闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『密室殺人ゲーム王手飛車取り』歌野晶午

 新本格推理の雄、歌野晶午氏。常にミステリの極北に挑み続ける著者の、渾身の怪作。
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 ネット上のビデオチャットで推理クイズを出し合う5人のミステリマニアたち。しかしここで出題されるクイズはすべて、出題者自身の手によって現実に実行されている事件なのだ……。
 素顔を隠して推理クイズに興じる5人が行き着く、驚愕の真実を目撃せよ!
 
 まずはじめに、5人の登場人物を簡単に紹介しておきましょう。5人はそれぞれ特徴的なハンドルネーム(HN)を用い、またコスプレやその他の方法で素顔を隠しています。その背景についてはもちろん作品を読んでいけば解説はされるのですが、多少は事前に知っていたほうが、いくらか読みやすくなると思いますので。

 〈頭狂人〉…本作の主人公。映画『スター・ウォーズ』のダース・ヴェイダーのマスクを被っている。HNの由来はもちろん「東京人」。
 〈044APD〉…無口で声が小さく、愛想もない。コスプレはしてないが、カメラに映る顔はいつももやがかかったように不鮮明。HNの由来は『刑事コロンボ』の主人公の愛車のナンバー。
 〈aXe〉…映画『13日の金曜日』のジェイソンのようなホッケーマスクを被り、おもちゃの斧を手にしている。常に丁寧語で話し、一人称は「ワタクシ」。HNは「斧」を意味する英単語。
 〈ザンギャ君〉…コスプレはせず、チャットの際はカミツキガメを映している。粗雑な言葉遣いで、一人称は「オレ様」。HNは「残虐」+「君」=〈ザンギャ君〉(「残虐ん」)。
 〈伴道全教授〉…黄色い髪のカツラに瓶底のようなグルグル眼鏡、青いつけ髭剃り跡にだぶだぶの白衣。HNの由来は20世紀初頭のアメリカ人作家ジャック・フレットルの作品に登場する天才探偵オーガスタス・S.F.X.ヴァン・ドゥーゼンから。

 こんな感じ。本名も素顔も年齢・性別も一切不明のこの5人のミステリマニアが、ネットのビデオチャットを通じて会話しながら、推理クイズを出し合う。物語の基本フォーマット自体は、そんな他愛のない設定。ただひとつ、そのクイズの題材となる事件が、すべて出題者によって現実に実行されている点を除いては。

 「殺したい人間がいるから殺したのではなく、使いたいトリックがあるから殺してみた」

 このクイズに参加する5人は、純粋に推理クイズを愉しむ、ただそれだけの目的のために、平然と人を殺します。この身も蓋もないほどの割り切りのよさは、フィクション上の殺人に動機なんて必要ないということを如実に物語っていると思います。
 そもそも、どんな理由があったとしても「人を殺していい」ということにはならない。どんな動機も殺人を正当化することはない以上、殺人を犯すに足る、納得のいく動機なんて存在しないわけです。だから、そんなありもしない動機のために頭を悩ますくらいなら、これぐらいさっくりと割り切ってくれた方が爽快です。本格ミステリの醍醐味は、あくまでも不可思議な謎と、それが解明される面白さにつきる。そういう意味で、本作はまさに本格ミステリの醍醐味をぎゅっと抽出・濃縮した作品と言えます。しかも、5人が順繰りに問題を出し合う形で合計7問のクイズが出題され、そのなかでは密室、アリバイ、ミッシングリンク、消えた凶器、死体移動トリック等々、あらゆる本格ミステリのパターンを楽しむことが出来るのだから、これが面白くないわけがない。
 それぞれのメンバーが出す問題はそれぞれ独立した短編と捉えることが出来ますが、ある問題を解いている間に誰かが取った行動が、後にその人物が出題する問題の伏線となっていたりするので、連作短編集のようでもあり、ひとつの長編小説とも取れます。長編だと思うとけっこう分厚い本なので読むのが大変そうですが、短編集と捉えると、一編一編は軽快な作品なので、わりとサクサク読めるかも。一冊全体を貫く意外な仕掛けというか趣向も凝らされていますし、それに絡んで終盤はちょっと予想外な展開もしたりして、最後まで唸らされることは請け合いです。

 いやぁ、これは面白かった。この作品の面白さを僕の拙い文章力で伝えるのは難しいのですが、とにかく、僕が今まで読んだ歌野氏の作品の中ではダントツの面白さでした。歌野氏は本作の続編『密室殺人ゲーム2.0』で第10回本格ミステリ大賞を受賞し、史上初めて同賞を二度受賞した作家となりました(一度目の受賞作は『葉桜の季節に君を想うということ』)。さらに第三弾『密室殺人ゲーム・マニアックス』も発売されているようで、シリーズの勢いはまさに留まるところを知らずという感じ。これは続きもぜひ読んでみたいです。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(2)|trackback(2)|読書|2012-03-30_03:11|page top

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密室殺人ゲーム王手飛車取り*歌野晶午
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昨日読み終えました
ネット社会の不透明さと実際に起きている事件、リアルの交錯が素晴らしいですね。特に終盤で登場人物たちのリアルな姿が垣間見れたのも、収まるべきところへ収まっていく流れが秀逸。
ただ、最後は全部回収しないまま終わりましたね。これで続編がどう始まるのかも楽しみです。

今すぐでも感想を書きたいけど、仕事が忙しくて上げれるかなあ(汗。
お疲れさん。
>>峰川幸介三世さま。
面白かったでしょ?
「あげれるかなあ(汗。」って書きながらもう上げてるんだもん(笑)

続編が出てるってことは、あのラストは上手く収束したんでしょうね。
最後には5人が顔を合わせますが、彼らの素顔についてもじつは作中でちゃんと伏線があるんですね。そういうところまで用意周到なのはさすがです。トリックの見本市のような内容といい、本格好きは絶対はまる作品ですね。

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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