闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

月別アーカイブ

検索フォーム

広告!

ブロとも申請フォーム

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
HP Directplus オンラインストア
comments(-)|trackback(-)|スポンサー広告|--------_--:--|page top

小説『大相撲殺人事件』小森健太朗

 有栖川有栖氏の『女王国の城』が小説部門の対象を受賞した第8回本格ミステリ大賞で、評論部門の大賞を取ったのが小森健太朗氏。その受賞記念座談会で、北村薫氏や綾辻行人氏が話題に挙げていたのを見て、興味を持ったのがこの作品。芥川賞作家絶賛の傑作ミステリ連作集……と言っちゃっていいの?という本。
大相撲殺人事件 (文春文庫)大相撲殺人事件 (文春文庫)
小森 健太朗

文藝春秋 2008-11
売り上げランキング : 333736

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 ひょんなことから相撲部屋に入門したアメリカの青年マークは、将来有望な力士としてデビュー。しかし、彼を待っていたのは角界に吹き荒れる殺戮の嵐だった!立会いの瞬間、爆死する力士、頭のない前頭、密室状態の土俵で殺された行司……本格ミステリと相撲、その伝統と格式が奇跡的に融合した伝説の奇書。(文庫裏表紙より)
 
 えーっと、まあ、概要を読んでいただけたら、どういった本なのかは大体理解していただけるかと。そういう本です。バカです。でも、バカミス、というのとはちょっと違うかな。奥泉光氏(本書を激賞し、北村・綾辻両氏に薦めた件の芥川賞作家。僕はよく知らないけど)による本文庫の解説で言及されていますが、このバカバカしさ、ナンセンスすれすれのくだらなさは、本格ミステリが本来持っているものを突き詰めた結果であり、ある種の極端さの表れではあっても、“バカミス”という言葉で言い表されるような、内輪ウケや楽屋落ちを狙った、ミステリ自虐ネタ的な身勝手な作品ではないのです。もっともその辺りのことは、僕なんかが語るより、奥泉氏の解説を読んでいただくとして。
 以下、いくつかの作品について簡単に紹介したいと思います。

 第一話「土俵爆殺事件」…日本文化を学ぶために来日したハワイ出身の青年マーク。しかし相撲部屋の『千代楽部屋』を「センダイガク」と読み違え、マークはそこを大学だと勘違いしたまま部屋に入門することになってしまう!そして入門早々、部屋所属の大関・暁大陸の取り組みで、対戦相手が爆死するという事件が……。
 立会いで両者がぶつかった瞬間に爆発が起き、片方の力士が死ぬという、実際にあったら笑えないけど、文字で読んだら思わずニヤけてしまいそうな事件。複雑ではないもののちゃんとしたトリックがあり、それに対する伏線もあるなど、短い作品ながらもきちんとミステリとしてのフォーマットを備えています。暁大陸が大関で、現役最強力士の一人であるという設定も重要で、そうでなければ事件の結果は少し違ったかもしれません。

 第三話「対戦力士連続殺害事件」…正式に角界入りしておよそ一年。マーク改め千代楽部屋の幕ノ虎は恵まれた素質を生かしてスピード出世を遂げ、新入幕を果たした。ところが、幕内力士としてのデビュー場所で、なぜか幕ノ虎の対戦相手ばかりが取り組み直前に行方をくらまし、死体となって発見される事件が相次ぐ。不戦勝が続いた結果、幕ノ虎は新入幕ながら十四勝無敗で千秋楽を迎え、横綱と優勝を争うことに……。
 十四日連続で力士が殺されるなんて、現実に起きたら大変なことですよ。相撲部屋に入門したがる若者なんて一人もいなくなるでしょう。この話はトリックどうこうというより、動機が問題になる作品なんですが、けっこう興味深いというか、実際のところ、こういう嗜好を持った力士はいるんじゃなかろうかとか、あるいはいたとしたら、その人の角界での居心地というのはどういうもんなんだろうというのが気になるところではあります。

 第四話「女人禁制の密室」…D県に完成した新国技館。その土俵上で安全祈願の儀式を行っていた神官が殺された。事件発生時、国技館内にいたのは女性だけであるが、土俵には女性は上がれない決まりがある、したがってこれは密室殺人だ、というのだが……?
 ある意味ではもっとも本格ミステリ的な事件。女性は土俵に上がれないから密室だという論理はむちゃくちゃで実効性ゼロですが(それは作品世界でも)、心理的タブーが人間の行動に及ぼす影響を考慮しながら事件の様相を捉える、というところが推理小説っぽいなぁと。けっこうお気に入りの作品。

 三話ほど紹介してみました。他にも「頭のない前頭」というシャレにもならない作品や「最強力士アゾート」という猟奇的な(?)作品、相撲界の裏側に隠された黒い歴史が暴かれる(!?)「黒相撲館の殺人」など、全六話。一話当たりの長さも短く、会話文が多いので、非常に軽く読めます。逆に言えば軽すぎるきらいがあるのが欠点かな。親方の娘でヒロインの聡子、探偵役のマーク、万年幕下の御前山などの登場人物のキャラ立ちもあまりよくなく、それぞれの関係性の描かれ方も物足りない感じ。
 それでも、相撲とミステリという取り合わせはそれだけでも面白く、作中の力士たちの姿を想像すると、現実の大相撲力士たちにも頑張ってほしいなぁという気持ちが自然と湧いてきたりして。特段相撲ファンってわけじゃないけど、やっぱり日本人、相撲に対して、何か潜在的に惹かれるものがあるのかなぁと思ったりしました。
ローウェル城の密室 (ハルキ文庫)ローウェル城の密室 (ハルキ文庫)
小森 健太朗

角川春樹事務所 1998-05
売り上げランキング : 402268

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

探偵小説の論理学―ラッセル論理学とクイーン、笠井潔、西尾維新の探偵小説探偵小説の論理学―ラッセル論理学とクイーン、笠井潔、西尾維新の探偵小説
小森 健太朗

南雲堂 2007-09
売り上げランキング : 205981

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

英文学の地下水脈―古典ミステリ研究 黒岩涙香翻案原典からクイーンまで英文学の地下水脈―古典ミステリ研究 黒岩涙香翻案原典からクイーンまで
小森 健太朗

東京創元社 2009-02
売り上げランキング : 580103

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

スポンサーサイト

Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

HP Directplus オンラインストア
comments(0)|trackback(0)|読書|2011-10-10_11:48|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

参加ランキング

クリック感謝!

NetShop

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。