイト「KUROKEN!」
 
 うーん、なんとなくこれは、見切り発車で書き始めたんじゃないかという気がしてしまいます。最初からちゃんとプロットを立てて、しっかり筋立てを考えて書き始めたにしては、話の流れがいやにぎこちない。なんとなく終盤は伏線を拾うことに汲々としているような印象を受けるし、最終的に迎える結末も、なんだかスッキリしない。冒頭からいかにも怪しげで思わせぶりな人物が何人も登場するわりに、ストーリーの本筋に関わってくるのはごく限られた、それもキャラの薄い人物ばかりだし、主人公も含め、その登場人物たちはどいつもみんな子供っぽい。「いい大人がそんなこと言うか」みたいなツッコミを入れたい箇所がたくさんありましたよ。犯人を示す伏線も判りやすいし、巧みなプロットの構成に唸らされた『ペルソナ探偵』と同じ作者の作品だとは思えません。『ペルソナ探偵』が良かっただけに、ちょっと期待しすぎたかな?

 って文句ばっかり言うのはアレなんで、良かったところも。何より、“動くものが見えない”というシチュエーションを設定して、その縛りの中でしか書き得ないミステリーを書いたというところがすごい。動くものが見えないという圧倒的なハンディを背負いながら、主人公が事件の真相を解き明かそうと奮闘する様も、読んでいて自然に応援したくなるような感じで、主人公が困難を克服していく図式のドラマとしては、よく書けていると思います。
 また、主人公の勤務先が防犯用品の販売会社で、作品の序盤で妙な顧客に自社の取扱い商品を一つ一つ説明していくシーンも、終盤での犯人との格闘シーンに活かされているので、無駄にはなっていません。その辺の構成はさすがといったところ。ラストシーンから冒頭のイントロに繋がっていくのも、よくあるやり方ではありますが、効果的な演出ですね。

 でもやっぱり、『ペルソナ探偵』と比べたら評価は大幅に下げざるを得ないですね。主人公の一人称で書かれた作品ですが、その目線は外へは伸びていかないし、かといって内面を掘り下げていくわけでもなく、視力に障害のある主人公が、外界をなんとか認識しようと躍起になっているだけで話が終わってしまうといった感じ。比較対象として適当かどうかは判りませんが、たとえば井上夢人氏の『オルファクトグラム』では、嗅覚が発達しすぎたために視覚が退化してしまい、匂いで世界を認識するようになった男が主人公で、通常とはまったく異なる感覚で捉えられた世界を見事に文章で表現していました。本作『霧の迷宮から君を救い出すために』にそこまでの驚きはないです。
 正直、今回は期待はずれでしたね。読みやすかったけれど、心に残るものはあまりないし。とはいえ、黒田氏の本来の実力はこんなもんじゃないはずなんで、いずれまた、別の作品を読んでみようと思います。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(2)|trackback(1)|読書|2011-01-05_01:47|page top

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黒田研二 『霧の迷宮から君を救い出すために』 感想
霧の迷宮から君を救い出すために (ジョイ・ノベルス)実業之日本社 2004-10売り上げランキング : 817197おすすめ平均 無茶Amazonで詳しく見る by G-Tools ----あらすじ---- 会社の先輩から呼び出された...

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最初にペルソナ探偵を
読んだのは、綾辻さんで言うところの最初に『時計館の殺人』を読んでしまったようなものだからね。評価が落ちるのは仕方のないところだと思います。私は彼の作品の人間描写が好きなので、よほどの駄作を読まない限り読み続けると思いますけど。
それなら君のチョイスミスだ。
>>峰川幸介三世さま。
人物描写ですか。『ペルソナ探偵』はその部分でも悪くなかったですが、本作はイマイチでしたね。
まあ本文中にも書いたとおり、これで黒田氏の作品を読むのをやめようと思ってるわけではないから、ごあんしんあれ。

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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