闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『もつれっぱなし』井上夢人

 井上夢人氏の短編集。すべての作品が、一組の男女の会話文だけで構成されているという異色作品集です。
もつれっぱなし (講談社文庫)もつれっぱなし (講談社文庫)
井上 夢人

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 六編の短編が収録された本書。どの作品も男女の会話だけで描かれているのは先述のとおりですが、その会話によって繰り広げられるストーリーも、ある一定のフォーマットに則っています。男女どちらか一方(ほとんどは女性の側)が何か突拍子もない、にわかには信じがたいような状況を告げ、もう一方がそれに困惑しながら、なんとかそれを否定しようとしたり、あるいは徐々に受け容れていったりする、その過程を描いていくというストーリー。こう書くとなんでもないように思えますが、地の文で登場人物の内面を描くことができない中で、二人の置かれたシチュエーションや状況への理解の度合い、相手の言い分を信じるかどうかといった心の動きを会話文だけで描ききっているのは、すごい技術だと思います。
 


 「宇宙人の証明」…仕事を休んだ恋人を心配して訪ねてみたら、彼女は「宇宙人、みつけたの」ののたまって……!?
 短編集の冒頭を飾る一編。この短編集に収められた作品がどういうものかを示す意味では、充分にその役割を果たしているといえます。ただ、読者に「面白そうだな」と期待させなければいけない短編集の冒頭作品としては、ちょっとすっきりしないかな、という気も。結局、「宇宙人をみつけた」と言い張る彼女を、彼氏が(彼女の自尊心に配慮しつつ)どうにか言いくるめたという結末で、宇宙人の存在あるいは不在自体がタイトルのように証明されることはなく、平行線の議論がどんな結末に行き着くのか、想像を超えるような華麗な着地を期待した割には少し拍子抜けというのが正直な感想です。

 「呪いの証明」…火事で死亡した上司の葬儀を終えて、ようやく人心地ついたとき、彼女がとんでもないことを言い出す。「あのね、呪い殺したの、あたし」――!
 「あたしが呪い殺した」と主張する彼女に対して、なんとかそれを否定しようとする彼氏、という構図。最終的に彼氏が明らかにする、意外な事実にびっくり。具体的な根拠が示されるので、証明としてはいちばん納得がいく結末でした。ただ、呪い殺した相手のことを死んで当然だの、殺したことに後悔も罪悪感もないだの、酷い言いようで、そこは共感できないなぁ。

 「嘘の証明」…職員室に呼び出された生徒。彼女が万引きをしたことをとがめる教師に対し、生徒は「やってない」と主張する……。
 会話文だけ、という小説の構造を利用し、意外な結末を用意した逸品。こいつぁやられた。途中の教師と生徒の会話では、生徒の言い分を親身に聞く教師の姿勢に、最初は反発していた生徒が徐々に心を開いていき、ちょっとした学園青春ドラマのような展開。ともすれば感動しちゃいそうなほどだったんですが、最後にアッといわせるオチを持ってきてひっくり返してしまう。でも、案外誰も損しない結末で、読後感はいいかも。

 その他、時空を超えた祖父と孫の会話を描く「四十四年後の証明」、満月の夜に狼男に変身してしまうと恐れる人気歌手をマネージャーがたしなめる「狼男の証明」、自分は幽霊だと主張する恋人が生存していることを証明しようとする「幽霊の証明」の合計六編。全体的に女性が変なことを言い、リアリストの男性が困惑するという話が多いです。おかしな主張をさも解りきったことのように言う女性も女性ですが、それをうける男性のほうも、ちょっと読んでるこっちがイライラするぐらい融通の利かないリアリストで、これは小説の構成上仕方ないのかもしれませんが、登場人物はやや魅力に欠ける気がします。作品としても、予想を裏切られたり、予想の範囲内でも感動があったという作品は全体の半分ぐらいで、残りの半分は「なんだかなぁ」で残尿感がありました。
 井上夢人氏は寡作な作家ですが、そのぶん一作ごとに違ったチャレンジを試みる作家でもあります。だから読んでみないとどんな作品か判らず、読み手は常にワクワクさせられる。結果として今回は少し期待とはズレてしまいましたが、今後も色々な作品を読んでいきたい作家さんですね。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(1)|読書|2012-12-26_04:11|page top

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『もつれっぱなし』
井上夢人 『もつれっぱなし』(文春文庫)、読了。 amazonでは評価が高いようですが、 私はダメでした・・・。 証明を要求する側の言い分が、何とも不合理な気がして。 「よくこ

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
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