闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『刺青白書』樋口有介

 柚木草平シリーズの四作目。柚木を脇役に回し、シリーズ中で唯一、三人称で描かれた、シリーズの番外編的な作品です。
刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)
樋口 有介

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 女子大生・三浦鈴女は、中学時代の同級生が相ついで殺害されたことに衝撃を受ける。彼女たちは二人とも、右肩に刺青痕があった。刺青同様に二人が消したかった過去とは何か。第一の、アイドル殺害事件のレポートを依頼された柚木草平は、鈴女たちの中学時代に事件の発端があるとみて関連性を調べ始めた――。(文庫裏表紙より)
 
 最近、読書ははかどるんだけど、blogに書くのが全然追いつかない。色々、読んでるんですけどね。

 今回は柚木草平シリーズの番外編的一編。主役はあくまで女子大生のスズメちゃんで、柚木は彼女の存在――特に“若さ”を引き立てるための脇役です。といっても、入り組んだ事件の謎を解き明かすのは、ほとんど柚木の役割なんですけどね。

 事件そのものの真相はかなり悲しい話で、過去のシリーズ作品と比べてもきわめて苦々しい結末です。ですが、真犯人が犯行の動機やその顛末を語るシーンの、その情景や人物の表情などの描写がむちゃくちゃ上手くて、思わず入り込んでしまいました。
 若いがゆえに無軌道であったり、投げやりになってみたり、他者を省みない残酷な振る舞いをしてしまったり、しかもそういうすべてのことに対して、徹底的に無自覚だったり、そんな“若さ故の至らなさ”がとことん痛い、そんな話です。一方で“若くない”登場人物たちはというと、多少神経が図太くなって、嫌な出来事の受け止め方(あるいは受け流し方)が上手になったりはしても、本質的に知性のないやつはどうしようもなく、また知性があったらあったで、長く生きれば生きた分だけの汚れや屈託を背負い、重い足取りで生きている。このシリーズすべてに共通することですが、「若いことはいいことだ」と単純に言うこともないし、かといって歳をとることを変に美化して肯定したりもしない。ただ、生きることの“理不尽な面倒くささ”みたいなものを淡々と描いています。
 そして、若いスズメを主人公にした効果は、そんな淡々とした描写が、身も蓋もない理不尽な現実を受け容れていく力強い生き様みたいなものを際立たせているところ。生きることや人と繋がることを逆説的に肯定していく、そんなひねくれた清清しさを感じます。

 シリーズで初めて三人称の文章と、柚木以外の人物の視点が導入されたことで、柚木草平という男のイメージがが今までよりも多面的に読み取れるようになっているのは、シリーズ読者としては注目すべきところ。本作を読む限り、柚木は外見的にも内面的にも、思っていたよりも二枚目らしい。ちょっと悔しい。
 それにしても、作を重ねるごとにどんどん物悲しく、重たいハードボイルドに進化してきているこのシリーズ、爽やかで軽妙なコミカルミステリーだった一作目とは、実はだいぶ変わってしまっています。一作一作は面白いからいいんだけど、もう少し軽やかで、粋な柚木の物語を読みたいな、とも思ったりしますね。
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comments(0)|trackback(1)|読書|2012-06-05_00:58|page top

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 柚木草平シリーズの四作目。柚木を脇役に回し、シリーズ中で唯一、三人称で描かれた、シリーズの番外編的な作品です。刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)樋口 有介 東京創元社 2007-02-21売り上げランキング : 206761Amazonで詳しく見る by G-Tools 女子大生・三浦鈴?...

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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