闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『幻惑密室』西澤保彦

 SF新本格という独特なジャンルを疾走し続ける、西澤保彦氏。超能力者問題秘密対策委員会、略して〈チョーモンイン〉シリーズ最初の長編。
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西澤 保彦

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 会社社長が自宅で殺害された。事件当日、社長の家には四人の若手社員が新年会の名目で集められていたが、事件発生時、彼らはどういうわけか家から一歩も外に出ることができず、電話もできない状況に陥っていた。しかも彼らは、実際には一時間しか経過していないにもかかわらず、家の中に半日も閉じ込められたと感じていた。この奇妙な状況を引き起こしたのは、言葉によって相手に強力な暗示をかける〈ハイヒップ〉という超能力なのだという。〈チョーモンイン〉の神麻嗣子(かんおみつぎこ)から相談を持ちかけられた推理作家の保科匡緒(ほしなまさお)は、捜査を担当する能解(のけ)警部とともに、この奇妙な事件の謎に迫る。
 


 西澤作品を読むのは『七回死んだ男』に続き二度目ですが、正直、読む前は少し見くびってました。『七回~』で、マンガ的に極端な登場人物の描写や、そういう人たちが織り成す愉快じゃない人間模様のドラマにあまり好感を持てなかったところに、本書の表紙の、いかにも萌え系アニメのようなイラスト。あざとい“萌え”の押し売りも好きじゃないし、これはまた読むのに少々、根気が要る話かなと。ところがそんな予想は見事に、良い方に裏切られました。すげー面白いです、これ。

 まず、超能力によって作られた密室というSF設定がある。ここで、その超能力に関してきわめて精細に、できること、できないことが規定されています。この緻密な設定で推理小説としての枠をきっちりはめた上で、その枠からはみ出すことなく、論理的に事件の謎が解かれる。これぞSF新本格。そんな謎解き、パズラー小説としてもかなりのハイクオリティを持ちながら、本作は登場人物の造形や主人公の語りにも深みや味わいがあって、一個の物語としてもとても魅力的です。
 超能力による強烈な暗示効果が幾重にも重なる謎解きの部分は、その内容や有効時間の関係などかなりややこしいですが、破綻はありません。嗣子の用意したタイムテーブルが作中にも掲載されているので、適宜それを見ながら読めば、かなり解りやすくなるでしょう。
 表紙のイラストに描かれている神麻嗣子は典型的な“萌えキャラ”ですし、事件関係者の中には「いくらなんでもこんな奴、現実にはいないだろ」と思うような極端にデフォルメされた人物も出てきます。ですが、小説が保科匡緒の目を通した語りで描かれているため、そういう極端なキャラクターの「あざとさ」が薄められて、うまく小説の中でバランスが取れています。語り手である保科匡緒は、いちおう小説家というだけあってけっこう知的で、人間観察に優れた人物です。離婚を経験した彼が、ジェンダー問題に悶々と悩んだりしている様子は、同性として共感できる部分がかなりありました。
 もう一人のレギュラーキャラ、能解警部は、本作だけではまだ、どんな人間性なのか測りかねる部分もありますが、優秀な刑事で、容姿も頭脳もハイレベルで隙がないように見えて、時折見せるしおらしさに女性らしさが垣間見えて、可愛いです。

 本作の初出は1998年だそうで、この〈チョーモンイン〉シリーズは今も続いているみたいですから、2013年現在、全部でいくつなのかは知りませんがかなりの数が出ている模様です。第一長編となる本作は大変面白く、西澤保彦という作家の印象すら少し変わったほどなので、続きの作品もぜひ読んでみたい。本格推理系では久しぶりに、ずっと追いかけたいシリーズに出会えました。新年一発目に、上機嫌で記事をアップできるのが嬉しい。
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西澤保彦 『幻惑密室』 感想
幻惑密室―神麻嗣子の超能力事件簿 (講談社文庫)西澤 保彦 講談社 2003-06売り上げランキング : 263686おすすめ平均 《神麻嗣子》シリーズの第一長編そうなんだけど長編を支える程のアイ

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気に入ってくれたようで何より
とは言ってもやはり内容はあまり覚えていないんだけど、過去の自分の記事を見てみると、人物描写について褒めていますね。確かに漫画的な表紙とコメディタッチ全開っぽいあらすじの割には、決して推理小説という体から逃げるような作りでは全くなかったという記憶はあります。
上手く第一作で気に入ってくれたようなので、次作以降も読む事を推奨します。とは言え私も三作くらいしか読んでないのでこちらも読まねば。
気に入りました。
>>峰川幸介三世さま。
ここ最近読んだ中ではいちばんのヒットでした。たいそう楽しく読ませていただきました。記事中にも書きましたが、漫画的なキャラクターを語り手の保科がうまく中和している感じで、内省的な保科の独白とうまくバランスが取れています。
シリーズは短編・長編織り交ぜて、けっこう続いているようですね。続きも読んでいきたいです。機会があったらというような消極的なものではなくて、積極的に。

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Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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