闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『『クロック城』殺人事件』北山猛邦

 新世代本格ミステリの雄・北山猛邦氏の、第5回メフィスト賞を受賞したデビュー作。世界の終末が近づく中、狂った磁場が支配する古城で起きた連続殺人の真相とは?
『クロック城』殺人事件 (講談社文庫 き 53-1)『クロック城』殺人事件 (講談社文庫 き 53-1)
北山 猛邦

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 1999年に終わることが運命づけられた世界。
 外壁に過去・現在・未来を表す三つの巨大な時計を持つ古城・クロック城。道路も通じていない孤立した城には、遺伝子の研究者だという黒鴣博士とその家族たちが暮らしている。城内にはいたるところには顔が浮かび上がり、世界を終わらせるとも、世界を終末から救うとも言われる〈真夜中の鍵〉が存在するという。探偵の南深騎が城を訪れた夜、黒鴣博士と博士の弟が殺害される。二人の首は、目覚めることなく眠り続ける少女の部屋に捧げられていた。行き来のできない三つの場所を、犯人はどうやって行き来したのか。そして事件の真相と共に明らかになる、クロック城の驚愕の秘密とは?

 北山猛邦オフィシャルブログ『終末観測所』
 


 北山作品は初読です。メフィスト賞でデビューした作家ですが、メフィスト賞という賞自体、わりと賛否が分かれる賞という印象もあり、今までは『六枚のとんかつ』を読んだぐらいで、あまり積極的に読みたいとは思っていませんでした。
 ですが、本作を読んだら認識を改めないといけないですね。メフィスト賞、やりおる。

 世界の終末が運命づけられ、人々もそのことを疑っていないという社会。そこに存在しない幻影〈ゲシュタルトの欠片〉を矢で射抜くことができるという深騎の特殊な能力。死んでいるにもかかわらず実体を伴って世界に存在しているヒロインの奈美。これら作品を彩る様々な要素は、まさにファンタジー。ですが、西澤保彦氏のSF新本格とは違い、本作では、これらファンタジー的な設定や物語の枠組みが、作中で繰り広げられる事件とその謎解きになんら影響を与えないという特徴があります。外枠はあくまで外枠であり、事件は徹底して実感の持てる論理やリアルな物理法則に則っている。この作風は非情に新鮮でした。
 作者は“物理の北山”と称されるほど、物理トリックに拘りを持つ作家だそうで、本作もメインとなるのは『クロック城』という建築の特異性を活用した物理トリック。物語の外枠・世界観が超現実的なぶん、手触り感のある物理トリックがより効果的なのかもしれません。
 終末観に覆われた世界を描く文章も魅力的ですし、〈SEEM〉や〈十一人委員会〉といった、この世界ならではの道具立ても、一歩間違えば陳腐になりそうなところ、そうなることなく上手く扱っています。事件の動機にもつながるクロック城の秘密の内容は驚愕するものですが、それを単なる荒唐無稽と感じさせない論理展開にも感心したし、首が切り取られる理由=ホワイダニットの答えは、伏線の張り方も含めて秀逸。
 不満を挙げるとすれば、『クロック城』という特殊な建築を舞台にしているわりには、建物そのものの描写や説明があまり明確ではないことでしょうか。Amazonでの評価が低迷気味、特にトリックを酷評している人が多いのは、その辺りが原因でしょう。ふつうこの手のミステリなら、城の平面図や部屋割りの図表ぐらいつくものだと思うので、その点はやや不親切だといえます。

 初めて読む作家の作品を読む場合、その作者の文体や表現の仕方に慣れるまでは、ある程度根気が必要だったりするのですが、本作は読み始めた直後、ほとんど一行目から、作品世界に惹きこまれました。ファンタジー的な世界観とロジカルな本格ミステリを、あえて融合させずに並立させるという独特なスタイルと、終末近づく世界のブルージーなムードは好みが分かれるかもしれませんが、個人的には非情に面白かったです。北山作品は本作に限らず、終末世界を舞台にするという特徴があるらしく、終末世界×本格パズラーという作風でどれだけのバリエーションが作れるのかというのも興味深いところ。他の作品も読んでいきたいですね。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(4)|trackback(1)|読書|2013-01-14_22:39|page top

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北山猛邦 『クロック城殺人事件』 感想
『クロック城』殺人事件 (講談社ノベルス)北山 猛邦 講談社 2002-03-07売り上げランキング : 513296おすすめ平均 《城》シリーズの第一作《城》シリーズの第一作適性が違うようなAmazonで詳

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こちらは読書ペース低速中
なかなかのハイペースで読んでくれますな。私はこのクロック城で始まる“城シリーズ”を全て読みましたが、二作目、三作目は、クロック城とは色々な意味で似て非なる物語となっています。そのあたりの違いも賛否両論分かれる結果となっているのだと思いますが、欠点も含めてその挑戦心には感心しています。
このシリーズは2013年1月時点で4冊しか出ていませんし、文量も大した事はないので、その気になれば一気に読めるでしょう。私も何かオススメ本をお借りして読まねばね。
早けりゃいいってものでもないさ。
>>峰川幸介三世さま。
毎度です。
『幻惑密室』と『『クロック城』殺人事件』の二作に関しては、本当に面白かったのでグイグイ読まされました。ページを捲る手が止まらないという経験を、久しぶりにしましたよ。
“城シリーズ”は全部で4冊ですか。意外と少ないですね。逆に“城シリーズ”以外の作品がどのようなテイストなのかも興味があります。ユーモアミステリみたいなのも書かれてるみたいですし。
物理の北山が出した脱力系新作
確かにクロック城のそのものが不明瞭で、ちょっと
読み手の思い描いている構成と違うんじゃないかと
読みながら迷った感はありました。
面白かったんですがね。
あと北山さんの作品で最近読んだのは
『猫柳十一弦の失敗 探偵助手五箇条』。
こっちは力が抜けていて、これはこれで良かったです。

北山さんの作品をネットで調べていたら、北山さんを詳しく解説してる
サイトを発見したので、貼っておきますね。
http://www.birthday-energy.co.jp/
コメント御礼
>>海斗さま。
面白かったし、ダーク・ファンタジー風の世界観はかなり魅力ありましたね。〈SEEM〉や〈十一人委員会〉のような設定は他の作品に流用しても面白そうだし、むしろ読んでみたいぐらいですが、残念ながら続編とかは出てないみたいですね。
今のところシリアス路線の作品しか読んでいませんが、脱力系の北山ミステリにも興味はあります。いずれ読みたいと思います。

プロフィール

tamacat

Author:tamacat
行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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