闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『仕掛け花火』江坂遊

 星新一氏自ら「後継者」と認めた奇才・江坂遊氏の初作品集。不思議な世界で繰り広げられる異様な物語、39編。
仕掛け花火 綾辻・有栖川 復刊セレクション (講談社ノベルス)仕掛け花火 綾辻・有栖川 復刊セレクション (講談社ノベルス)
江坂 遊

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 もともとショートショートというカテゴリーは好きで、たくさん読んでいます。『ショートショートの広場』シリーズ(21巻からは『ショートショートの花束』に改題)は22巻全部読んでいるし、星新一氏のショートショート集も5~6冊持ってる。他に太田忠司氏、赤川次郎氏、阿刀田高氏、筒井康隆氏らのショートショート集を読んだことがあり、一生で読んだショートショートの数は、たぶん1500編は超えてると思います。そんな僕ですら、この『仕掛け花火』には少なからず面食らいました。やや大げさに言えば、ショートショートというカテゴリーに対する認識を改めさせられた感じ。ショートショートの家元・星新一氏が脱帽したのもうなずける、怪作ぞろいの作品集です。
 
 ショートショートを定義づける明確な基準というのはじつは存在しないわけですが、その特徴は、とにかく短いこと。どのくらい短ければ“短編小説”ではなく“ショートショート”と区別されるのかという境目もあいまいですが、ショートショート研究家で自ら実作もするSF作家・高井信氏による「(四百字詰め原稿用紙)約二十枚以下」という線引きが妥当なところでしょう。そして、その長さ(というか短さ)の基準さえクリアしていれば、内容はどんなものであってもかまわない、それがショートショートというカテゴリーの独特なところです。そしてその独特さゆえに、本にするとわずか10ページ前後の短い文章の世界が、無限の広がりを持つ異空間になる。この『仕掛け花火』を読むと、本当にショートショートの世界は無限だな、と思えます。

 「マッチ棒」…ある深夜、酒に酔った男の前に現れた、マッチ売りの少女。その少女の売るマッチには、願いをかなえる不思議な力があるというが……。
 こ、怖ぁ~。読み終わって、思わず薄ら寒い気持ちで周囲を見回してしまった。やっぱり、悪いことは考えない方がいいな。そんなお話。

 「虹細工」…永遠野平(とわのだいら)へ向かう列車の中で出会った、不思議なじいさん。彼は虹を細工して様々なものを作れるという……。
 まさにファンタジー。虹細工というありえないものが、ありそうに思えてくるから不思議。これは筆力ですね。特に驚くようなオチがあるわけでもなく、それでいて妙に味わい深い。こんなショートショートも、あるのだ(星新一風?)。

 「夢ねんど」…うちにやって来たセールスマンが僕に見せたのは、頭で念じたことを造形化するというふしぎなねんど。その素晴らしさに感心した僕は、高いのを承知で購入するが……。
 これはまさに、“少し不思議”なSFもの。こんな商品、あったらいいなと思わせておいて、最後には……?うん、でも、これはこれで幸せな結末かも?

 「秋」…中国史の研究者だった僕のおじいちゃんは、幻の画家・王若幻が書いた絵画「夏」を捜し求めて、ついに若幻の後裔・若遠にたどりつきました。しかしそこで見せられた絵に描かれていたのは、どう見ても「秋」の景色で……。
 おそらく、誰もの予想を裏切る結末。そして真実は藪の中に。これはショートショートというカテゴリーを知り尽くした作者だからこそ書ける結末でしょう。そして僕のようにあらゆるショートショートにすれた読者ほど、この結末にころりと騙される。たぶん。

 《綾辻・有栖川復刊セレクション》という企画レーベルから出ている本書。“復刊”ということは、以前は“絶版”だったわけで、そんな本を、しかも専門のミステリではないカテゴリーまでカバーしている綾辻・有栖川両氏の守備範囲の広さに脱帽だったりするわけですが。
 作者の江坂氏は兼業作家で、サラリーマンをしながらショートショートを発表し続けているそうです。近年の発表媒体はもっぱらケータイ向けサイトなんだとか。
 ショートショートは数が揃わないことには本が出せないのもあって、商業ベースには乗りにくいカテゴリーですが、今後電子書籍が普及して、電子媒体への小説の配信が一般化すれば、ショートショートが配信向けの気軽なコンテンツとして復権することもあるかもしれません。一作五円とかで配信すれば、案外商売になりそうな気がする。僕だったら、読むと思います。
 それはともかく、NHKの『星新一ショートショート』が国際エミー賞グランプリを受賞したり、映画『僕と妻の1778の物語』で眉村卓氏の一日一話が注目されるなど、最近ショートショートというカテゴリーが少し脚光を浴びつつあるように思います。太田忠司氏も久しぶりのショートショート集を出したみたいですし、ショートショート好きとしては、このカテゴリーに活気が出てくることは大変嬉しいことです。江坂遊氏には、これからもその先陣を切るような活躍をしてもらいたいですね。
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comments(0)|trackback(0)|読書|2011-01-24_03:43|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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