闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『生首に聞いてみろ』法月綸太郎

 法月綸太郎シリーズとしては、『二の悲劇』以来久々の、そして今のところ最新の長編。2005年の第5回本格ミステリ大賞受賞作。
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)
法月 綸太郎

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 日本を代表する彫刻家、川島伊作が無くなった。その密葬の儀の直後、伊作氏が死の直前に完成させていた、愛娘・江知佳をモデルにした石膏像の首が何者かに切られ、持ち去られたという。これは江千佳への殺人予告なのか?伊作氏の弟で翻訳家の川島敦志から内密に相談を受けた法月綸太郎が真相究明に乗り出すが、やがて事態は思わぬ推移を見せる……。
 複雑に絡んだ事件の謎がほぐれたとき、隠されていた家族の秘密が明らかになる。おなじみ、名探偵法月綸太郎が活躍する、傑作推理長編!

 本格ミステリ作家クラブ公式サイト内『第5回本格ミステリ大賞』
 
 近年は短編が主になっていた法月シリーズで、久しぶりに出た長編作品。以前の長編作品、特に『ふたたび赤い悪夢』『一の悲劇』などでは、作者の内面的苦悩がそのまま作品に投影されていたため、作中の名探偵綸太郎も、事件の謎解きとは別の部分で、ひたすら悩み倒していたような印象があります。しかし、短編、特に「図書館シリーズ」以後(短編集『法月綸太郎の冒険』の後半)からは、シンプルなプロットとスマートなロジックを軸に、綸太郎と父親の法月警視、もしくは図書館司書の沢田穂波との軽妙な会話で楽しく読ませる作風に変わっていて、あまり「悩む」様子は描かれなくなります。そのような変遷を経て、久しぶりの長編となる本作では、綸太郎はどんな事件に直面し、どのような態度でその事件に挑むのか、という点にけっこう注目して読みました。
 読み終えて感じたのは、綸太郎は以前ほど悩まなくなったけど、直面している事件は以前のものとそっくりだなぁ、ということ。法月シリーズの長編って、とにかく“家族の秘密”に根ざした事件ばかりを扱ってるんですね。シリーズ一作目の『雪密室』は法月家そのものの秘密に触れる物語だし、『誰彼(たそがれ)』は兄弟関係、『頼子のために』『ふたたび赤い悪夢』『一の悲劇』は親子関係に隠された秘密が、悲劇の端緒となります。家族に係わる過去のある不幸が、めぐりめぐって現在に新たな事件を引き起こす複雑な因縁ばなしのような構図も、毎度おなじみという感じ(ちなみに『二の悲劇』は未読)。こういうテーマを描くことは、作者の法月さんにとってライフワークのようなものなんでしょうか。

 本格ミステリ大賞受賞、『このミス!』一位といった勲章を勝ち取っている作品だけに、どれほどすごい作品なのかという期待を抱かせますが、そこの部分は読者の好みによって、だいぶ評価が分かれるかもしれません。派手なトリックやアッと驚くどんでん返しがあるわけでもないし、被害者も(過去の因縁を無視すれば)一人しかいないので、事件自体も地味です。ミステリとしての売りは、丁寧に張り巡らされた伏線と、それを拾って繋ぎ合わせたときに完成する絵の、一分の隙もない完成度の高さ。論理的なミステリが好きで、終盤の、探偵が自身の推理を関係者に語って聞かせるシーンで、パズルのピースがピタピタと嵌まっていく感覚に快感を覚える人なら、たまらなく楽しい作品でしょう。逆に、どんでん返しや切れ味鋭いトリックでスッキリと騙されるのが好きな向きにとっては、論理を地道に積み上げていく作風は波乱がなく、地味すぎる印象を受けるかもしれません。僕自身はどちらかといえばスパッと騙されたい派なので、自分が投票するならこの作品を一位には推さないかなぁ。ただ、重くなりそうな内容もユーモアを交えながら淡々と書いていて、登場人物たちも人間味をもって描かれているので、読んでて退屈なところはなかったです。現代美術に関するうんちくを延々と書くあたりは『パズル崩壊』に収録された短編「カットアウト」を彷彿とさせますが、そちらと比べると大幅に読みやすくなっていますね。

 論理的推理の醍醐味とか論理に対するストイックさといった点では、確かに“傑作”と評されるだけのことはある作品だと思いますが、以前からの法月ファンとしては、家族の秘密とそこから生まれるドラマ(悲劇)の描き方が薄味に感じました。そういう部分では、やはり『頼子のために』の衝撃を超える作品はなかなかないですね。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(2)|trackback(2)|読書|2011-09-03_12:20|page top

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「生首に聞いてみろ」 法月綸太郎
図書館で見かけて、あ、これは噂を聞いたことがある本だと借りてみた。生首に聞いたわけではない。
法月綸太郎 『生首に聞いてみろ』 感想
生首に聞いてみろ (角川文庫 の 6-2)法月 綸太郎 角川書店 2007-10売り上げランキング : 251945おすすめ平均 ちゃんとしたミステリを読んだ気分になるまたもやつまらない・・・Amazonで詳しく見る by G-Tool...

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この本は確か
長編としても結構長めなんですよね。賞を取った事で期待感が高まり、尚且つ長いのでより一層“地味さ”が印象に残ってしまいます。目を開いたマスクなどの真実は結構衝撃的なんですけど、長時間読んできて持って来られる真相としては弱いかな。
淡々。
>>峰川幸介三世さま。
言われてみれば、石膏像の首の真実はけっこうショッキングですよね。でも読んでるときはさほど感じなかった。ちょっとこのあたりの、首にまつわる論理展開がややこしいので、悲惨さというか残酷さが目立たなかったせいでしょうか。
あと、巻末の貴志祐介氏との対談を先に読んだら駄目ですね。はっきりしたネタバレはしてないけど、真相につながるヒントを出しまくってる。そっちを先に読んじゃったのも、驚けなかった理由だと思います。

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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