闘争と逃走の道程

負けっぱなしの人生ですが、いつも「最後に笑うのは僕だ」と、何の根拠もなしに信じています。

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小説『天使たちの探偵』原りょう

 長編『そして夜は蘇る』『私が殺した少女』に続く沢崎シリーズ第三弾にして、初の短編集。未成年が絡む六つの事件を、沢崎の目を通して描く。
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  探偵沢崎シリーズ初の短編集。西新宿の雑居ビルにある〈渡辺探偵事務所〉に持ち込まれる風変わりな依頼と、沢崎が目撃する幾つもの人生の断片たち。
 


 「少年の見た男」…事務所にやってきた十歳の少年は、副都心の宝石店に勤める女性をガードしてほしいと言った。問題の女性を尾行した私は、銀行強盗の現場に居合わせることになる。
 銀行強盗犯を行員が射殺するという、短編集のオープニングを飾るには上々の派手な事件が描かれる作品。そんな派手な事件とは一見無縁そうに思える十歳の少年と、彼の依頼で調査を始めた沢崎によって明らかにされるのは、ある家族の秘密。悲しい話ではあるけれど、親子、家族間の絆が保たれた結末で救われます。やりきれなさを押し隠したラストシーンが、いかにもハードボイルド。

 「子供を失った男」…かつての恋人に宛てた手紙を二百万円で買い取れと電話で脅迫され、その翌日に娘をひき逃げで失うという悲劇に見舞われた男。娘のひき逃げと脅迫との間に、何らかの関係はあるのか。男の依頼を受けた私は調査を始める。
 依頼人が国際的な指揮者として活躍する韓国人という設定で、韓国人ならではの複雑な背景を抱えています。僕は1960年代~70年代の韓国の社会情勢についてまったく疎いので、この背景は驚きでした。僕ぐらいの世代の人ならみんな似たようなものだと思いますが、上の世代にとっては違和感も驚きもなく受け容れられる設定なのでしょうか。改めて、近くて遠い国なんだなと感じた次第。ちなみにこの作品で、沢崎の年齢が明らかになります。年齢自体はだいたい予想通りでしたが、沢崎自身の口から年齢が明かされたのは意外でした。

 「選ばれる男」…柏木俊一という中学生が姿を消した。俊一の母親は草薙という少年補導員に聞けば、俊一や彼の遊び仲間のことがわかると言った。その草薙は、市議会議員選挙の候補者として、選挙運動の只中にいた。
 ミステリ小説で政治家が出てくると、だいたいは後ろ暗いところがある人のように思ってしまいます。そして作者は、読者がそう思うことを見越した上でキャラクターの造形やストーリーの組み立てを考えるのでしょう。本作では、少年補導員として地域の不良少年たちの更生に力を尽くしてきた候補者が、少年の失踪やその背景にある事件とどのような関わりがあるのか、あるいはないのかという部分が読みどころ。短編というにはやや長めの作品で、登場人物も多めで意外と複雑な話なので、ちょっとわかりにくいという気もします。ただ、結末は希望の持てる終わり方で、読後の印象は悪くないです。

 「探偵志願の男」…私の事務所を訪れたその若い男は、自分を柏木俊一だと名乗った。探偵になりたいという彼に、私は私自身が探偵になるに至った経緯を話すことになる……。
 これは「選ばれる男」の後日談。沢崎が探偵になる前の話が沢崎自身の口から語られるという、シリーズ読者としては注目の作品。沢崎という男の仕事に対する考え方を知る上でも重要な作品でしょう。また、沢崎が探偵になった経緯は、案外僕ら一般の人々の、職業や人生の選択の場面と似通っているようにも感じられます。自覚や覚悟は、後からついてくるものだったりする。それはそれでいいのかな。

 ほか、「二四〇号室の男」「イニシアル“M”の男」「歩道橋の男」を加えた全六編。どれも、沢崎が未成年者の絡んだ厄介な事件や揉め事に関わっていく物語です。長編を読んだ印象では、沢崎はどちらかというと厭世的で、面倒ごとに関わるのを好まないイメージでしたが、この短編集では、案外自分から、厄介な調査に乗り出したりしています。そうしないと話が作れないといえばそれまでですが、基本、純粋で思いやりのある人柄で、それを厭世的なポーズで覆っているのだろうと思われます。前の二作の長編よりも、沢崎に好感を持てる、そんな作品集の印象でした。
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Theme:推理小説・ミステリー
Genre:本・雑誌

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comments(0)|trackback(0)|読書|2013-01-29_02:16|page top

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行動力なし、責任感なし、度胸なし。理屈っぽい。理に適わないことはきらい。
でもその“理”を支えているのは、実はすべて直感と思い込みだったりもする。そういう人。

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