闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦

 『塗仏の宴』に続く、京極堂シリーズ七作目。信州の旧華族の邸宅で繰り返される、花嫁殺害事件の真相とは……?
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 信州・白樺湖畔に、通称「鳥の城」と呼ばれる巨大な邸宅がある。この家の当主である旧伯爵・由良昂允は、これまでに四度、婚礼の晩に妻を亡くすという悲劇に見舞われていた。この度五人目の花嫁を迎えることとなった昂允は、花嫁の命を護るため、探偵の榎木津礼二郎を呼び寄せた。榎津の付き添いとして由良家にやってきた小説家の関口巽は、昂允とその婚約者・薫子と出会う――。

 京極夏彦公式ブログ
 
 長い、分厚いで有名な京極堂シリーズ。今回、個人的には初めて分冊版を購入しましたが、上・中・下巻合わせて千二百頁ぐらいです。それでも、前作、前々作と比べれば短いですし、登場人物も少なく、舞台も時間軸もコンパクトになって、かなり読みやすくなっていると思います。このシリーズは前作までの三作(『鉄鼠の檻』『絡新婦の理』『塗仏の宴』)が、その前の三作(『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』『狂骨の夢』)のテーマをさらに深化させていくような内容だったため、発表順に読んでいかないと解りにくい部分がありましたが、本作は過去のシリーズ作品を読んでいなくても入りやすそう。そういう意味で、このシリーズは本作から、また新たなフェーズに入ったと言えます。

 本作のキーワードは「死」です。死ぬというコトはどういうコトか。ただひたすら、それを巡って物語が展開していると言っていいと思います。
 京極堂シリーズではいつもそうですが、謎解きや犯人探しが主眼の小説ではありません。本作でも、一応推理小説のようなカタチはしていますが、犯人は最初からほとんど判りきっているし、特別なトリックなどがあるわけでもない。本作で重要な問題となるのは“なぜ花嫁は殺されるのか?”、つまり「動機」です。事件関係者に、花嫁を殺して特をする人間はいない。それでも花嫁は必ず殺されてしまう。なぜか?その理由を、おそらく多くの読者はうっすらと想像できているはずなのですが、それでも京極堂によって真実が明らかにされたとき、あまりのことに驚愕し、呆然とすることでしょう。こんなことがあり得るのか、と。
 もちろん、この小説は壮大な虚構です。現実には、この小説のようなシチュエーション自体が存在しえないはずだから、こんなことは絶対にありえないでしょう。ですが、もしこの小説で描かれるようなシチュエーションが存在したら。こんなあり得ない悲劇も、起こり得るのではないか。京極堂の雄弁な語りを読まされると、そういう気になってきます。死というものは、我々が生きている限り絶対に体感できない。死が本当はどういうことなのかを誰も知らない。当然、死者に尋ねることもできない。だから死ぬというコトを、僕たちは本当には理解していない。その無理解が究極に仇を為した結果の悲劇は、なにも小説の中だけではないのかも。ニュースや報道で見聞きするいじめや虐待などは、死を分かっていないがゆえの悲劇なのかも。

 哲学や宗教や歴史や民間伝承、時には心理学や物理学に至るまでの膨大な知識と薀蓄を得られるところもこのシリーズの魅力ではありますが、本作はその部分やや控えめです。それでも、儒教についてや死者の弔い方について、そしてハイデッガーの思想についてと、普通の小説ではまず取り上げられない知見を提供してくれます。読みやすさ、理解のしやすさからいって、知識の提供量はこれぐらい適切かとも思います。そして、難解で深遠な内容を扱いながら、読み始めたら止まらない吸引力。読んでいる最中の異様な知的興奮と読後の圧倒的な満足感は、やはり出色です。やっぱりこのシリーズは面白いわぁという思いを強くしました。また次の作品も、読まなきゃな――。
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Theme:推理小説・ミステリー
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comments(0)|trackback(0)|読書|2012-09-03_19:12|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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