闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『地獄の奇術師』二階堂黎人

 新本格系ミステリ作家、二階堂黎人氏のデビュー作。資産家の家庭を襲う恐ろしい連続殺人事件の謎に、聡明な女子高生、二階堂蘭子が挑む!
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 東京都国立市にある実業家の邸宅。《十字架屋敷》と呼ばれるその邸宅の周囲では、最近顔中を包帯で覆った、奇妙な男が目撃されていた。私・二階堂黎人と蘭子の兄妹は、友人で《十字架屋敷》の住人である暮林英希とともに、この包帯の男に遭遇する。男は自らを《地獄の奇術師》と名乗り、復讐のために暮林家の人間を皆殺しにすると告げた。男の後をつけた私たちは、林の中の防空壕跡で殴られ気を失ってしまう。そして目を覚ました私は、《地獄の奇術師》が行うおぞましく凄惨な行為を目撃する!
 


 黒田研二氏との共署である「キラー・エックス」シリーズを除くと、二階堂作品は初読。二階堂黎人というと、いわゆる〈新本格〉派の作家の中でも重鎮のイメージがあったのですが、本作でデビューしたのが平成四(1992)年と意外と遅い(綾辻行人が『十角館の殺人』でデビューした1987年が〈新本格〉の始まり)というのを本書を読んで知りました。平成四年といえば綾辻氏の『時計館の殺人』よりも後で、我孫子武丸氏の『殺戮にいたる病』や有栖川有栖氏の『双頭の悪魔』と同時期です。〈新本格〉ムーヴメントの最初期にデビューした作家たちが、彼らの最高傑作と呼ばれる作品を次々とものにし、ミステリ文壇での〈新本格〉派の評価を揺るぎないものにしつつあった、そんな時期でしょう。二階堂氏が綾辻、有栖川、法月、我孫子といった〈新本格〉第一世代の作家たちとやや距離があるような気がするのは、関西と東京という居住地の違いもあるのでしょうが、このデビュー時期の差も関係しているのかもしれません。

 さて、本書『地獄の奇術師』の内容ですが、まず時代設定が昭和42年というのが特徴的です。個人的に、昭和40年代前半を舞台にした小説というのは読んだことがありませんでした(『アルキメデスは手を汚さない』の舞台が昭和47年なのでいちばん近いですが、それでも5年の開きがあります)。僕が本作に若干の読みにくさを感じた理由の大部分は、この時代設定にあるような気がします。
 作者自身、「江戸川乱歩がミステリ作家・二階堂黎人の生みの親」と語っているそうで、本作の内容も乱歩テイストに溢れています。犯人として描かれる《地獄の奇術師》の奇怪な姿といい、作中で描かれる事件の猟奇性(特に洞窟内での残虐行為の描写はエグイ!)といい、おどろおどろしく怪奇的な描写がふんだんにあります。
 ただ、雰囲気は抜群にいいのですが、推理小説としての評価としては微妙。トリックが凡庸で、犯人にも意外性がない。奇怪なムードの盛り上げが素晴らしいだけに、トリックの凡庸さが際立って、小説の面白みをそいでいると思います。また、キリスト教徒の信仰に根ざした動機はわかりにくく、犯人にも被害者にも共感できない。女子高生である蘭子が、大人も理会に苦しむような奇怪な犯人の心情を解明できることも、蘭子が天才である点を割り引いても納得感に欠ける。そういった点は推理小説としての魅力を低減させる短所だと思います。
 ただ、キリスト教に限らず、〈新本格〉の作品で伝統的宗教が描かれることは意外と少ないで、事件の動機を含め、キリスト教の信仰が深く描かれている点は興味深く読みました。クライマックスの犯人との対決シーンは、ホラー・アクションのような趣で、映像的な迫力も感じます。

 古きよき欧米の〈本格〉の再現を志向するという方向性は同じながら、従来の〈新本格〉派の作家とは一味違う作風の二階堂氏。初めて読みましたが、他の作品も読んでみたいと思わせる魅力は充分にありましたね。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(2)|trackback(0)|読書|2012-12-21_20:55|page top

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おっ読めたね
貸しておきながら内容はほとんど覚えていないのですが、トリックや事件の真相としてはそれ程インパクトのある話ではなかったですかね。この作品に限らず、二階堂蘭子のどこか機械じみた完璧さはあまり好みではないです。とは言え何作か読んでいると言う事は、お話自体は批判しながらも好きなんだなと改めて思ったりしてます。
読んだぜぇ
>>峰川幸介三世さま。
トリックというほどのトリックはなかったですね。そのことがいちばんガッカリでした。乱歩的な雰囲気は嫌いじゃないんですけどね。
二階堂蘭子と父の二階堂警視正の設定はエラリー・クイーンに倣ったものでしょうけど、同じクイーン模倣の探偵親子なら、法月警視と綸太郎の親子漫才の方に、はるかに好感を持ちますね。まだ本作を読んだだけでは蘭子のキャラクターは良く伝わってこないですが、そんな完璧な人なんですか?だとしたら、ちょっと感情移入しづらそうですね。

プロフィール

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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