闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『探偵はバーにいる』東直己

 2011年秋現在、全11作が発表されている東直己氏の代表作「ススキノ探偵シリーズ」の第一作。映画化されたのは二作目なので、本作は映画の原作ではありません。
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 バー〈ケラーオオハタ〉を根城にしているススキノの便利屋、俺。ある日、俺のもとに、大学の同じゼミの後輩だという原田という青年がやってくる。同棲している彼女が四日間も帰ってこず、何の連絡も無いから心配だという。俺は頼りなげな原田の態度に苛立ちながらも、ほっとけないものを感じて恋人・麗子を探す依頼を引き受けるが、調査を進めるうちに麗子がススキノのラブホテル〈ジョイ・シャトー〉で起きた殺人事件に係わっていた疑惑が浮上する。さらに俺の行く先々で絡んでくる、フェイクの革ジャンを着た不良少年たち。どうやら想像していたよりややこしい事件になりそうだ……。
 
 映画版『探偵はBARにいる』も好評の「ススキノ探偵」シリーズ第一作にして、東氏の作家デビュー作でもある本作。ややこしいけど、映画の原作は本作ではなくて、本作の次に出たシリーズ第二弾『バーにかかってきた電話』の方です。

 “ちょっと昔、風俗営業法が変わる前、「ソープランド」が「トルコ」と呼ばれ、エイズがアメリカのホモだけが罹る原因不明の奇病だった頃、俺はススキノでぶらぶらしていた。”

 章ナンバー〈0〉として、こんな書き出しで始まる本作。これだけ読んでも、映画版とはけっこう雰囲気が違うことが解りますね。
 ちなみに映画版のオープニングには、探偵のこんなモノローグが流れます。

 “人口190万。アジア最北の大歓楽街、札幌・ススキノ。俺はこの街のプライベート・アイ。そう、探偵だ。”

 映画は軽妙な減らず口が持ち味の〈探偵〉に引っ張られ、ポップでファンキーな雰囲気でしたが、小説はもっとずっとブルージーというか、物憂げで気だるい空気が漂っています。主人公の〈俺〉は常に酒を飲んでいて、アル中にならないのが不思議なほど。映画の大泉洋のような明るい軽妙さではなく、社会からはぐれた者ならではのザラついたアイロニィという感じです。
 映画では“相棒兼運転手”だった高田も、何人かいる〈俺〉の友人の一人という扱いです。〈俺〉は北海道大学を中退しているという設定で年齢が28歳、高田は大学院の博士課程を今度の3月で卒業するという設定のようだから、二人は大学の同級生とか、同級じゃないにしても、大学時代に知り合ってるんでしょう。映画では高田は農学部の助手だったけれど、こちらでは文系学部っぽい。

 ストーリー的にはけっこうご都合主義的な感じもあるし、ミステリとしては整合性が危なっかしいところも気に掛かりますが、人物描写は非常に巧みだし、独特のブルージーな文体は、これがデビュー作とは思えないほど完成されています。特に、バカな人間のバカさの描写がとんでもなく上手い。こんなにバカをバカっぽく描いた小説は、滅多にないんじゃないでしょうか。発表時期は原りょう氏の沢崎シリーズと近いと思いますが、それとはまた違う雰囲気。どちらかといえば大沢在昌氏の『感傷の街角』など佐久間公シリーズに近い雰囲気ですが、佐久間公ほどスタイリッシュでもなく、やっぱり気だるくて、どことなく野暮ったい。それは1980年代前半の札幌という舞台が関係しているかもしれません。
 どこか世捨て人的な投げやりさがありつつ、文学や音楽に対する造詣の深さがあって知的。そんな〈俺〉のキャラクターは、かなり個性的で、複雑な魅力があります。北海道大学中退で、萩原朔太郎を引用し、水代わりのように酒を呑み、やくざを挑発し、不良少年を容赦なく叩きのめしながら、相手の学歴を揶揄したことへの後悔をずっと引きずり、相手を傷つけた言葉に自分も傷つく。そんな高い知性とナイーヴな感性を併せ持った〈俺〉の魅力で読ませる、そんな作品ですね。



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Theme:推理小説・ミステリー
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comments(0)|trackback(2)|読書|2011-10-28_22:39|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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