fc2ブログ

闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

カレンダー

09 | 2023/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

月別アーカイブ

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

映画『アジャストメント』

 フィリップ・K・ディック原作、マット・デイモン主演のSFサスペンス。運命とは自分で切り拓くもの。いや、それともすべては、あらかじめ定められている……?
アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)
フィリップ K.ディック 大森望

早川書房 2011-04-30
売り上げランキング : 2930

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 史上最年少で下院議員に当選した若手政治家デヴィッド・ノリス。しかし満を持して出馬した上院議会選では、投票日の直前にスキャンダルが発覚し、あえなく落選してしまう。気持ちを鎮めるためにトイレに入ったデヴィッドは、そこでエリースという女性に出会う。彼女との会話に心を動かされたデヴィッドは、その後の落選会見で選挙チームが用意した原稿を無視して自分の率直な気持ちを語り、その演説は大きな話題となる。
 数日後、幼馴染チャーリーが経営する投資会社の役員となったデヴィッドは、通勤バスの中でエリースと再会。彼女とまた会う約束をして別れた後オフィスに出勤したデヴィッドは、そこで奇妙な光景を目にする。職員たちが全員動きを止め、チャーリーは怪しげな集団に取り囲まれていたのだ。見てはいけないものを見てしまったデヴィッドはその集団に拉致され、驚くべき真実を知らされる。人々の運命はすべて“運命の書”によって定められており、“調整局”の手によってそこから逸脱しないように管理されているというのだ……。

 映画『アジャストメント』公式サイト
 
 リチャードソン、ドナルドソン、トンプソン……。すべて、“調整局”のエージェントの名前。この小ネタには地味に笑いました。たぶんこの組織の成員はみな“~ソン”という名前なんだろうな。他にも“アンダーソン”とか“ミケルソン”とか。

 フィリップ・K・ディックといえば『ブレードランナー』ですが、個人的に中学か高校のときにビデオで観たものの、あんまり記憶にありません。十代の子どもには少々難しかったのかなぁ?まあまた、機会があれば見直してみたいと思いますが。小説にしても、僕はSF小説はとんと読まないのですが、“超”がつくような有名作ぐらい、読んどきたいとも思いますね。

 “運命”と“自由意志”という、一種哲学的とも言えるテーマを持った映画ですが、けっして重苦しくなることはなく、テンポが良くて観ていて楽しい娯楽作です。そして主人公が運命に逆らって、好きな女性と結ばれようとするラブストーリーでもある。真実の愛は運命をも変えるということなのかと思いきや、実はこの二人が惹かれあうことは、もともと“運命の書”に書かれていたという、よく解らない種明かし。もともと結ばれる運命だったのだが、最近になって“運命の書”に変更があり、結ばれなくなったというのです。どうやら運命というのはあまりかっちり決まっているものではなくて、時々、何らかの都合で書き換わるものらしい。だとしたら、運命に逆らうことも必ずしも無駄なことではなく、それなりの戦果が見込めるのかもしれませんね。

 主人公デヴィッドを演じたマット・デイモンがやや太ったように見えますが、これは上院議員候補として貫禄を出すための役作りでしょうか。『オーシャンズ』シリーズではずっと子ども扱いされるなど、若々しいイメージの強い彼ですが、実際はもう40歳。ちょっと驚きですが、本作でのややお腹の出た彼を見ると、たしかにそれなりの大人に見えます。なおかつ、知的で誠実という元々の彼のイメージと、本作の役柄のキャラクターはじつに上手くマッチしていたように思います。
 ヒロインのエリースはバレリーナという設定で、実際に作中でも踊るシーンがあるのですが、エリースを演じたエミリー・ブラントはバレエや踊りの経験はまったくなかったそうで、もちろん撮影前にみっちりトレーニングを積んだとはいえ、バレエのシーンでも不自然さを感じさせなかったのは見事だと思います。

 さて、実際のところ“運命”というものはあるのか。あるいは、それはあくまでも自らの意思で、自由に選択できるものなのか。個人的には「運命なんてクソ食らえだ」と思っていますが、そう思っている僕自身、「たぶん生まれたときから決まってたんだろうな」と感じることがいくつもあって、自分の意思ではどうにもならないもどかしさにイラつくことがあります。そういう部分ではやはり“運命”を感じざるを得ない。この映画の結末でも暗示していますが、おそらく運命というのはある程度幅をもって存在していて、その中で僕らは選択を繰り返しているのでしょうね。まあ月並みな考えですけど。
 この映画では、運命をつかさどる最高責任者“議長(チェアマン)”が人々の運命を設計し、決定しています。しかし、その運命は必ずしも完璧に固められたものではなく、どうやら偶然が入り込む余地があるらしい。さらに、運命を管理する“調整局”だって時にミスをしでかしています。要するに“議長”とて全能ではない。調整局のエージェントは“天使”と呼ばれていましたから、“議長=神”でしょう。つまりこの映画は「神は全能じゃない」と言っているわけで。じつはこの映画の最大のメッセージはそこなんじゃないかと思ったりします。なんとなく、フィリップ・K・ディックってそういうこと言いそうなイメージあるし。
ブレードランナー クロニクル [DVD]ブレードランナー クロニクル [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ 2010-04-21
売り上げランキング : 1725

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

マイノリティ・リポート [DVD]マイノリティ・リポート [DVD]
フィリップ・K・ディック

20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント 2004-03-19
売り上げランキング : 119662

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
フィリップ・K・ディック カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン)

早川書房 1977-03-01
売り上げランキング : 1490

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

スポンサーサイト



Theme:洋画
Genre:映画

HP Directplus オンラインストア
comments(0)|trackback(28)|外国映画|2011-06-03_02:03|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

アジャストメント THE ADJUSTMENT BUREAU
アジャストメント 監督・脚本:ジョージ・ノルフィ 出演:マット・デイモン/エミリー・ブラント/テレンス・スタンプ/アンソニー・マッキー 内容:将来有望な若手政治家デヴィッドは、ある日エリースという美しいバレリーナと運命的に出逢い、一目惚れする。しかし突...
アジャストメント
人気SF作家フィリップ・K・ディックの短編小説を映画化。人間の運命が全てアジャストメント(調整)されていることに気付いた男が、それに逆らい自らの力で運命を切り開く姿を描いている。主演は『ヒア アフター』のマット・デイモン、共演に『ガリバー旅行記』のエミ
♪6月の気になる映画♪
雨の日が増えてきた今日この頃。出かけることすら億劫になりそうな毎日だけど、こういう時こそ好きな映画を観て過ごしたいかも。 ということで今月封切りの映画で気になる作品を。でも、実際に観るのは5月に公開開始になってる作品が優先ですがーw。 ◎…絶対観る
アジャストメント
The Adjustment Bureau: Library Edition運命に抗う男女の物語は、SFアクション大作として見ると肩透かしをクラう。むしろラブ・ストーリーとして楽しみたい。若き政治家のデヴィッドは、あ ...
アジャストメント/THE ADJUSTMENT BUREAU
<<ストーリー>> 政治家のデヴィッド(マット・デイモン)は、ある日、バレリーナのエリース (エミリー・ブラント)と恋に落ちる。しかし、突如現れた男たち、 “アジャストメント・ビューロー(運命...
アジャストメント / THE ADJUSTMENT BUREAU
ランキングクリックしてね ←please click フィリップ・K・ディックの短編小説『調整班』を映像化したSF  そのポスターとはイメージ違って、サスペンスというより実はラブストーリー!? 主演は、マット・ディモン。ターゲットはSFファンというより、「運...
アジャストメント
2011年5月28日(土) 18:30~ TOHOシネマズ日劇3 料金:1250円(有楽町のチケットフナキで前売り券を購入) パンフレット:未確認 『アジャストメント』公式サイト フィリップKディックと言えば、「ブレード・ランナー」「トータル・リコール」「マイノリティ・リ
「アジャストメント」感想
 フィリップ・K・ディック原作の短編小説「調整班」を、「ボーン」シリーズのマット・デイモン主演で映画化。  予告CMとポスターのチャッチコピーからして、またマット・デイモンお得意のアクション超大作かと思いきや、案外ゆるめのSFラブコメディだった。
劇場鑑賞「アジャストメント」
自分の“運命”も調整されているのか、気になるなぁ・・・ 詳細レビューはφ(.. ) http://plaza.rakuten.co.jp/brook0316/diary/201105270006/ アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20) posted with amazlet at 11...
アジャストメント
アジャストメント ★★★★☆(★4つ) 完全なるラブストーリーでしょ!!!! ちょっと想定外。 天使(金城武「死神の精度」に出てくるような天使)たちによって、運命は操作され、外れると軌道修正される。一人の女性との出会いが忘れられない主人公は、天使の居眠...
映画「アジャストメント 」調整班として働いてみたい
「アジャストメント」★★★ マット・デイモン、エミリー・ブラント、 アンソニー・マッキー、ジョン・スラッテリー、 マイケル・ケリー、テレンス・スタンプ 出演 ジョージ・ノルフィ監督、 106分 、2011年5月27日, 2011,アメリカ,東宝東和 (原作:原題:THE ADJUSTME...
アジャストメント
 『アジャストメント』をTOHOシネマズ六本木ヒルズで見ました。 (1)映画の原題は「Adjustment Bureau」ですから(原作のタイトルも「Adjustment Team」)、専ら運命の調整を業務とする人たちを描いている作品ではないか、と思われるかもしれません。  ですが、「運命調...
アジャストメント
  将来を有望視されている若手政治家のデヴィッド(マット・デイモン)は、ある日エリース(エミリー・ブラント)という美しいバレリーナに一目惚れする。しかし、突然“アジャストメント・ビューロー(運命操作局)”と呼ばれる男たちが現れ、デヴィッドは拉...
アジャストメント
★ネタバレ注意★  フィリップ・K・ディックの短編小説「調整班」が原作。  ……なんですけど、ディック原作の映画というものは、わたくしが見るところ、『スキャナー・ダークリー』を唯一無二の例外として、どこから観てもディックでないにもほどがある、という...
アジャストメント 汝、何を望むとも・・・・
【=28 -8-】 TOHOシネマズ1か月フリーパスポート2本目、「汝、何を望むとも、そを祈るに、既に受けたりと知れ、然らばそを得ん。」  スラム出身のデヴィッドは上院議員候補として選挙に出馬していたが、過去のスキャンダルにより落選。敗北宣言を控えたデヴィッドだが...
『アジャストメント』 マット・デイモンの功罪
 マット・デイモンが主演することの功罪は何だろうか?  映画『アジャストメント』において、主演俳優としてマット・デイモンを迎えたことのメリットは、何といってもそのおかげで映画への注目が高まり、宣...
映画『アジャストメント』を観て
11-38.アジャストメント■原題:The Adjustment Bureau■製作年・国:2011年、アメリカ■上映時間:106分■鑑賞日:6月4日、TOHOシネマズ・六本木ヒルズ(六本木)■料金:1,800円□監督・脚本・製作:ジョージ・ノルフィ□原作:フィリップ・K・ディック
「アジャストメント」
「The Adjustment Bureau」2011 USA デヴィッドに「グリーン・ゾーン/2010」のマット・デイモン。 エリースに「プラダを着た悪魔/2006」「チャーリー・ウイルソンズ・ウォー/2007」 「ジェイン・オースティンの読書会/2007」「サンシャイン・クリーニング/2008」...
アジャストメント
評価:★★★☆【3,5点】(10) 設定は面白いが、妙に人間くさいヤツらに苦笑い。
映画:アジャストメント
 SF映画だと思って観に行ったら肩すかし食らうよ。恋愛映画だと思って観に行ってと何度も念を押された作品、アジャストメントを見てきました。
アジャストメント
アジャストメント'11:米◆原題:1THE ADJUSTMENT BUREAU◆監督:ジョージ・ノルフィ◆出演:マット・デイモン、エミリー・ブラント、アンソニー・マッキー、ジョン・スラッテリー、マイケル・ ...
アジャストメント(THE ADJUSTMENT BUREAU)
SFとはいっても、余りにも隔絶した、余りにもベターなお話に、あれよあれよとラストまで行ってしまった感じ。こんなに都合よく《運命の書き換え》が行われていいのかい?特にラストは腰砕け。でもこんなオメデタイ前向きなお話は嫌いじゃないが。《人生は自ら切り開く》 ...
アジャストメント / The Adjustment Bureau
『ブレードランナー』『トータル・リコール』『マイノリティ・リポート』・・・と、数多くの作品が映画化されているフィリップ・K・ディック原作の作品の映画化。もちろん、この作品も、これまでの作品と同様、SFなんですが、より恋愛物語色が強くなっています。 『ジェ...
アジャストメント
THE ADJUSTMENT BUREAU/11年/米/106分/SFサスペンス・ロマンス/劇場公開 監督:ジョージ・ノルフィ 製作:ジョージ・ノルフィ 原作:フィリップ・K・ディック『調整班』 脚本:ジョージ・ノルフィ 出演:マット・デイモン、エミリー・ブラント、アンソニー...
映画「アジャストメント」
この映画も感想を書くまで暫らく間が空いてしまったので、ちょっとストーリー展開とかが曖昧になってしまっている所が有りますので悪しからず。この映画は「ブレードランナー」「トータル・リコール」「マイノリティ・リポート」「ペイチェック 消された記憶」など多数映...
アジャストメント
「アジャストメント」監督:ジョージ・ノルフィ(『ボーン・アルティメイタム』)出演:マット・デイモン(『グリーン・ゾーン』『ヒア アフター』)エミリー・ブラント(『ガリバ ...
アジャストメント (The Adjustment Bureau)
監督 ジョージ・ノルフィ 主演 マット・デイモン 2011年 アメリカ映画 106分 SF 採点★★★★ 日々なんてものは偶然の積み重ねでしかないはずなのに、何をやっても上手くいく時期や、その反対に何をやってもダメな時期が続いたりしますよねぇ。特にダメな時期な…
『アジャストメント』'11・米
あらすじ将来有望な若手政治家デヴィッドは、ある日エリースという女性に、一目惚れす

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

参加ランキング

クリック感謝!

QRコード

QR