闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『二枚舌は極楽へ行く』蒼井上鷹

 『九杯目には早すぎる』でデビューした著者の第二作品集。人生の苦味にブラックな笑いをブレンドした、5つの短編と7つの掌編たち。
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 蒼井上鷹氏の第二作品集。事件が起きて、それを探偵役が解決するといったオーソドックスなミステリではなく、厄介な事件やトラブルに巻き込まれた当事者が、事態を打開しようともがくうちに意外な真相に行き当たり、しかもその真相が自分たちにとってかなり都合が悪くて身動きに困るという、かなり捻くれてブラックな物語ばかりが収められています。このブラックさが、なんとも言えず面白くて、クセになるんだな。
 
 「野菜ジュースにソースを二滴」…妻の玉恵を車の事故で亡くした沼村は、事故の前夜に一緒に飲んでいた俺たち三人を集め、こう告げた。「お前たちの誰かが玉恵を殺したんだ。さっきのジュースに毒を入れたから、犯人は三十分以内に自白しないと、毒が回って死ぬぞ――」
 ツイストにツイストを効かせた展開で、一瞬たりとも息が抜けない作品。これは芝居で観たら面白そう。あまりに捻りすぎたプロットのため、結局のところ誰が悪かったのか、なぜ玉恵は死ななければならなかったのかが一瞬わからなくなるのが欠点といえば欠点かもしれませんが、最終的に関係者の誰もが損をする、逃げ道のない結末に転がっていく展開は見事。この救いのない結末を「面白い」と思っちゃうのは、やっぱり「人の不幸は蜜の味」的な感覚かなぁ。

 「待つ男」…ショットバー〈レニ〉に現れた中年男。若き日に同じ役者の夢を追った友人と、十七年前にこの店で交わした約束を果たしに来たのだと言う。二人の十七年ぶりの再会は実現するのだろうか。話を聞いた〈レニ〉の常連客たちが見守る中、夜は更けていき……。
 『九杯目には早すぎる』にも登場したショットバー〈レニ〉を舞台にしたお話。事件が起きるわけではなく、しかし最後には驚愕の結末がある。まあ一種の叙述トリックと言えますか。お酒が介する、ちょっぴりドラマチックな人間模様。作者はブラックな話だけじゃなくて、こういういい話も書けるんだということが解ったし、もっとこういうのを読みたいと思わされますね。

 「二枚舌は極楽へ行く」…和代から垂水に電話がかかってきたのは、盆休み明けの午後三時ごろ。夫の稲井と連絡が取れず、会社に掛けたのだという。しかし稲井は半年以上前、和代に内緒で会社を辞めていた。携帯の呼び出しにも、稲井は一向に応答しない。そして翌日の午後、稲井が他殺体で発見されて――。
 結末がブラック過ぎる。ちょっとシュールなほど珍妙な殺人計画が描かれ、そんな上手く行くかいなという感じもありますが、それよりなによりラストの逃げ場のなさに唖然。主人公たちに同情したくなります。器の小さい人間が、小物ゆえに窮地に陥る話で、こういう話を書かせると本当に蒼井氏は天下一品ですね。

 などなど。その他、短編が二編、掌編が七編。それぞれの作品が緩やかに繋がっていて、登場人物や舞台となる場所を共有していたりするのも蒼井作品の面白さですが、かといって連作短編のように全体で何か、一つのテーマを形作っているというわけではありません。あくまでも緩やかな、横の繋がりです。
 本書は全体的に、前作以上にブラックな感じが強くなった気がします。とにかく登場人物みんなが損をする、取り返しのつかない失敗をする、出来れば墓場まで持って行きたいような秘密が露見するなど、ぜんぜんいいことがない。でも、ツイてない時というのはこういう感じだろうなぁという、転がり落ちていく過程にすごく説得力がある。それは会話シーンの書き方が上手くて、登場人物のキャラクターが立っているから余計にそう感じるんでしょうね。
 ブラックでビターでシュール。サクサク読めるけど、結末は結構痛々しく、登場人物のツキのなさや器の小ささに、身につまされる部分あり――。そんな短編ミステリを量産する蒼井上鷹ワールド。これははまりそうです。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(0)|読書|2012-10-05_03:38|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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