闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『夢の終わりとそのつづき』樋口有介

 柚木草平、三十五歳。刑事をやめて八ヶ月、まだ「刑事事件専門のフリーライター」ですらない、ただの失業者だったころの事件を描いた、シリーズの原点といえる物語。
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 警察をやめて八ヶ月。知り合いのつてで時たま雑誌に寄稿するぐらいで、実質的にはただの失業者と言って差し支えない俺・柚木草平のもとに、絶世の美女が訪ねてきた。久我山の高級住宅地の、とある家から出てくる男を、一週間尾行する。そんな簡単な仕事に、法外なほど高い報酬を払うという。何かの罠かといぶかしみながらも、とびきりの美女に頼まれた仕事を断れるわけもない。俺はさっそく翌日から尾行を開始する。問題の家から出てきた男は、行く先々でビールを飲み、やたら菓子を食い散らかしながら、半日かけて山手線半周分を徒歩で移動した。その間、誰と会うわけでもないのだから、まるでわけが解らない。翌日も男の動きはほとんど同じ。しかし三日目に異変は起こる。男が公園のトイレで死んだのだ。しかも解剖の結果、男は胃も腸も空っぽだったという。直前まで飲み食いしていた男に、いったい何が起こったのか?
 
 生きていることが嫌になったら、柚木草平シリーズを読むといい。人生の無意味さを確信して、生きていることがもっと嫌になる。そしてとことん嫌になり果てたら、そのうちにきっと、諦めがつく。人生に意味があろうがなかろうが、生きていれば腹が減って、飯を食えば眠くなる。眠って起きたら朝がやってきて、太陽は常に東から昇る。そうやって日は巡り、時間をすごせば、意味のある人生もない人生も、相応の疲れと憂鬱を背負いこむ。それでもいい女を見れば無意識が反応するし、そんな自分に嫌気が差しながらも、いい女と過ごす穏やかなひと時を夢想するだけで、死にたいほどの憂鬱もいくらか和らいでくれる。人生なんてそんなものだし、おそらく、それでじゅうぶんなのだ。

 さて、柚木草平シリーズの第五弾です。もっとも、創元推理文庫での刊行順では五冊目ですが、親本の刊行順では『誰もわたしを愛さない』の方が本書よりも先に出ているようですが。とはいえ、本作は柚木草平シリーズのエピソード・ゼロとも言える、作品世界の時系列でいえばいちばん過去にあたる物語なので、シリーズの刊行順で何番目とかいうことは、大して問題ではないのですが。
 作品の内容ですが、尾行していた男が理解に苦しむ死に方をしたことから、柚木はその真相を探るために動き出します。その過程で、柚木が警察を辞める原因となった過去がかなり詳細に明かされるのは、シリーズ読者としては興味深いところ。また、柚木の調査パートナーとして、行きつけのスナック『火星人の罪』のオーナー・夢子という女性が出てきますが、彼女の外見は『木野塚探偵事務所だ』に出てくる梅谷桃世を彷彿とさせます。彼女の体型に対する柚木の感想は、木野塚佐平氏の桃世に対するそれと似たようなもの。どうやら樋口作品の主人公はグラマーな女性が好みなようです。一方で作者自身は『刺青白書』のヒロイン・三浦鈴女を「いつでも嫁にもらってやる」と言っていますし、スレンダーでボーイッシュな女の子が好きなのかもしれません。
 謎解きのほうは、途中エイリアンが出てきたりしてSFじみた展開を見せますが、最終的には何とか科学的・合理的な結末に落ち着きます。この型破りな話の展開には批判もあるみたいですが、もともと謎解きを楽しむというよりは、柚木と美女たちの会話を楽しむのがこのシリーズの魅力、あまり目くじらを立てるものでもないかと。
 本作では、柚木が珍しく本気で恋をしたり、シリーズでは初めて、本格的なベッドシーンがあったりと、従来のシリーズとは一味違った部分もありますが、人生に疲れながら、気障で芝居がかった台詞を吐き、やたらと女にもてる柚木らしさも全開。作品の成立事情からも(これは本文庫あとがきに詳しい)、作中の設定からも柚木シリーズの原点といえる作品なので、シリーズファンは必読の一冊でしょう。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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