闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『女王国の城』有栖川有栖

 学生アリスシリーズ長編第四弾にして、2008年の第8回本格ミステリ大賞受賞作。英都大学推理小説研究会、略称〈EMC〉江神二郎部長の名推理が冴えわたる。
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 ちょっと遠出するかもしれん。そんな言葉を残し、大学に姿を見せなくなった江神さん。下宿に残された痕跡からは、どうやら神倉に向かったようだ。神倉は、現在飛ぶ鳥を落とす勢いで発展している新興宗教団体〈人類協会〉が本部を構え、小さいながらも宗教都市の様相を呈する町だ。そんな場所へ、部長は何をしに向かったのか?心配な僕たちは、江神さんを追って神倉へ。さっそく人類協会の本部へ出向き江神さんとの面会を申し入れるが、つれなく断られてしまう。ところが翌朝、協会の態度が手のひらを返したように一変。江神さんとの面会が叶ったばかりか、僕ら全員、VIP待遇で協会本部に迎え入れてくれた。その変節ぶりに驚きながらも部長との再会を喜ぶ僕たちだったが、その矢先、協会本部内で殺人事件が発生。すると協会はまたも手のひらを返し、僕たちを本部内に軟禁してしまった。いったいこの〈女王国の城〉の内部で、なにが起きようとしているのか……?
 
 さて、本作の感想ですが、ミステリ作家の我孫子武丸氏が第8回本格ミステリ大賞の選評の中で書いていることが、僕が感じたこととかなり近いので、ちょっと引用してみたいと思います。

 ―『女王国』は、前作『双頭の悪魔』が好きだっただけに期待が大きすぎたのか、大長編を支えるネタとは思えなかった。容疑者たりえないレギュラーメンバーが多すぎる上に、事件は彼らにとって他人事でしかなく、サスペンスも欠如している。裏の事件は面白いのだが、決着のつけ方があれではおまけのようにしか見えない。江神さんにもうひと頑張りして解決して欲しかった。―

 この選評だけ読むと身も蓋もない批判意見のようですが、この年の本格ミステリ大賞候補作の中で、三津田信三氏の『首無の如き祟るもの』と並んで我孫子氏がもっとも高く評価したのは、本作でした。念のため。

 本作は文庫本で上下あわせて850ページ強と、有栖川氏の著作の中で最も長い作品です。個人的にはこのシリーズが好きだし、有栖川氏の書く文章が好きなので、まったくダレることなく読めましたが、逆にこのシリーズを初めて読む読者にとっては、事件の謎解きと関係のない部分で盛り上がっていたりする部分は魅力に欠けるかもしれません。また、メインの謎も解かれてみれば地味で、なおかつやや都合よく感じるきらいもあったりして、読者への挑戦が三度もあるという超絶謎解きツイスターに目眩を覚えた前作『双頭の悪魔』と比べると、謎解きそのものの魅力という点では及ばないです。推理小説の“背骨”たる謎解き自体に、850ページ強の長編を支えきる力があったかといえば、我孫子氏の指摘のとおり、やや物足りなかったと思います。
 逆に言うと、謎解きとは直接関係のない部分での盛り上がりが非常に面白い作品で、シリーズを通して読んできた読者には、EMCメンバーのキャラ小説的な側面でも楽しめる作品でした。特に以前の作品ではさほど見せ場があったと思えない織田先輩に、非常にカッコいい場面が用意されていたのは嬉しかったですね。

 学生アリスシリーズは青春小説でもあり、瑞々しい文章で描かれる主人公アリスの繊細な心の動きが読みどころでもあります。本作では望月先輩が就職活動に悩む姿が描かれ、それに触れたアリスの心もまた揺れます。シリーズ一作目『月光ゲーム』のときは入学したての一回生だったアリスですが、本作では三回生。登場人物の成長を感じるシーンです。ところで、本作には前日譚とも言うべき短編作品があるそうで(『川に死体のある風景』所収・「桜川のオーフィリア」がそれ)望月が失恋した話とか、江神さんの盟友でEMCの共同創設者・石黒の存在とかは、そちらで語られるんだと思います、たぶん。

 この学生アリスシリーズは五部作構想だそうですから、そのとおりだとすれば次の長編がラストとなります。今回、江神さんが神倉に来た本当の動機が最後に明かされますが、江神さんが抱える暗い闇に微かに光が射すようなこの結末、きっとシリーズのグランドフィナーレへの序章となるのでしょう。アリスとマリアの恋の結末や織田と望月の就職活動の結果、そして江神さんが執筆中とされる謎の小説『赤死館殺人事件』についても明かされるのか?シリーズ最終作が待ち遠しいですが、またけっこう待つのかな。ま、気長に待ちますか。
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有栖川有栖 『女王国の城』 感想
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