闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説&エッセイ『妻に捧げた1778話』眉村卓

 映画『僕と妻の1778の物語』の原作本というか、基になったお話を、当事者の眉村卓氏自身がつづったエッセイ。 映画では描かれなかった眉村氏の心境や夫婦の日々を知ることが出来るとともに、一日一話の小説も19編収められています。
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眉村 卓

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 本書には眉村夫妻の若き日の思い出とか、奥様が病気になる前のお話もつづられているので、この本で書かれていることがそのまま映画になっているわけではありません。ただ、実際の眉村夫妻の暮らしぶりとか家庭の様子などを読んでいると、少なくとも僕が想像する「昭和一桁世代」のイメージとはだいぶ違っていて、本当に仲が良く、コミュニケーションも豊富な夫婦だったんだと感じます。
 
 以下、収録ショートショートの感想をいくつか。

 「古い硬貨」…45年前、遊び半分で文字を刻み付けた硬貨が、回りまわって私の手元に戻ってきて……。
 なんか、ありそうな話。そしてその出来事に対する、主人公のリアクションも解る気がします。結末は特に何も起こらないわけですが、これは「何も起こらないでほしい」という作者の気持ちの表れかも、と思うのは、深読みかな。

 「ある書評」…本好きの少年は大人になり、たくさんの本を所有するようになった。やがてその本は家の中に置ききれなくなり、専用の書庫を建てるまでになる。しかし本はますます増え、書庫にも収まりきらなくなり……。
 これはSF作家の面目躍如といった作品ではないでしょうか。未来への先見と過去への懐旧、物語性と批評性を交えつつ、イメージ喚起力の強い文章の力も駆使して、一つの壮大なファンタジー小説のような仕上がりになっています。本がページを翻しながら空を飛ぶイメージは、映画のラストシーンにも繋がるものでしょう。本好きなら、これを読んで何も感じないということはないはず。

 「ダイラリン・その他」…友人のCは、このところダイラリンに悩まされているという。ダイラリンとは空想上の怪物なのだが、Cは実際にそれを目にしているというのだ……。
 面白い。なんだか身の回りのすべてを疑いたくなってしまうような、それでいてどんな不思議なことも肯定してしまえそうな、そんな気分にさせられる作品です。導入で知人の話をして、後半は語り手自身の話という構成も効果的。ダイラリンという名前もいいなぁ。SFショートショートらしい作品ですね。

 「土産物店の人形」…旅行先の土産物店で見つけた、不思議な陶器の人形。値段は書いていない。店主に値段をきくと、逆に質問に答えろという……。
 なんでもない風景を、一気に異様な世界に変えてしまう奇妙な土産物屋の店主の存在と、答えのないまま放り出されたような結末がインパクト大な作品。こういうのも、ショートショートなんですね。ものものしい問いだけ投げかけて、答えを教える気は初めからないという無責任さが好き。現実にいたら腹立つけど。

 「夜中のタバコ」…夫人が入院したその夜のこと。E氏は無性にタバコが吸いたくなり、病院の喫煙室に向かう。そのとき、少年の頃に見たある情景を思い出し……。
 1752話目ということですから、だいぶ最後のほうの作品です。なんだか異様な情景が現れますが、その異様さが、異様なくせに妙に板についているのがおかしい。作者自身は、妻が入院し日々病状が悪化する中で、この現実が変わるような何かがあればという願望が書かせたものと述べていますが、作品からは、そういう悲壮感はあまり感じられません。空想と現実の境目が曖昧になるような、不思議な味のある作品です。

 病気の奥様を元気付けるために書かれた作品たちですから当然といえば当然なのでしょうが、どの作品も作者の優しさや純粋さがにじみ出ているような気がします。ショートショート小説としての純粋な意味での完成度は、高いのもあればそうでもないのもあるというのが正直なところですが、しかしほとんど最後の方になって、急に目を見張るような作品が飛び出してきたりするので、驚きます。とにかく、たった一人の読者のために一日一話を書き続けた眉村氏の、思いの強さにひたすら感服。そしてやっぱり最後の三作は、感想を言葉にするのがはばかられるほど強く胸を打つ。
 将来、僕は大切な人のために、どれだけのことが出来るだろうか。いやその前に、これほど大切に思える人に、出会えるだろうか?――結局そういうオチになっちゃう自分に苦笑しつつ、意外と希望は捨てていないんですが。いつか一瞬が永遠に続く日まで、おやすみ。
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comments(0)|trackback(0)|読書|2011-02-01_02:32|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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