闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『九杯目には早すぎる』蒼井上鷹

 2004年、第26回小説推理新人賞を受賞した蒼井上鷹氏のデビュー短編集。五つの短編の間に四つの掌編がサンドイッチされているという、ちょっと風変わりな構成。もちろん受賞作「キリング・タイム」も入ってます。
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 休日に上司に遭遇、無理やり酒に付き合わされていたら、上司にも自分にもまるで予期せぬ自体が――。などなど、運の悪い男が不幸な目にあう見本市のような、憐れにも可笑しい、上質のミステリー九編。「小物のセコさを書かせたら抜群にうまい」と評される著者の腕に酔い、大失敗のドキドキをご一緒にいかが?(本書裏表紙より)
 
 正直、どうして本書を購入したのか、いかようにしてこの本に興味を惹かれたのか、よく覚えていません。たぶん『九杯目には早すぎる』という古典ミステリのパロディ風タイトルをお洒落っぽく感じて、文庫カバー折り返しのところの著者紹介を読んだら本格系の人らしかったから、いっちょ読んでみようか、となったんだと思いますが。

 「大松鮨の奇妙な客」…同棲相手の朋美に頼まれて、門倉という公認会計士の男を尾行し始めた蓑田。ある日、一軒の鮨屋に入った門倉は、そこで驚きの行動を見せる。様子を伺っていた蓑田は呆気に取られて……。
 男が鮨屋で奇妙な行動を取ったのはなぜか?という謎を、ミステリ好きの蓑田が同棲相手の朋美や、鮨屋の常連客たちとディスカッションしながら解き明かしていく話…と思ったら、結末は意外な方向へ。軽妙な文体や活き活きとした会話で読みやすいけれど、種明かしが非常に短くあっさりしているので、門倉の行動の真意とその裏に隠されたある計画の全体像は、すぐには理解しづらいかも。でも、非常に面白いです。短編集の一本目としては、後の作品に大いに期待を持たせてくれる出来ですね。

 「私はこうしてデビューした」…インターネットで作品を公開しているアマチュア作家・相尾のもとに、狛江という人物からメールが届く。〈一応ミステリ作家志望です〉という狛江は、相尾と「合作したい」と申し出るのだが……。
 これはトリック肝の部分はすぐにピンと来たんだけど、展開は予想と違ってました。とにかく狛江という人物のキャラと言動が強烈。でも、僕はこれに近い人を見たことがある。もちろんここまで強烈じゃないけど、その人には本作の〈狛江〉になる素質はあったと思うな。相尾と狛江の志向の違いを端的に説明した部分などは、〈ミステリファン〉への批評とも取れて、なかなか興味深いです。

 「タン・バタン!」…会社員の串本はお気に入りのバー「サード」で、小野寺という老人と知り合う。小野寺は他人の話を最後まで聞かずに早合点する癖があり、串本はいつも苛立たされるのだが、小野寺は一向に気にした様子はなく……。
 これはミステリというよりはサスペンス、あるいは単なるツイてない話、という感じですが、面白いです。串本の泥沼にはまっていくような不運さ、そしてピンチで最悪の選択をしてしまい、もう戻れないのだと悟ったときの、なんともいえない絶望感。あーあ、やっちゃったよ……という、脱力感。悲しいですねぇ。でも、自分もツキは無い方なので、串本の不運はなんか身に沁みます。

 「見えない線」…ショット・バー「レニ」の見習いバーテンダー、ノリオは花粉症に悩んでいる。ひそかに思いを寄せる常連の女性客から耳鼻咽喉科の医院を紹介されたが、ある夜の勤務終わりにその医院に行ってみたノリオはそこで思いがけない光景を目撃し……。
 これは切ないなぁ。ラストのオチが。ある意味、こんな非情な物語もない。切な過ぎて泣きそう。ミステリ的な趣向もあるんだけど、この作品はそういうことよりも、とにかくラストの圧倒的な切なさが印象的ですね。

 「キリング・タイム」…日曜日の夕方、課長の黒住と出くわしてしまい、飲みに付き合わされてしまった。しかも黒住は、「最近、誰かに狙われているみたいなんだ」と言い出し……。
 小説推理新人賞受賞作。ですが、文庫化に際して、結末の一行にほんのちょっとだけ手が入っているそうです。ミステリとしての仕掛け部分には影響はない範囲ですが。黒住の奇妙な言動の真意、黒住の妻の不倫相手の正体、そして主人公のある〈秘密〉……。これらが絡み合って、最終的にすべての関係者にとって不幸な結末に突き進んでいきます。登場人物みんなが、げんなりするほど小市民的で、その度量の狭さが不幸を呼び込むという展開は、なんだかすごく嫌なんだけど、リアリティがありますね。

 短編五編の感想でした。初めて読んだ作家さんでしたが、非常に読みやすく、楽しめました。こてこての本格ミステリという感じではなくて、必ずしもミステリに詳しくなくても入り込みやすい作品だと思います。サラリーマンが主人公になる話などは、なんとなく赤川次郎氏の作風に似ている気がしますね。赤川氏のノンシリーズものの短編を、もう少し本格寄りにしたような感じ。文章も読みやすいですし、他の作品も読んでみたくなりました。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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